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異世界転移?無双?チート? 好きに生きる為に必要みたいなので喜んで⁉︎  作者: ゆるゆる
<ヤクシェム>

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宇宙樹

ジェフィティールはその日、スッキリした感覚で目覚めた。身体も軽く、瞼が軽いと言う言い方はないと思うが、本当にこんなスッキリした感覚は初めての事だった。


「何だか、いつもと違うなぁ。ん〜、いつもこんなだったら良いのに。」


呟きながら伸びをした。すると、コンコン、と部屋のドアを叩く音がする。今までこの部屋の扉を叩くものはいなかった。何故ならジェフィティールの眠りを妨げる事は誰もしないからだ。本人が起きて部屋を出るまでは何時であろうと待つことが暗黙の了解なのである。


「え?どうぞ?」

『失礼します。』

「……?な、何?なんか用事っていうか、急ぎのなんかがあるんだよね?なんで何も言わないの、余計怖いんだけど?」


ジェフィティールは部屋に入ってきたにもかかわらず、無表情で黙ったままのスィフィルに緊張しながら言葉をかけた。


『…はぁ…、そうですよ、急ぎの、なんかが、ある訳です。』

「…な、何…?」

『…はっきり言わせて頂きます。父上、何してるんですか!どうしてこうなったか説明をお願いいたします。』

「は?」


スィフィルが冷静のような慌ててるような、そんな感じで迫ってきた。そんな事急に言われても寝起きの俺に何がわかるというのか、とりあえず俺は着替えてスィフィルに引きつられるままログハウスの外に出る。前日までの雰囲気と明らかに違うことは分かったが、どうしてそうなったのか、どんな影響があるかはわからない。ただ、いつも以上に嫌な感じも悪い感じもしない事だけは確かだ。いつも以上に。


「これは…このログハウスが中心の結界?いや、違うな…。」


すぐさまログハウスから<ヤクシェム>全体に感覚共有、情報網を繰り広げ、状況把握に努める。そして<ヤクシェム>の外に視点を動かして初めて、現在の状況が理解できた。

ログハウスを中心に半径約140、150キロメートル位のガラスでできている様な大きな大木が、雲を突き抜けて<ヤクシェム>の結界上限近くまで伸び、結界の方々へ伸びた複数の枝は結界を抜けて、外に生い茂った葉をこれでもかと言うくらいに伸ばす姿はまるで、観葉植物のガラスのハンギングボールから葉が溢れている姿に似ていた。


「あれ?…コレは…えぇと…やっちゃった…のかなぁ…?」


こんなどデカい、それこそ世界樹、いや宇宙樹と言えるものがたった一日で出現するなんて、どう考えても普通じゃない。それこそなんでもありの夢なんじゃなきゃ、なんだって言うんだろ?いや、睡眠中の夢ってあんまり思い通りでもないな。じゃ、コレこそ夢か?


現実逃避をしてみても宇宙樹が消えるわけでもない。それにこの宇宙樹はガラスの様に透明感があるがガラスでできているわけではない。結界の様な効果もある様だが浄化効果もある様だ。これだけ巨大なのに<ヤクシェム>の太陽や月の邪魔になる事はないし、存在が鬱陶しいわけでもない。多分この宇宙樹に気づくのはここのいる者達だけだろう。それに生命の樹でもあるため活力を<ヤクシェム>にも循環させている様だ。状況把握に集中していた意識を戻して、ジェフィティールはスィフィルと情報の擦り合わせをした。


「ーと言う事は、取り敢えず問題にはならないだろう。俺もスッキリするし、<ヤクシェム>にも害がなくて皆んなも調子が良くなるなら、一石二鳥にはなってるからね。」

『…そうですが、一日でここまでのものができた理由をおうかがいしてもよろしいですか?また、夢でも?』

「いやぁ?そんな覚えはないな。ただ、すっごくスッキリしたけど。最近細々した作業をしてたからか、勢いよく魔力放出したかったのはあるけど…。わざとじゃないよ?狙ってやった訳でもないし、宇宙樹を作りたかった訳でもないし…。俺の魔力放出と<ヤクシェム>の魔力活用がこの結果を生み出したんだと思う。たぶん?」


