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異世界転移?無双?チート? 好きに生きる為に必要みたいなので喜んで⁉︎  作者: ゆるゆる
<ヤクシェム>

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ウッショロケシの守り神

まず2週間をかけて繁華街を網羅した。品揃えもそこそこで需要と供給がちゃんとバランスが取れているようだ。その後の2週間をかけて郊外の農業、酪農を見て回ったが範囲が広くて、のんびりした雰囲気の中にしっかりとした活気があった。正直言って、トラクターなんて無いから魔法や人力だ、ここでは魔法が大雑把でも雇ってもらえる。道具や細かい作業が必要な場所では手先や魔法操作が器用な者が重宝されている。ちゃんとバランス良く回っていることが確認できた。


こんな風に大きな問題なくこの規模の町が運営されているのは、素直に嬉しいものだな。

平和な背景があってこそ成り立つ世界だ。飢える者はなく、他者を虐げる者もいない、貧富の差もあるけど大して大きくない。人間は他者より○○、金持ち、強い、偉いなど他者と比べてより優位に立ちたがるものだが、彼らの特性なのだろうか他者より秀でることよりも、自分がどうでありたいか、自分が満足か、群の中での役割をしっかりこなしているかに重点を置いているようだ。


「君たちは、この仕事つらくないの?お給料は?」

「別に、仕事はどれも大変なもんだし、でも、休憩あるし、給料もらえるし、普通でしょ?」


畑を耕している獣人達に話を聞いても、誰もが同じような答えだった。魔法なら楽だけど自力でとなったら、俺には無理だろう。彼らも其々得意な魔法なり特性を活かした職のつき方だ。


「だってなぁ、2時間ごとに休憩1時間だし、一日6時間働いて一日置きに休みだし、給料だって問題ないよ。」

「家賃とか水道光熱費とかは?」

「何それ?」

「あ、住む家にお金かからない?(水道、明かりとかは魔法で無料か…。)」

「かからないよ。君のところはかかるの?この町じゃないんだ、大変だね。」

「…そうだね…。(何だか凄く同情されてる。)」


酪農の方も似たり寄ったりの答えだ。労働環境も悪くない。何より、お互いの仕事がお互いの為に、生活に役立っていると実感しているのが、モチベーションが高い理由かもしれない。


「(其々、自分がしっかり担当の仕事をする事で全てがうまく回っているのだな。)」

『父上の転生した世界もこの様に平和だったのですね…。素晴らしいです。』

「…いや、どうかな。…犯罪も多かったし、…ベオグルリンドス帝国が少し豊かになったくらいだろうな。」

『え?そんなまさか…。』


まぁ、それは卑下し過ぎかも知れないが、大差はない様に思うな、特に人間の性質なんていうのは。


「ここは、ちょっと理想に近いよね。俺の夢、と記憶から生まれたからかなぁ…。」


住人の人格も穏やかと言うか、偶に頑固親父って感じもいるみたいだけど、輪を乱すほどじゃない。どちらかと言えば面倒見の良い人、と言えなくもない。交番みたいなのもあるけど取締りと言うよりは、警備員とか案内所の様な役割に近い、本当に活気もある普通の町だ。特殊進化獣人とも仲良くできているし、このままゆっくり発展していけば良いんじゃないかなぁ…。


人は便利さを求めて発明、技術進化し、生き残る為に必要な強さをいつの間にか征服する為の強さに目的を変えていった。より強くより便利に…。全て悪いわけではない事は誰もが理解できるだろう。だが、視野を狭めては未来も狭まるんだ。一つの目標に向けて必死に努力する事はとても良い事なのはわかるが、全員がその目標に向かうべきではないと思う。十人十色とは少々違う例えになるが、その目標が他の誰かにとっても同じだけ重要な目標になっているとは限らないのだから。

全体主義ではない個人主義。多種多様な社会。不便を容認できる度量。便利を追求できる好奇心。それらが集まる社会。他者を尊重できる社会、そんな存在であれば良いのに…。でも、それこそ自分勝手な考え方だ、どんな考え方も犯罪でない限り尊重されるべきだとは、理解している。そして犯罪は現状の不満から生まれ、不満の中に育ち、不満の果てに行動として現れるのだ。


あぁ、本当にー兎角この世はままならぬーとは、よく言ったものだ。


「さて、この町にも慣れたし拠点も手に入れたし、あとは少しずつ足を伸ばしていこう。」

『そうですね。森、山の方に足を伸ばしますか?』

「そうなんだけど、特殊進化獣人の方とは別方向に探索に行きたいね。もしかしたら別の種族が生まれてるかも知れないしね。」

『父上もそれが一番の楽しみですよね?』

「そりゃそうだよ、魔法に頼らず自力で探索して、対面、交渉するなんてドキドキする。」

『何よりです。(全く魔法を使用しない訳ではないんですけど、まぁ、少々楽をするくらいのものですしね。そこは突っ込まないでおきましょう。)』


ウッショロケシの拠点である部屋に戻る途中、神殿の横を通るのだが今日は久しぶりに寄ってみることにした。ヴェリュの像はこの町の信仰対象で、“神様”だ。参拝に来ている人も多く、作法がある訳でもないので其々自由にしている。相変わらず“神様“の像はキラキラと神々しい。そんな風にぼーっとしながら椅子に座っていたら、キラキラした光がジェフィティール達の方に近づいて来た。


