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第1話 勇者、盾の守備役を追放する

新作の小説がスタートします。

素人小説ですが、皆さんに読んで頂けると幸いです。

是非、宜しくお願いします。

「お前、守備役なのに全然動かねえし、無能で使えねえから俺のパーティーから追放するわ」

「は? 何を言ってるんだ、グロリアス?」

「聞こえなかったのか? ガルト、お前は俺のパーティーには不必要なんだよ」


俺を無能無能と罵り蔑む男の名はグロリアス・アルバート。

この世界で勇者をしている男だ。

勇者と言えば、正義感に満ちた存在。

グロリアスはその真逆の存在であり、人種差別主義者のグズでゲスな女癖の悪い最低最悪の勇者だ。

外見は金髪で爽やか系イケメンなのに対し中身は腹黒く、色んな意味で残念な勇者だ。

そんな勇者らしくない勇者に罵られている男の名はガルト・リッシュフォード。俺の名前だ。

見た目は赤髪で山嵐のように髪がボサボサしており、無愛想な顔面をし、口にはタバコを咥えている。

背は間違いなくグロリアスよりも遥かにあり、いかついがたいの良い筋肉質の大男だ。

左手には必ず、盾を手放さずしっかりと握りしめている。

鬼のような悪魔のような顔面(がんめん)の歪で異形な真紅の盾をしており、盾の中心には真っ黒なスフィアが埋め込まれている。

通常の盾の物よりも若干大きなサイズをしている。

俺はグロリアスの勇者パーティーに所属しており、盾の守備役として仲間を陰から守護してきた。

その俺をグロリアスは蔑み、無能と罵り、追放とまだ突拍子もない発言を仲間の前で堂々と述べた。


「不必要? 俺が守備役として全然動かいていない? 本気で言ってるのか?」

「あぁ、本気だ。俺をその盾で命を張って守るのが、お前の義務だろ?」

「そうだ。だから、俺はこの盾でお前や皆を守ってきたじゃないか?」

「守ってきた? 何を守ってきたって? ただ突っ立ってた……」


「だけだろか!」と眉間に皺を寄せ、チンピラのように怒鳴り散らし俺を睨み付けた。

かなり激怒し興奮しており、今にも殴りかかって来そうな勢いだ。


「グロリアス、お前はずっとそう思ってたのか? 何もしてない(・・・・・・)ように見えていたのか?」

「は? 何を言ってるんだ? お前、頭大丈夫か?」

「やっぱり、何も知らないんだな……」


俺の口から意味深のある発言を聞くも、その言葉の意味をグロリアスは全く理解していない様子であり、違和感すら感じていないようだった。


「他の皆もグロリアスと同意見なのか?」


俺とグロリアス以外にもパーティーの仲間が数名いたので、俺は仲間達にも同意見なのかを問いかけた。

が、仲間達の態度の様子がおかしく、口を閉ざし、誰も視線を合わせようとせず、何かに怯えているかのようにずっと俯いている者もいた。

その中で俺の位置から近距離でいた剣士のヴァルカスに問いかけた。

肌が真っ赤に焼けていて、スキンヘッドに顎髭を生やしている。

左目を閉じており、その上には鋭い傷の跡が残っている。

年齢は30を超えており、脳筋タイプの筋金入りの剣士だ。

自身の身長よりも遥かに越える漆黒の刃の大剣である【斬魔刀】を常に肩に乗せて所持しており、【斬魔刀】が超重量な大剣な為に無駄な防具を身に纏わず、盾も鎧も装着せず、可能な限り減量に努めている。