俺も確信が持てる理由なんてわからないし、無意識のうちにやってしまった事だけは事実として目の前にある訳だから、何も言えない。でもホントにスッキリしただけなんだよね。感覚としては…。


『…わかりました。そういう事にしておきましょう。それで、どれくらいの頻度で魔力放出するつもりですか?今までの実績からですと、約3、4ヶ月に一度くらいで必要になるかと思いますが、どうですか?』

「そんな投げ捨てる様に言わないでよ、スィフィル…。その通りだと思うけども…。」

『その様なつもりはありません。ただの確認ですから。』


なんか最近スィフィルが意地悪な気がする。俺に慣れてきたっていうのか、気心が知れてきたっていうのか、はたまた、迷惑かけすぎで呆れられてるのか…。どれも当てはまってる気がするな。まぁ、見捨てられない様にしないとね。それにしても実際3、4ヶ月に一度の間隔で魔力の放出をしてる様じゃ困るな。できれば影響を及ぼさない範囲内でどうにかしないと、毎回こんなんじゃ世界がどんな風になっちゃう事やら。無意識下での放出が一番ヤバいからね。


「…一度、宇宙に放出してみるかな?一番安全かも知れないし……。」

『…父上…後々、本当に、何事も影響がないと、言い切れますか?ソレ。』


…怖いことを…そんな真面目な顔で言わないでくれよスィフィル。一回くらいなら…大丈夫なんじゃないかな?…いや、止めておこう。バタフライエフェクト。そういう事も心の片隅に置いておかないとね。軽い気持ちでやった事が後々とんでもない事になって返ってこられると、ね。それにしても、この宇宙樹、消えないね。地面のあたりも、壁にも結界にもなってないから特に行き来に問題ない筈なんだけど、大人しめの動物しか入ってきていない。不自由でなければ改善の必要はなさそうだ。現状確認できる範囲では、<ヤクシェム>に悪影響はないし、過負荷を伴うものでもない。


「…よし。放置で。」

『…………畏まりました…』


取り敢えず、後3ヶ月位は大きな問題もない筈だから、その間に対応を考えよう。この魔力放出事件は俺の魔力が淀むせいでもある。放出しなきゃ死ぬ!って訳でもなく、別に溜め込んでも問題ない。イライラしやすかったり、身体がだるく感じたり、そういう状態が続くだけのことで、問題は放出したくなった頃に寝なきゃ良いだけだ。それまでは魔石作りに勤しめば良い。なんならちょっと凝ったものでも作ってみようか、蓄電池、小型バッテリー、いいね。どんどん作るか。人工生命体人型(ヴェノデオキシ)人工生命体不定型(ヴェノデオライド)人工生命体万能型(ヴェノデオタップ)も改良生産しよう。お試し生産計画に心が躍る。


「(…ホントなら、研究とか物づくりだけやってられたら良かったんだけどね…。)」


<ヤクシェム>だって町や住人が居なければ、もう少し遊べる島のはずだったんだけどな…。スペースはあるけど影響を考えちゃうから、やりにくいんだよね。でも、確かにある程度は自由だし、結構満足できてるかな。多少の不自由は自由を知るのに丁度いいからね。


「…スィフィル、この宇宙樹に魔力を与え続けたらどうなるかな…?」

『はい⁉︎』

「いやぁ、どんな生き物も生きる為にはエネルギー、栄養が必要でしょ?<ヤクシェム>からだけじゃ足りなさそうじゃないか、この大きさは?」

『あぁ、そういう意味では魔力を与え続けるべきでしょうね。ただ、この宇宙樹がどのような魔力循環をさせているかわからないので、経過観察は絶対に必要ですが、父上にとっても魔力放出は良いのですが加減を考えて少なめからお願いします。』


どういうことかな?なんか言い方とか態度に段々遠慮がなくなってきて、良いことなんだけど、何故か俺を愚か者扱いしてくるな。なんでもできると思われるよりは良いけど、どうなの?


