チャスカの対応
ちょこちょこ間が空いてます。見捨てられませんように…。
ベオグルリンドス帝国の東の大領地アウゼグッドの領都ヴィジュレより東の森の奥深く、山々の麓近くにある拠点<アルバア>。ジェフィティールが地下都市などを増設してアバターや人工生命体人型等々設置し、気に入っている鍾乳洞に行くと、そこにはアマルとメヒモンテスだけでなくロイとロイの眷属達の他、精霊達まで所狭しと集まっていた。
「なんで?みんなここに集まっているんだ?」
『父上に会いたいからで間違いないと思います。』
『父上様を見たいからデショ?』
「師匠に会いたいのでしょうね。」
俺の疑問は全員の一致した答えで終了した。なんでわざわざ会いたいなんて思うんだ?会ったところで何が良いのか訳がわからない。見たからって腹が膨れる訳でもないし、会ったからって幸せになる訳でもない。こんなにうじゃうじゃ居られるとまるで見世物にでもなったような気分で、正直言って気分は良くない。例えそれらの視線に敵意がなく好意的なものばかりだとしてもだ。せっかく落ち着いて鍾乳洞を堪能しようと思っていたのだが、これは早々に移動しよう。
「それなら、<アルバア>に行けばこんなに集まらないよな?取り敢えずそっちに行こうか。」
『まぁ、来るなと言えば来ないでしょうね。』
「言わなきゃ来るのか?」
『精霊達なら来ないと思いますデス。ロイとロイの眷属達は来たいと思うデス。』
「あぁ、それなら良いよ。」
こんなにうじゃうじゃ居ないなら、とジェフィティールはホッとしていたがスィフィルが小声でジェフィティールに聞こえる様に言った。
『…父上。皆が父上を一目見たいと思うのは、父上の御姿を見るだけで嬉しく思い、声を聞くだけで幸せな気持ちになれるからですよ。間違いなく。』
ドン引きと言うのはこの事かと、ジェフィティールは身をもって体現した。残念ながら、いや残念でもないんだが、日本人でいた頃もアイドルに向ける様な(?)感情を向けられた事も、感じた事もない自分には困った状況でしかないのだ。まぁ、アイドルの熱狂的なファンと言うよりは静かな執着?宗教的な感じだろうか。何方も俺としてはやめて欲しいのだが、俺の気持ちを理解してくれそうなメヒモンテスはわざと離れて目も合わせやしない。
「(そんなに離れてると呼びつけるぞ!メヒモンめ。)」
そんな事を考えているうちに、応接室に着いた。特にここに招く者もいないと思うが一国の王を招いても問題にならない程度の広さと格調が整えられている。きっとここはメヒモンテスの設計なんだろうと思われた。全員が席に座り人工生命体人型たちがお茶や茶菓子を用意するとジェフィティールが話を始めた。
「今回は、ベオグルリンドス帝国内と近隣諸国及びガルドエスタニア大陸の状況について情報共有しようと思って来たんだ。」
そこからはスィフィルが詳細を説明していく。<アルバア>の近隣で影響が考えられるベオグルリンドス帝国は各領都近隣で小さな内乱が見られるが、勃発回数や規模も縮小方向なので国単位としては喫緊で何かの対応が必要な状況ではない。又<アルバア>は山向こうに国がないので国に当たる程の勢力も無ければ、正直な所、かなりの安全地帯と言える。そして魔獣などの生息域や動向については、アマルの眷属達による警戒態勢によって変更を余儀なくされた故の変化がベオグルリンドス帝国内に影響を与えつつあることが報告された。現時点では東の領都ヴィジュレの端にある村人たちの狩場が変わって、少しばかり狩れる獲物が変わった、と言う程度だが、長期的に見ると大きな変化の第一歩なのだ。ジェフィティールとスィフィルは数十年の間に<アルバア>が発見されると予想し、対策の為アマルやメヒモンテス達と一応相談しようと訪れたのである。
『本来なら全拠点の守護者を交えて話すべき内容の様に思うが、今回はアバターや眷属達についても話したいとの父上の要望からこの様な形になった。<ヤクシェム>においても変化があったのだが……………』
「(間が長いな…なんか、言い淀むような事あったっけ?)」
ジェフィティールが頭を捻りつつスィフィルを見るが、その視線に、スィフィルの方が何故わからないのかと、引いていた。
『…<ヤクシェム>内だけのことで、この地上に影響はない筈なので安心してもらって良い。ーが、ここでも同等のことが起こる可能性と、その阻止の為に私が同行したと言って良いだろう。微力ながら全力を尽くすと誓うので、メヒモンテスも協力して欲しい。』
「勿論、全力で協力致しますとも。」
この2人のタッグは強力だが、何故そこまで俺を敵視するのか。多少はやってしまった所もあるが全体からして良い感じに<ヤクシェム>は回ってると思う。俺のお陰とは言わないが、俺のせいって感じでもないと思うのだが…。まぁ、そんなに期待されたらやらかしたくなってくる、いやいや、大人しくしておくべきか?
