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02.統一(下)

国王はそう言って少し笑うと話を続けた。


「そして適当に理由をつけて、お前たちと定期的に会見する場を設けることにする。そしてお前たちが選んだ婚約者を見て、お前たちの誰にこの国を継がせるかを判断することとする」


長女は真剣に、次女は興味深げに父が話し続けるのを見ていた。


「念のために一言添えると、お前たちは自分の好きなように婚約者を選んでよい。もちろん相手の同意は必要だが、私たちが作るリスト以外から選んでもよい。ただしその場合、私の後継者になる可能性はほぼ無いと考えておいて欲しい」


国王は立ち上がった


「詳しい日取りや、リスト作りはこれからだ。先ほども言ったが、来年、あるいは再来年の話になるので公表もまだしない。まずはそれまでにいろいろと準備も必要だからな。申し訳ないが、私はここで政務に戻る。明日の準備を進めるゆえにな」


そう言い残すと国王はその私室から去った。残された母娘たちは互いに顔を見合わせた。


「先ほどのお父様のお話って、要するに私たち中の誰がルーガ伯爵と結婚するか、ってことよね?」


「シビィ!」


次女のシルビアの発言に、母がすぐに小さな声で叱責する。


「でもお母様。私たちはお父様、お母様のおはからいで、家庭教師、役人や時には大臣にまで、様々な教養だけでなく、政務も教えて頂いています。ですが、軍事に関してはこの中の誰も全然知りません。大陸が統一されたとは言っても争い事が無くなるわけではないでしょう?」


シルビアは母を見つめる。これまで王国外との戦いが主だったが、大陸が統一されたこれからは、王国内での内戦が戦場いくさばになる。頼りになる武人が女王のかたわらにいた方が良いに決まっている。


「そして、此度こたびルーガ伯爵はお父様の命を受け、ほぼ独力でブラストア王国を滅ぼされたと聞いています。これまでの働きに加えて今回の大功。おそらくはこのままブラストア侯爵に昇爵されるのではないでしょうか? しかもまだ20代半ば、ここのところずっと戦場いくさばにいらっしゃることが多いので、ご結婚されていないと聞いています」


国王が本当に旧ブラストア王国のすべてをルーガ伯爵に領地として与えるかどうかはわからない。元敵地をどうやって統治するかもわからない。だが慣例から考えて、その可能性は高いと王妃も王女たちも思っている。


当代のルーガ伯爵は、先代ルーガ伯爵の甥、妹の子であり、元は一子爵の身であった。ブラストア王国がルーガ伯爵領に奇襲をかけ領主一族を滅ぼした後、伯爵領奪還の功績を以て新たなルーガ伯爵に任じられた。そしてその数年後には、独力で旧ブラストア王国を滅ぼすだけの力を持つまでにルーガを復興させた。文武双方に十分な実績を持っている。多くの困難が予測されるが、おそらくはブラストアも上手く統治するに違いない。


そうなると旧領と合わせ、王国内でも飛びぬけて最大の領地を持つ貴族が誕生する。当然それについて、国王も他の貴族も思うところがあるだろう。大きすぎる力をもった貴族は新たな争いの種になりかねない。伯爵の忠誠を疑う者はいないが、その子孫たちが何を考えるかはわからない。


だがここで伯爵に次代の女王の王配という役割を与えたらどうだろう。当然ながら伯爵にとっても名誉なことだ。そして、王国はもちろん、ブラストアを継ぐのも当然女王の子どもということになる。例えば長男にリージア王国を、長女にブラストア公爵(女王の子が継ぐのだがら当然の昇爵だ)を継がせて王家の藩屏にするもよし、子どもが複数人いればブラストアとルーガ、あるいはそれらをもっと細かく分割して与えてもよい。あるいは一部または全部を王家の直轄地にしてもよい。


当然夫婦間での話し合いは必要だろうが、極めて平和裏に解決することが可能だ。将来の王配として最高の人選と、国王も重臣たちも考えるだろう。


「でもわたくし、ルーガ伯爵にはお会いしたことはありませんわ。やはり人となりを知らずに結婚することは、私にはできません」


長女のティレニアがそう話す。


「私はやはり自分と愛し合える方を生涯の伴侶にしたいと思いますわ」


名ばかりではあるが女王でもある王妃は娘たちを眺めた。この子たちの誰が後継者になっても、この大陸は大丈夫だと思う。この子たちの仲は良いが、後継者選びが、それに綻びを入れないようにしなければならない、と王妃は心に刻んだ。

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