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異世界転移?無双?チート? 好きに生きる為に必要みたいなので喜んで⁉︎  作者: ゆるゆる
<サラーサ>

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商業都市ランテスへの道のり

だいぶ間が空いてしまいました。閑話に近いお話ですが閑話扱いにしませんでした。

ジェフィティールが<サラーサ>に行くのに、転移すれば瞬く間に着くのだが、敢えて西の大領地ジャンゴーの領都ドゥルガンの更に西、メヒモンテスの生地の村から商業都市のランテスを目指す事にした。のんびり行こうと思っていたが、人工生命体不定形型(ヴェノデオライド)を馬に変形させ狩人の装いで移動してみると、存外馬を使う者がなく他者に比べれば早い行程で商業都市ランテスに着く状況だった。疲れ知らずの馬での移動では一泊野宿する位で着いてしまうのだ。

ただ、その一泊も野宿に適した場所が少なく、同じように商業都市を目指す狩人や新しい生活場所を求める一般人、新しい商売に期待する商売人一行などが集まっていた。狩人が少なければ野盗などに狙われるだろうが、今回の場所では狩人が多くを占めていた為、野盗達もこちらを襲う様な無謀なことは仕掛けてこない。その分一晩同じ広場に集まった者同士お互いの装備や荷物、強さなどに興味があるようだ。

ジェフィティールとスィフィルは馬もいる為離れたところに場所を取ったが、馬自体を持っている狩人が少ないので随分注目を集めていた。二人のアバターは今回商業都市ランテスで彷徨いても目立たない様に、見た目を中肉中背、容姿も平均的な濃茶の髪に茶の瞳にしていた。設定は兄弟で実力があるから馬も手に入れられた、と言う流れである。持ち物も年季の入った感じにしてある懲りようだった。


「…やはり、注目を集めていますね…。馬もあちらにいる者より体躯も毛艶もいいですし、充分な装備ですしね。正直、体臭がこれ程離れているにも関わらず匂うとは思いませんでした。」

「そうだな。俺も転生前から考えても、こんなに匂うのはなかった。それだけ前は恵まれていたのかも知れないな…。」


二人は小声でやり取りし、警戒度を引き上げていた。と言うのも自分達以外全員が結託して襲撃し物品を奪うなんて事も無いとは言い切れないからだ。だが、ある程度勝つ見込みがなければ襲ってこないのも確かなので、二人は警戒している事を隠そうとはしていなかった。そんな二人に近づいてきたのは、商人らしき一行の一人だった。


「こんばんは。私はドゥルガンの南の第一村アララン方面を回っていた商団の者で、名をコイルと言います。ア茶ですが一杯如何ですか?」


自称商人のコイルという男は商人とは思えない大柄な男で、護衛の傭兵だという方がしっくりくる様な体つきであったが、ア茶を煮出したポットを片手に人懐こい笑顔を見せながら近づいてきた。


「…。」

「今晩は少し冷えてますから、体を温めるのにもいいですよ。皆さんにもお渡ししてるのでご遠慮なくどうぞ。」

「…頂こう。」

「お二人はどこから来られたんですか?立派な馬をお持ちなので随分遠くからでしょうか?」

「…。」

「…もし、何か入り用な物があればお売りできる物もあるかも知れませんので、お気軽にお声がけくださいね。」


反応の薄いジェフィティールたちに商人のコイルはそれ以上に食い下がることもなく離れていった。彼らの雰囲気が拒絶している事を示していたからだ。その様子を周囲の狩人たちや村人の様な一般人たちが窺っていた。馬車で移動している商人たちと一部の狩人たちは仲良く談笑していたが、それは多分長い道のりを共にしてきたのだろう。もしかしたら護衛に雇っている可能性もある。結局この広場ではいくつかのグループに分かれて、其々が焚き火を囲んで一晩を過ごしたのだった。

翌朝早く、ジェフィティールたちは焚き火を片づけ、馬に乗り早々にその場を後にした。正直ジェフィティールに取っては身内以外に情けをかける気持ちが一切無かったのだ。転生した日本での人生で随分魂源の再生はできたと思っていたが、こちらに戻ってきて“記憶と能力“を回収してから多少の変化がある様に感じていた。優しくありたい気持ちと冷酷に切り捨ててしまいたい気持ちとが混ざらずに反発し合っている様だった。だが、今回で言えば<サラーサ>の近くを見て回りたいだけなので、あまり目立ったり、他者の印象に残りたくはないのだ。その為の狩人という職業である。どこにでもいる職業であり目立つ活躍をする者もいない、日々の糧となる獲物を狩る者であり、子供でもなれる職業だ。