地下都市に関しては、避難場所の体もあるので今直ぐどうこうする必要性もなく、現状維持。<アルバア>全体としては転生前の協力関係にあった精霊の森の様に、ジェフィティールの精霊達に森に惑わしの結界を張ってもらう事にした。呼びつけた精霊は、先住の精霊達との交渉は精霊自身が行うと言うので、必要時にはジェフィティールが説得すると言う事で任せた。魔獣の生息域の変化も精霊の結界により<アルバア>に人が辿り着くことは無くなった。こうして一つずつ問題の解決を進め、アバターの話になると、アマルが少しばかり膨れっ面になっていた。そう、子供なのが納得できないようだ。
『アチシはそんなに子供ですデスカ?頼りないデスカ?弱いデスカ?』
「いや、そう言う事じゃないんだけど。アマルはそのアバターになると、そう感じるんだな?ごめん。」
「師匠、私はそうだと思いましたが?スィフィルと比べるとやはりそうなるのではないですか?」
このメヒモンは!ぶっちゃけ過ぎだがスィフィルとアマルしか知らないし仕方ないのだが言葉を選ぶことを忘れたのか?
「何?メヒモンは問題ないと思ってるって事?」
「はい。アマルは勿論の事、私のアバターに関しても今のままで全く不都合がございません。」
「(不都合ね…。)」
「初めは確かに師匠のイジメの一つかと思いましたが、これがなかなか、実際にアバターにて行動してみると生身の私に足りない所を強化されていて、かと言って元々強みの部分は強化されていませんでした。そうですね、言い換えれば能力が平均的に平されていると言うところでしょうか。」
「それを狙ってるからね。」
メヒモンテスはアバターで楽をしているが、足りない部分の先が理解できてどの様に鍛えていくか方向性がはっきりとして良かったと言った。見た目は好みではないが最近は慣れてきたのか愛着が湧いてきていると客観的な感想を伝えた。アマルはメヒモンテスの話を聞いて、そう言えばと、自分にも当て嵌めてやっと理解したような表情をしていた。今までも幾度となくメヒモンテスは説明していたのだが、ジェフィティールがいるこの場だからこそ真面目に話を聞いて納得したのかもしれない。
『…アチシも見た目が子供なのが、嫌だっただけですデス…。でも、メヒモンと同じで全部が嫌いじゃないデス。父上様が、今のアチシのこと、嫌いなのかと思って、嫌だっただけデス。』
「あぁ、そう言うふうに考えちゃったか、ごめんごめん。俺は可愛らしいアマルが大好きだよ。今のアマルも、アバターのアマルも大好きだ。」
『!!良かったデス〜。』
そう言いながら涙を流すアマルを隣に座っているメヒモンテスが、頭を撫でながら慰めていた。その姿を見てジェフィティールはメヒモンテスも随分成長したと感じていた。転生前から自分の興味のある事以外おざなりになるメヒモンテスが他人の面倒を見るのはほぼ無い。今は面倒を見る以上に、フォローもしていると言うことがメヒモンテスの、人としての成長と言えるのだろう。
そして最後に、ジェフィティールとメヒモンテスが一番話題にしたくなかった事柄について話をすることになった。
「ふぅ………。さて、最後に今後の方針なんだけど。」
「えぇ、わかっています。彼女のことですよね。」
「そう、その通り。どうするか?」
「私はできるだけ関わりたくありませんし、アマルも関わらない方がいいでしょう。」
「そうだね…。」
『私としましては、父上に連なるもの全員に関わるべきでないと通達していただきたいですが?』
俺とメヒモンテスは、スィフィルがそこまで嫌う理由を知らないのだが。メヒモンテスと俺は幾度も面倒を起こされたチャスカの尻拭いのため。ここにいないカリメッラとキッシャータは最後に弟子入りした魔術的にも低レベルで、計画通りに動かない、言う事を聞かないくせに俺に弟子と認められたと根本から気に入らない相手。と言う理由があるが、スィフィルには無いだろうに、と思っていたら。俺の記憶の中からチャスカを知り、態度や言葉遣いが気に入らないという。まぁ、嫌う理由は人それぞれなんだが、それだけで嫌われるチャスカに少し同情してしまった。
「まぁ、山向こうで仲良く平和に生活出来ているんだから、暫くは接触なしで行こう。スィフィルの意見の通りに通達を出して監視はチャスカが気付かない距離から行う事。以上でいいかな?」
『そうですね。差し当たり問題はありませんね。』
「今、話し合うことはこれ以上ないでしょう。」
「あ〜、良かったぁ。チャスカのことが一番気がかりだったんだよね、弟子の皆んなが拠点にいるのに、後でチャスカにバレた時に面倒になると思ってさ。まぁ、皆んなが同意見ならバレた時はみんな揃って同罪だもんね、その時は皆んなで謝罪しようね。」
「先ず、その時は彼女の怒りは師匠に向くので気を付けてください。父上のアバターのおかげで私は逃げ切れると信じておりますから。」
「…え?」
俺は、冷や汗がスッと一瞬流れるような感覚を覚えた。いやいや俺だって大丈夫でしょう、気づかれることないって。と、思いつつも嫌な予感がする。
「そう言えばメヒモンて、チャスカを名前で呼ばないのは何故?今までも聞いたことない様な気がするけど?」
「…彼女の名を口にすると何故か、彼女に話の内容も私の居場所もバレる様な気がするのですよ。そんな能力も才能も無い筈なのですが、今までそれに近い経験が幾度かあった為、出来る限り名を口にしない様にしています。父上も気をつけた方が良いかもしれませんよ。」
その話を聞いて俺たちは皆、鳥肌がたった。
「『『…こわっ!…』』」




