表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

植物沼にハマってみませんか

作者: 儀間朝啓

 植物を育てるのが好きです。でもたまに、

「植物なんか育てて楽しいの?」

「植物は枯らしちゃうんだよねー」

などというネガティブな感想を言われます。

 前者は動物を飼っている人から言われたのですが、

「動かないものって面白くないよね?」

という理由で植物には興味がないらしいんです。

 なるほど確かに、動物は常に動いてくれるから飼うのは楽しいでしょう。僕もそれは否定しませんし、今住んでいる物件がペット可であれば何か飼っているかもしれません。

 でも、植物だって変化します。日単位、月単位、年単位という長い年月ですが、姿かたちを変えていきます。そういう意味では、根気の要る趣味です。でもだからこそ、花が咲いたり実がなったりすれば、それまでの月日が報われた気持ちになります。そんな気持ちになれるなら、楽しいに決まっているでしょう?


 植物を枯らしてしまうタイプの人はよく、

「私には植物育てる才能無いのかも〜」

と言ってあきらめてしまうことがあります。

 でも、それは違います。

 最初は誰だって失敗します。

 僕だって今までにどれだけの草木を駄目にしてきたことか。それでもめげずに次の植物を育てることを続けると、だんだん植物と向き合うコツみたいのが分かってきます。ダメにしてしまった植物は可哀想かもしれません。でも動物を飼うのと違うのは、植物は枯れたように見えても復活することがままあるのです。

 もちろん、なかには完全に死んでしまう植物もあります。その場合でも、僕はたちに埋めておきます。せん定した木の枝や、秋から冬にかけての落ち葉なども土に埋めます。そうすれば何年かかけてそれらは分解され、土に還ります。栄養分を蓄えた豊かな土となるのです。これはエコだし、大気中に吐き出される二酸化炭素を減らすことになります。

 と、こんなことを書くと、オヤッと思う方もいらっしゃるかと思います。

 もちろんその疑問を持つのは正解です。植物が土に還るということは、その過程で菌類などの分解者によって再び二酸化炭素が排出されるということ。つまり「行って来い」なのです。

 だから、やみくもに今ある緑を守るだけで、大気中の二酸化炭素の量が減るとは限りません(もちろんそれは無駄な行為ではありません。いまある森林の二酸化炭素保持能力を維持させることはとても大事です)。だって人間が化石燃料を使い出すまでは、二酸化炭素と酸素のバランスは取れていたはずです。そこに石油や石炭の燃焼による二酸化炭素が排出させるようになったら、バランスが崩れるのは当たり前の話。全く使わないわけにはいかないかもしれませんが、使用を最小限に済ませる努力はするべきなのでしょう。

 さて、草や木を土に埋めることのメリットの話に戻ります。実は日本の多くの清掃工場においては、もやすごみを焼却するさいに重油などを添加するのだそうです。燃やすごみとして出されるものの多くが水分を含んでいるので、それだけでは燃えにくいのです。

 僕が不要となった植物を「もやすごみ」にしたくない理由はこれです。せん定した枝などをもやすごみに出せば、その枝などプラスそれを燃やすために使った燃料という、二つの二酸化炭素発生源が生まれます。しかしそれらを土の中に埋めれば、ゆっくりとしたペースで分解され、その際には化石燃料は不要なので、トータルでは二酸化炭素が放出される量が減るのです。石油や石炭は、地底に眠っている限りは大量の二酸化炭素を抱いてくれているのですから。

 動物でも植物でも、育てていたのに死なせてしまえば悲しいものです。僕が子どもの頃は飼っていた金魚が死ぬと庭に埋めていましたが、今はどの辺までそうしているのでしょう? 今はさすがに犬や猫を土葬するわけにはいかないでしょうね。昔は田舎の農家だとやっていたようですが。

 いっぽう、植物は庭の隅っこにでも埋めておくスペースを作っておけば長期熟成型の腐葉土ができます。これが新たな植物の栄養に形を変え、命がつながるのです。植物を枯らしてしまったとしても、土として生まれ変わらせることができる。そう思っておけば気は楽になります。

 植物は場所を選びます。寒いか暑いか、日なたか日陰か、乾いた土か湿った土か、などなど。条件は家の一軒一軒どころか、同じ庭の中なのに、場所によって変わって来ることもしばしばです。一度枯れた植物を移動させたら復活したり、別の植物を植えたらぐんぐん育ったり。植物はものを言いませんから、ご機嫌は人間が伺ってあげなければなりません。ですが、それもまた楽しいのです。土と植物のお見合いに成功した気分です。

 沼にハマるという表現もそろそろ陳腐になってくる頃かもしれませんが、「植物沼」はハマらない人はハマらないけど、一旦ハマった人はどうやっても出られない、そういう粘っこさを持った趣味だと思います。あたかも水生植物が水面を覆い尽くして、一見陸地に見えるしその上を歩けてしまうくらい強固になっている、でも人によっては沼にハマってしまい、出られなくなるけど出たくもない。そんな魔力を感じる趣味ですし、一度ハマってみてはいかがかとお勧めもしてみたい趣味です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  植物。ハマりますよね。私はここ2年ぐらい、庭の整備をする過程で、完全にハマりました。  もともと、一鉢のシクラメン(近所の農高生から買った物)を15年ぐらい育てているくらいなので、下地は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