その為、上半身はほぼ露出で無防備状態であり、パーティーに介入する前の古傷の跡がくっきりと見えている。

と、言うよりも自身の筋肉と古傷をただお披露目をしたいだけだろう……。

ヴァルカスはあからさまなしかめっ面で腕を組みながら俺に渋々応える。


「ヴァルカスも?」

「あぁ、俺もグロリアスに賛同だ……」


続けて、魔法師のエリシスに治癒師(ヒーラー)のノルエにも問いかける。

魔法師のエリシスは、露出度が高めな魔導服と黒色のケープを着用しており、長髪(ロング)の黒髪に豊富な胸と大人の色気を醸し出しグロリアスにすり寄っている。

左右の全指に魔石の指輪を嵌めており、全属性の魔法を使用可能にする魔導具(マジックアイテム)の指輪だ。

治癒師(ヒーラー)のノルエは、エリシスよりも身長が低く、年齢も幼い。

色気がない分、知性でアピールをしている。

フード付きの白色のケープを纏い、水色の短髪(ショートヘアー)に右側のもみあげ部分に三つ編みをぶら下げている。

ノルエは常に【治癒の杖】を所持しており、白銀の杖の先端は槍の刃先のようになっており、その中心に碧色のスフィアが浮いている。

基本は治癒魔法を使用する為の杖だが、槍のように武器として戦闘する事も可能である。

エリシスとノルエはグロリアスにすり寄り、俺の事を白眼視で睨み付ける。


「私も賛同だわ。あなた必要ないもの……」

「……必要性を感じません」


主要メンバーであるヴァルカスとエリシスとノルエは同意見だった。

彼らもグロリアスと同様、俺のあの事(・・・・・)に気付いていない様子。

他のメンバーもグロリアスや主要メンバーに怯えているのか、ずっと俯いたままで俺と目線を合わせようとしない。


「他の皆も同意見って事か?」

「……」

「俺の事を無能と感じてるのか?」

「……」

「皆の事を家族と思っていたんだかな……」


雰囲気的に直感した。

そう思っていたのは俺だけであった事に……。

今まで過ごした日々が全て偽りだった事にショックを受け、愕然とした俺は目の前が真っ暗になった。

そんな俺を再び罵倒する主要メンバー達に対し、俺の中で怒りと悲しみの感情が芽生え始めていた。


「は? 家族? お前の事を家族と思った事なんか一度もねえよ!」

「いつも家族とか絆とかって言ってたけど、正直うざかったし、キモかったのよね(笑)」

「無能な者と家族になれるわけがないでしょ? あなた、筋金入りのバカですね(笑)」

「身の程をしれ、うつけ者か!」


何でこんな奴らの為に俺は必死になって盾となって守ってきたんだと後悔し、怒りの感情を抑えつつ拳を握りしめていた。

それでも俺は微かな希望を信じ、もう一度仲間に問う。


「……もう一度、聞く。俺をこのパーティーから追放して後悔しないんだな?」

「は? 後悔するわけがねえだろうか? お前、本当にバカだな(笑)」


グロリアスと仲間達は俺の事を嘲笑い罵倒し続ける。

が、彼らの言葉を聞いた事で俺の中で何かが吹っ切れた。

寧ろスッキリとした気分になった俺はグロリアスにある言葉を返した。


「……分かった。俺、止めるわ」


あっさりとした俺の返事にグロリアスは目が点になり、唖然としていた。もちろん他のメンバーも。

想像していたものと違い、意外な結果と展開に逆に戸惑いを隠せずにいた。


「無能で必要ないと言われた以上、ここに止まる必要性が俺には無くなったしな……今まで世話になったな」


清々しい表情で別れの言葉を言い、俺は一礼をした。

あっさりとした状況に誰も口が開かず、ただあたふたするのみ。


『……待たんか』


と、どこからともなく微かに声が聞こえた。

「誰だ!?」とその声に気付いたグロリアスは周囲を見渡す。

も、誰もいない。

他の仲間達も周囲を細かに探索するもやはり誰もいない。

ただ、俺だけは声の主に気付いていた。


「この声はあんただろ? 爺さん?」


俺が誰もいない方角で喋り始めると、地面に突如白色の輝きを放つ魔法陣が浮き上がってきた。


「な、何だ!? この魔法陣は!?」

「この魔法陣は従魔師(テイマー)が従魔を呼び出す為のもの……」

「お、俺は【テイマー】スキルを発動させてないぞ!?」

「……だとしたら、誰か?」