『わかっている事とは思いますが、念を押さないと父上の場合は気が緩んでしまいますから。口うるさくて申し訳ありませんが、お許しください。』


はい、ごめんなさい。スィフィルの心遣いがありがたいです。俺も随分スィフィルに甘える様になったもんだ。精神年齢が子供それになった様に拗ねたんだから。人生長く生きたし、経験も嫌っていうほどしてきた、だからこそ、大人な対応をするし、すべきだと思っている。間違った判断も多くの経験を積んだのだからこそ、少なくてはならない。間違ってはならない、多くの生命を生み出し、保護する立場なのだから。そんな風に自分を追い詰めていたのは確かだが、スィフィルがいつだってそばに居て助けてくれる。そんな存在は貴重で大切だ。


「許しを乞う必要はない。スィフィルの助言は何時だって俺にとって必要で、大切だから。」


そうだな、スィフィルは俺の“常識““良心“っていうか、“お守り“に近い存在な気がする。スィフィルがいなきゃ、もしかしたらだけど、邪神とか魔王、になっててもおかしくない。魔力をスッキリさせるだけでこんなだし、面倒な事を魔法、魔術で解決すると……。ヤバい事になるのはわかりきってる。そこまでの能力があるのは嬉しいような、悲しいような…。影響を考えるのが面倒なんだ、ほんと、そういう事は俺じゃない誰かが考えて、俺は楽して、好きな事だけして生きていきたいよ…。そう考えると、誰かにリーダーになってもらって、俺は…、三番、いや、四番手くらいがちょうど良いんじゃないか?だって二番手もリーダーの補佐が大変だろ?三番手は役職付きそうだし、四番手、下手すると五番手が一番俺にあってるんじゃないか?いや、待て待て、焦るな、ここはもっと真剣に考えないと……。


「そうか、会長とか、御隠居職か!」


ぽんっと手を叩いて思わず言葉に出していた。スィフィルはそばに居てまたかと言うように気にもしていないが、言葉の内容にはすぐに反応してきた。


『御隠居職とは、どう言う事でしょうか?父上。』

「あ、それはだね、俺が御隠居職について、誰かにリーダーをやって貰えばもうちょっとお気楽かな〜、なんて思ったりしたわけ。」

『…既に、現在そのような体制で動いているではありませんか?』

「…あれ…?」

『各拠点には守護者が配置され運営されています、<ヤクシェム>は父上の遊び場ですし、<リーヴェル>は父上の研究場所ですよね?』


バラルエルトニー大陸全域、ガルドエスタニア大陸全域の情報収集など、網羅している状況だそうだ。掌握しても良いが、命令がないのでしていないだけだと言う。そんなバカな…。いやいや、情報は必要だし、力も必要だけど、「何時でも世界を掌握できます。命令待ちです。」なんて言われても、嬉しくない、怖いだけでしょ?俺の為にしてくれた事だからそんなこと言わないけどね。まだまだ、そんな力も無いと思ってたんだけど、なんだろう、この、全世界の核のボタンというか、破滅のボタンを握らされてる感覚。恐ろしくて捨ててしまいたくなるこの気持ち。

…そうだな、俺は確かに知っていたな。今の状況もこの力の大きさも、でも、気づいてない振りをしていた…。大きな責任に潰れてしまいそうな、そんな気がふっと顔を出す時があるから、そのまま見つからないように逃げていたんだ。


『…今のままでいいんです。全く問題ありません。私は、私たちは父上のご意向に沿う事に喜びを感じ、父上がお喜びになられることに幸福を得る事ができます。父上の側に居られるだけで私などは、至福です。』

「スィフィル…。」

『父上が何かに悩み、ご自身の事を疎まれる時が来ても、私たちには何時でも父上が必要です。お願いですからその事をお忘れなきよう心の片隅にお留置ください。』


スィフィルが辛そうな顔でそんな事を言うもんだから、罪悪感が半端なく押し寄せる。確かに俺には前科があるしな、何もかもを捨てて転生を選んだんだから。普通人なら“死“を選択した事になる。


「…ありがとう。覚えておくよ、スィフィル。」


今、謝ることは違う気がする。俺はスィフィルに感謝しながら抱きしめた。

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