「父上。少々早めに馬を進めれば本日夜に商業都市ランテスに到着予定ですが如何いたしますか?」

「そうだな。夜に着いた方が紛れやすいかも知れないけど、宿を取るのも面倒になる可能性も考えると昼間着くように移動しよう。」

「畏まりました。では途中で狩でもしながら参りましょう。」

「あぁ、そうだな。このアバターの使い心地もあるし、慣れておかないとね。」


ジェフィティールとスィフィルは馬を走らせながら馬上で周囲に他者がいないことを確認しながら会話していた。細かい設定についてもお互い齟齬がないようにしっかりと摺り合わせしなくてはならない。ジェフィティールにしてみれば、身体が中肉中背とは言え大人の男になり、遠距離武器の弓や近接武器の剣を使える設定なので動きに、ぎこちなさがあっては怪しい事この上ない。その点スィフィルは万能なのである。ジェフィティールは劣等感を抱いていることに少しばかり驚いていた。以前であれば剣技や弓技などに興味などなかったのだが、今回のように狩人だと言うならば持っているはずの技術が拙い、などとはあってはいけないのだ。そして、自分はスィフィルの兄という立場であり二人だけで生計が成り立つなら尚更、狩人としての腕が立たないと不自然である。アバターの設定が元々そうなっているのだが、ジェフィティールの操作能力が高くなければミスも出やすくなるので、その操作能力が高いスィフィルが羨ましいのだ。


「名前もそうだな、俺は“ティール“でスィフィルは“フィル“でいこう。簡単で忘れなさそうだしね。」

「畏まりました。基本的に“兄さん“とお呼びするとは思いますが、お名前で呼ぶ時もあるかとは思いますので、お許しください。」

「問題ない。“フィル“のする事に間違いなんてないさ。」

「!…ありがとう、“兄さん“」


二人は狩の練習がてら、近くの森に向かっていった。

人工生命体不定型(ヴェノデオライド)の馬を森の外に待機させ、森の中で狩りをしたのだが、アバターの能力値が高いのか何の問題もなく雄鹿を仕留め、食べる分には充分と帰り道に狐のような獣も三匹仕留めた。狩人としての手土産としてはそこそこの商品でしかないが、仕留め方としては悪くない。二人の連携も位置どりから矢を射るタイミングなど問題なく確認できた。全ては索敵できる二人だからできたこともあるが、アバターの能力値は狩人としての才能を認めていたチャスカを元にしているので断然に高いのかも知れなかった。

獲物も簡単に手に入った為、さっさと捌いて早めの食事を取るために今日の野営地に向かった。もちろん決まった場所ではないが少し広まった場所で安全がある程度確保できそうな場所であればいい。周囲の地理や索敵能力などを持っている二人にとっては造作もないことだった。


「さて、綺麗に捌いて明日の土産にしよう。」

「では、私は食事の方を分担しましょう。」

「“フィル“。言葉遣い。」

「あ、僕はご飯を作るよ、兄さん。」


照れながら言い直したスィフィルを見てニヤけてしまうジェフィティールだったが、優しく頼むな、と言うと魔法を使わずに狐らしき獣を解体していった。その様子を見て、スィフィルも鹿の肉を使いシチューを作った。水などは魔法で出せる人間も多く珍しいものではないので普通に料理できるのだ。側から見れば、十分手際のいい、ベテランの狩人として見えるだろう。このアバターは思いの外とても有能だった。普段からこのような生活なら、特に魔法がなくても十分生きていけるのだ。だからなのか、ジェフィティールはふと、こんな生活もいいかも知れないな、などと思う瞬間があった。


「(そんな事が無理なことは、わかりきってるのに…不思議なものだな…。)」


ジェフィティールは少しだけまだ夕暮れには早い空を見上げて、そんな気持ちを言葉にすることもなく直ぐに獣の解体を再開した。


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