「まさか……アイツの仕業か?」

「ん? アイツ? アイツとは誰の事ですか?」

「え? いや……そ、そのぉ……だ、誰でも良いだろ!」


何故かムキになるグロリアスにノルエはきょとんとする。

グロリアスは何かを知っているような素振りを見せる。

ノルエはそんなグロリアスの様子と態度に少し疑問を感じていた。


『……マレン、頼む』

「……【召還(サモン)】……じいじ……召還!」


声の主は誰かに何かを頼んだ後、別の場所から幼女の声が聞こえた。

幼女が何かの言葉を呟くと、魔法陣の白色の輝きが更に強さを増した。

するとその瞬間、魔法陣から目視出来ないスピードで何か巨大な影が突如しゅっと飛び出した。


『……ガルトよ、待つのじゃ』


その巨大なモノは地面へと着陸し、俺に喋りかける。


「やっぱり、あんたがシルバーフェンリルの爺さん」


俺と親しげに喋っている相手は人間ではなく神獣のフェンリル。

フェンリルの古い種族であり、シルバーフェンリルと呼ばれている。

毛並みが白ではなく白銀が特徴である。

通常のフェンリルよりも若干身体が大きく、魔力もずば抜けて高い。

何千年も生きている為、見た目も老化は進んでいる。


『お主、本当にここから離れるのだな?』

「ん? そのつもりだか?」


じっと俺を睨み付ける爺さんは何かを確信したかのように頷く。


『なら、ワシもお主と行くぞい(笑)』

「はい!?」


爺さんの発言にこの場にいた誰もか驚愕した。

特に驚いていたグロリアスが状況を把握する為に、爺さんの側へと寄り声をかける。


「ちょ、ちょっと待って!」

『ん? 何じゃ、お前には用はないぞ?』

「こっちにはあるんだよ! お前は俺の従魔だろか! 何勝手な事を言ってやがるんだ!?」

『……お主、誰に向かってタメ口を利いておる?』


タメ口を利いたグロリアスに容赦なく威圧をする爺さんは今にも襲いかかりそうな勢いだ。

爺さんの尋常じゃない威圧にグロリアスはビビり腰を抜かす。


「ひいいい―――――――!!!!!!!!」

『この程度の威圧でビビるとは情けないのお。これでも勇者なのか?』

「う、うるせえ!」

『威勢だけは一人前じゃのお(笑)』


爺さんが逆に主人であるはずのグロリアスをペットのように飼っているような感じだ。

そこで爺さんがグロリアスにある言葉を述べる。


『それといつからわしはお主の従魔になったんじゃ?』

「へ?」

『わしの契約者は孫のマレンじゃぞ?』


爺さんの口から途轍もない発言がさらっと出た。

その発言に顔を青ざめたグロリアスは突然絶叫し暴れ始めた。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"――――――――――!!!!!!!!!!」

「ど、どうしたの、グロリアス!?」

「そんなに絶叫して、どうしたの!?」


爺さんは孫と呼ぶマレンをここに来るよう促す。


『マレンよ、ここに来るのじゃ』

「……うん……」


と、マレンは小声で頷く。

すると、どこからともなくひょこっと姿を現れ、爺さんの所へ向かう。

マレンは五歳であり、白銀猫耳族の獣人で俺の娘である。

銀髪のショートヘアにもふもふな猫耳が生えている。

もちろん、尻尾ももふもふしている。

爺さんはマレンにある問いをかける。


『マレンよ、お主の父がパーティーから追放されたそうじゃ。わしはガルトに付いて行くつもりじゃ。もちろん、娘のマレンも付いて行くじゃろ?』

「……うん……父とじいじ……皆と一緒に行く……」

『まさか、わしと孫を置いていくわけじゃなかろ?』


円らな瞳で見つめる娘のマレンの顔を見てテレテレしていると、マレンが俺の服を引っ張り何か言いたげな表情で俺を見ている。


「……父……私も追放……」


俺はマレンと視線を合わせる為にしゃがみ込み、マレンの顔を見つめながら頭を優しく撫でる。


「父と一緒に行くか?」


「うん」と何度も頭を縦にふり頷く。

俺は娘のマレンとシルバーフェンリルの爺さんと一緒に勇者パーティーから離れる決意をした。








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