湖の側で
またまた遅くなりました、申し訳ないです。今後も遅くなることもあると思いますが、見捨てずお暇を見つけて読んでみてください。
連日ジェフィティールとスィフィルが山へ向かって森の中を歩いていると、徐々に開けて大きな湖が現れた。そこには十数頭の鹿の群れと白鳥や雁の群れがいた。ウッショロケシから大分距離があるこの湖の事はまだウッショロケシの住人には知られていない。町を訪れる特殊進化獣人は別方向から来るので、彼らから話を聞いても湖の存在は出てこなかったからだ。
「おー!結構大きな湖だなぁ。対岸も遠いし、久々に開けた空を見れたなぁ。」
『そうですね、少々開けていても樹々の隙間に見えている様なものでしたからね。』
「それも良いんだけどね。野生動物は見かけてるけど、進化獣人には会えないねぇ…。」
『探索をかけますか?』
「いやいや、それやっちゃうとこうやって歩いてる意味が無くなっちゃうからやめてね。探索かけちゃうと楽しみがさ、この、なかなか見つからない焦ったさがね、楽しいじゃないか。」
『(周辺だけで、全域に探索なんてかけませんけど…。父上にとっては探索って全域なんでしょうね。)周辺だけにしてはどうですか?』
「周辺だけ?ん〜、知らなくても良いものまで情報要らなくない?」
『?それはつまり、範囲を小さく狭めると、より詳しく鮮明に情報が入ってくるという事ですか?』
「そうだよ?なんて言うか、例えば、肉眼で見ていたものを顕微鏡で見る様な感じ。とか、えー、そうだな、遠くの景色を望遠鏡で見る様な?感じに近いかな。」
『…違う方法もありますよ。(成る程、これはまた困った状態ですかね。)』
「え?」
『広範囲に見えている景色をくり抜くだけで、拡大も詳細にもしないのです。範囲指定でそよ風を吹かせる感じでしょうか。』
ジェフィティールは目から鱗がぽろりと落ちる様に、スィフィルに言われた感じに探索の風魔法を吹かせる。優しく、そよそよと、心地よい風が辺りを流れていった。範囲は狭めたつもりだが、半径約50キロメートルほどで、お世辞にも小さく狭めたとは言えないが、ジェフィティールにとっては頑張った方だった。
「やっぱり<ヤクシェム>だからか、俺の魔力が通り易くて、さらっと情報を軽く得ようとしても詳しく入ってくる気がするよ。」
『それは仕方ないですね。父上が直々に魔法を行使するより精霊に探させる方が穴が多くあって楽しめるかも知れませんね。』
「あぁ!それね!それ良いね!次からそうしよう!」
『この範囲は父上の魔法に探索されてしまいましたから。暫くは無理でしょう。』
「………。」
そうなんだよ。だから出来るだけ探索系の魔法は使いたくないんだよ。ただでさえ<ヤクシェム>は俺がゼロから創り上げた世界だから、何もかも俺の魔力に基づいている。その上普段から世界中に連絡操作探索の網が隙間なく張り巡らされている為、魔力を流すと直ぐに反応してくるのだ。
「探索系は全部スィフィルに任せるよ。それ以外ならここまでにはならないし。」
『畏まりました。それで、如何でしたか?進化獣人はいましたか?』
「あぁ、結構いるね。村くらいの規模はあるかな。ただねぇ、リスの獣人と狐の獣人の集落があって、遠い所に狼の獣人グループがいたね。」
『どちらかと接触しますか?』
「ん〜…。」
天邪鬼な性格がここにきて顔を出す。
「探索で色々わかっちゃうと、なんか態々会いに行くのもどうかと思うよね。リスと狐は人みたいに各家がある集落でまだまだ進化、発展途中ってところかな。言葉も発達してきてる様だし、もう少し時間空けて会いに行った方が良さそうだ。狼グループは人になるつもりはない様だね。ただ、しっかりとした群れとしての統率は取れていてリーダーがハッキリしてる。」
『そうなりますと、何方にも接触しないと言う判断になりますが、宜しいのですか?』
「まぁ、魔法に頼らない探索が出来なかったわけじゃないし、結構楽しかったし、魔法はヤル気を削ぐってわかったし…。いいかな、これで。」
『父上が楽しめる事が何よりですから。次はアバターで動き回るのも良いのではないですか?(魔法のレベルが低くてヤル気をなくす者がいても、魔法が強すぎてヤル気を削がれる方は父上お一人でしょうね。)』
「まぁね、それも考えたんだけどさ、やっぱり生身が良いじゃない?感覚的に。」
『父上なら、それすらも完璧にこなせるアバターを作れるのではありませんか?』
「え、そお?そうかなぁ、作ってみちゃう?」
ヤル気を削がれて気分が下がっていたジェフィティールだったが、スィフィルの言葉で、別の方向に一気にヤル気が上っていった。
「VRスーツと他は良いのできてるから、あとはちょっと改良すればいけそうだしね。やっちゃうか!」
『えぇ、やってしまって下さい。』
スィフィルはジェフィティールの気分が上がって嬉しかった。まさか楽しげに何体も作るとは思ってもいなかったからだ。一体のアバターを完璧に仕上げるだけでなく、特殊アバターを数体作った。ジェフィティールだけでなくスィフィルにも二体、アムルタートにも二体作ったのだ。それもこの湖の脇で、スィフィルに言われたからすぐに、思いつく限りの性能をつけて。そして満足したジェフィティールは出来上がったアバターをログハウスに送って、その日は湖の横で野営した。
次の朝、野営したジェフィティール達のそばに近くの動物達が集まっていることに驚いた。
「うわっ、なんでこんなに集まってるんだ?何かあったか?」
スィフィルは一瞬考えたが直ぐに可能性を口にする。
『もしや、昨日の父上の魔力に引き寄せられたのではないでしょうか?』
「魔力?俺の魔力が漏れてたとか?」
『いえ、そうではなく、父上がアバターを何体も作っている間に少し漏れていたり、魔力の揺らぎに惹かれて集まってきたのではないでしょうか。』
「あぁ…。そう言う事か。それにしても随分多くない?」
鳥類、魚類、四足獣類など、近くの動物達が一堂に会している様だった。その視線がジェフィティール一点に集中しているのだから、落ち着かないにも程がある。
「ホント、勘弁してくれないかな?どうしてこうなっ…。」
そうだ、思い出した。アバターを作ったは良いけど性能確認で俺、今、アバターだった。
そう、ジェフィティールとスィフィルは今2人ともアバターで、本体はログハウスに他のアバターと共に帰っていた。つまりこうして動物達に囲まれてるのはアバターになった所為なのだ。本体の時は魔力が漏れているわけでもないのに、どうしても敏感な野生種はなかなか近寄れなかったと言う事なのだろう。
「あとは性能チェックと思ってたけど、良いんじゃないか?」
『そうですね、感覚もアバターだという事を忘れそうですし、何の違和感もありませんから最高の出来ではないですか?』
「あぁ。これでウッショロケシまで戻ろうか。それで最終チェックとしよう。」
『畏まりました。』
ジェフィティールとスィフィルは周囲の動物達を無視して行動を開始した。




