表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

狭間

 カンッカンッカンッ

 階段を駆け上がる甲高い音が響き渡る。


 「はあっはあっ…」

 リンは額の汗を拭って、何処までも続く螺旋階段を見上げる。


 「この塔ってこんなに高かったっけ…?」

 外から見るとそんなに高く見えなかったんだけど…

 

 リンが登っている塔は、リンが生まれる前からあって、もう随分使われていないそうだ。

 大分古くなってあちこち崩れやすくなって危ないから、立ち入ってはならないと言われている。

 それに…

 子供達の間ではお化けが居るらしいなんて言われていて、だけど誰も見たなんて話は聞いた事が無い。

 だからという訳じゃないけど、リンは確かめてみたかった。

 どうしてもこの塔に登らないといけない、そんな気がした。

 「よし、もう一踏ん張り。」

 リンは一息つくと、また走り出した。

 まだまだ先は長そうだ。

 

 「はあっ、やっと着いた…ここが天辺だよね…?」

 膝に手を付いて呼吸を整えると、辺りを見回す。

 あちこちボロボロになって、蜘蛛の巣やら、木片やらが転がっていて、お世辞にも綺麗とは言い難い。

 大人が口を酸っぱくして、入ってはいけないと言うのも頷ける。

 リンはドアノブに手をかけるとゴクリと唾を飲み込み、意を決して開け放った。


 フワリと風がリンの頬を撫でる。

 明るい光が眩しくてリンは、目を細めた。


 「いらっしゃい。小さなお客様。」

 先程迄とは違う、綺麗に整った部屋には、透き通るような青年が本を手に座っていて、リンを出迎えてくれた。


 「お兄さんはだあれ?」

 「誰だったかな?」

 「大人のくせに自分の事が分からないの?」

 「そうなんだ。大人なんだけどね。」

 「仕方ない大人だなあ!」

 青年はリンの言葉を聞くとクスクス笑った。

 「なら、僕が教えてあげる。お兄さんはこの塔の妖精だよ!」

 「妖精?」

 「だって、キラキラしてて綺麗だから!」

 「そうかな…」

 青年は、そっと目を伏せる。

 「僕の名前はリン!妖精さん、ここに一人で居たら寂しいでしょ?これから僕が遊びに来てあげるね。」

 「それは嬉しいな。」

 「本当?良かった!今度はお土産持って来るね!友達にも教えてあげなきゃ。じゃあね、妖精さん!」

 「あ、ちょっと、リンくん…」

 「ばいばい!また来るからね!」

 バタンと勢いよく扉が閉まり、ばたばたと忙しない足音が遠ざかる。

 青年は自分の透けて、向こう側が見える手を見詰める。


 「妖精…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