名付け
眷属4人に名を付けるかどうかでメヒモンテスとアマル、ロイで意見が分かれた。と、言うのも呼び名がないと色々と面倒な事が多いのでさっさとつけろと、メヒモンテスは2人に迫るがアマルもロイもジェフィティールに名付けて欲しいらしい。<ヤクシェム>の眷属3人娘はジェフィティールに名付けてもらえたとスィフィルに聞いていたのに自分達の眷属につけてもらえないのは凄く悲しいと訴えている。
「よく考えてみなさい。師匠はそんなに暇ではないだろ?暇ならここにも顔を出すだろうし、入り浸るくらいしているはずだ。」
『?名前だけ付けてくれれば良いだけデショ?ほんのちょっと、それだけで良いんですデス。だから父上様にお願いして来てもらうデス。』
『キュ!』
「いやいや、それだけの為に来てもらうって魔力も体力も…って、師匠にとっては大した事ではないか…。そうだな、ではさっさと来てもらって名付けてもらおうか。」
結局メヒモンテスは早く名付けが終わることを優先してジェフィティールに連絡する事を選んだ。連絡はアマルが担当している、と言うのも魔力量が足りないのだ。今回はジェフィティールが来たときに連絡手段の事についても改善してもらおうと考えていた。メヒモンテスにしてみれば自身で改良したいのだがガードが強く、ジェフィティール以外の変更操作を一切受け付けない程の安全管理がされていたのだ。
アマルがジェフィティールに連絡して翌日にはジェフィティールが<アルバア>に来ていた。2人は相変わらずジェフィティールに抱きつきながら喜びを全身で表していたが、メヒモンテスがいい歳してそんなことする訳もなく、ただ、疲れた笑顔とお辞儀で来訪の喜びを表していた。ジェフィティールは疲れたその笑顔が研究などの楽しい疲れでない事を察し、アマルに苦労している事を理解した。
「お、お疲れメヒモン。なんか、ごめんね?」
「謝罪される謂れはないので、必要はありません。師匠がわざと私にアマルを押し付けたと言うのでなければ、ですがね。」
「わ、わざとだなんて人聞きが悪いな。アマルの事はメヒモンが適任だと思ったに決まってるでしょ?ロイはしっかりしてるから、アマルに集中できるだろうし、アマルもメヒモンみたいに細かく説明してもらったほうが理解が進むと思ったからさ。」
少しばかり言い訳に聞こえるが、メヒモンテスはなんとか納得してくれたようだった。それよりも、と、連絡手段のツールや魔力補正などの話を切り出した。転移の場所や必要魔力量、使用者限定などの他<リーヴェル>で使われてる人工生命体不定型が欲しいとか、色々出てきた。
『メヒモン!ずるいデショ!!メヒモンばっかり!アチシだって父上様とお話ししたいですデス!』
『キュキュキューイ!』
「お?すまんすまん。この機会に話しておかねばならんと思っていたのでな。先にアマルの用事を済ませてくれ。」
『当然デス!』
そう胸を張って言ったアマルは眷属の4人がいる鍾乳洞へジェフィティールとスィフィルを案内した。前回ジェフィティールたちが訪れた時とは随分変わった鍾乳洞に、ジェフィティールは辺りを見回しながらキラキラした眼差しで歩いていた。
「良いね良いね。なんか良い感じに進化してるのが嬉しくてたまらない。ーこれは、ロイのお手柄だね?偉い偉い。」
『キュイキュイ。』
ジェフィティールは説明されるまでもなく、ロイを褒め優しく頭を撫でた。ロイも嬉しそうに、照れ臭そうに撫でられている。アマルは目の前でロイがジェフィティールに誉められている姿を見て泣きそうな顔をしながら、何も言わず我慢していた。この鍾乳洞も地下都市の整備も、今回名付けをお願いする4人の眷属も全て、ロイのした事だ。自分は褒めてもらえる様な事ができていない。<アルバア>を少し綺麗にしたり、メヒモンテスに怒られていたり、何だか難しい事を言われたりしているだけだ。どうしたらあんな風に自分も褒めてもらえるのだろうか、悲しくて寂しくて、我慢している涙もこぼれ落ちそうだ。そんなアマルの背中をそっと温める手があった。メヒモンテスの手は何も言わないし、アマルにも触れていないのに、確かに背中に彼の温かさを感じていた。
『…父上様、ロイの眷属達に名付けをお願いしたいのデス。』
「おぉ、そうだったね。それを先に済まそうか。」
ジェフィティールはアマルに返事をして眷属達に向き返ると、4人をじっと見つめてそれ程悩んだ様子もなく名付けて行った。
「フディー、ユル、ナチ、トゥンジ。君たちの名前だ。これから君たちはアマルとロイを良く助けてくれると信じているよ。」
『『『『はい。』』』』
「…私の補佐もお願いしたい…。」
「あ、メヒモンの事もよろしくね。」
眷属達が差別するわけもないのだが、口にしておく事に間違いはない。そして名を得た眷属達は其々に内包する魔力が増え、瞳の色や肌色が変化した。髪の色だけ霜白のまま変わらず、顔立ちもジェフィティールに似たままだ。それをジト目で見ながらため息をついて呟く。
「…なんで俺に似てるのかなぁ…。アマルかロイに似てれば良いのに。」
『父上に対する想いの表れでしょうから、そこは仕方ないかも知れませんね。それでも名付けによって随分雰囲気は変わったのではないでしょうか?(父上の希望通りになるには、2人よりも、より強く願わなくてはなりませんでしたね。)』
「そうかな?そうかもね。」
それでも<ヤクシェム>の三人娘と違って、人の形をしていた眷属なのでより、魔力を注入してしまった。それはジェフィティールの姿から遠ざけたかった為であるが、そこはちゃんとセーブしていたのでアマルやロイの上になる事はない様にできたので、スィフィルとしてもジェフィティールがしっかりコントロール出来ていたのだと安心していた。
『創造神様、お初にお目にかかります。フディーの名を賜りました私が4人のリーダーを務めます。以後お見知り置きくださいませ。』
濃い金色の瞳に色白の肌の子だった。アマルより口調も態度もしっかりしていて、他の子達もしっかり礼の態度をとっていた。それを見ていたアマルとメヒモンテスが引き攣っている。確かに名付けられる前と態度が変わった。前は少しおどおどしていた感じが今は全くない、寧ろ自信に満ちていると言っていいほどだ。それも全員。メヒモンテスは眷属が生まれるところも名付けも何もかもが初めての事なので、ある意味、こう言うものなのだろう、とは受け止めていた。だが、アマルの衝撃はメヒモンテスとは違う。全てにおいて自分が劣っていると、眷属にも勝るものがないと、いや、魔力量ぐらいしか勝るものがないと自覚したのだ。それは言葉で言われるよりもアマルの心に響いたのである。
「見た目は子供なのにしっかりしてるね。まぁ、関係ない事だけど。しっかりみんなの役に立つよう務めてね。」
『畏まりました。』