『創造神様、スィフィル様。ヴェリュ様が御前にて弁明させて欲しいと懇願しています。』


精霊達が近づいてヴェリュの願いを代弁する。いきなりヴェリュ本人がジェフィティールの前に出ていくのは無礼だと思っている様だ。


「?(弁明って、あの像の事か?)構わないよ。後で拠点の部屋に来る様に伝えて。」

『はい』


短い会話だったのに周囲の目が集まっていることに気づいた。集まった精霊の数が多過ぎたのだ。そりゃ明らかに光の加減と違う精霊達が集まれば目立つのも仕方ないが、相変わらず空気が読めないものだとは言わないでおく。2人はさっさと神殿を離れて拠点へ帰っていくのだった。


*****


ヴェリュは2人の前に跪いていた。以前だったらジェフィティールに近づく事もできなかったのだが、精霊王たる3人娘がそんな体たらくでは困ると言う事で、近づく努力をしたのだが全くどうにもならなかった。スィフィルの説明によると、普通の人間が太陽のすぐ横に行け、と言われている様なものだという。そんなのすぐ横どころかすぐ死んでしまう、というか、例えがね、わかりやすいような、わかりにくいような…。なので、俺は一度ログハウスに戻って、VRスーツを着用しアバターに当たる人工生命体人型(ヴェノデオキシ)をウッショロケシの拠点に配置した。これになら問題なく近寄れるからだ。


『さて、()()()()()()()。ウッショロケシの神殿にある、()()について申し開きをしてみよ。』


スィフィルの冷ややかな口調に、顔を伏せ跪いたままのヴェリュは今にも凍ってしまいそうな冷気を震えながらも耐えていた。


「スィフィル、優しくね。俺だってアバターにわざわざ着替えてこうやって話聞こうとしてるんだからね?」

『はい、失礼いたしました。折角の()()()()()()()を無に帰してしまうところでした。』

「はぁ…。わざとそんな呼び方してプレッシャー掛けなくても大丈夫でしょ?」


本当にスィフィルは、まぁね、あんな面白い神像が出来てるなんて思いもしなかったけど、楽しいじゃんヴェリュの神像だよ?出来も良かったしね。でも、想像で作ったにしてはヴェリュに似すぎだから聞いてみたいよね。背に翼を持っている理由もさ。


『さぁ、時間を無駄にするな。』

『はい、じ、実はこの町が現れた時ここに一番近い管理者は私でした。その為確認に来た私はしばらく離れたところで様子を窺っていたのですが、神の奇跡を目の当たりにして感動のあまり町の上空を飛び回っていたのです。…そこを住人達に見られたのではないかと思われます…。』

『…事実のみを報告せよ…。今の言葉に嘘偽りないのだな?』


スィフィルはまるで事実を知っている上で、確認しているかの様な口ぶりだ。その言葉に、ヴェリュは伏せたままの顔をバッと慌てて床に擦り付けた。


『も、もももも申し訳ございません!!町の上を不用意に飛び回り、あまつさえスィフィル様の翼を真似て格好をつけ、途中からとは言え、町ができていく様や住人たちが次々とこの世に現れる様まで全てを記録したく記録機で飛び回りながら記録しておりました!』


ブルブルと身体を震わせながら土下座したままのヴェリュだが、全て報告した後も頭を上げる事はしない。ジェフィティールとスィフィルはヴェリュの話で納得した。神像がヴェリュそっくりだった理由も、翼がある理由も、そして魂源だろうと思った球体は記録機が光っていて彼らには何だかわからなかったのだろう、神像を作るにあたって球体にしたと思われた。


「で、ずーっと上空をぐるぐる回って飛んでる姿を見て、“神様”だと思われた、と?」

『はい、その様に愚考いたします。その時以外でこの町には近付いてもおりません。』


確かに町と住人が生まれている最中に意識を得た住人が、神像の様な姿の者を上空に見つければ、“神様”と見紛うかも知れない。彼らの人格はゼロからとは言え、彼らとしてみれば既に生活していたという意識の下に、翼を広げて空を舞い光を手にした人がぐるぐる回って飛んでるのだから、“神様”に祝福されている様な気にもなるかも知れない。


「ま、そういう事ならここ()()()()()()()()()()()って事で良いんじゃない?」

『そうですね、何かあった時は()()()()()()()()に頑張ってもらいましょう。』


スィフィルの冷ややかな笑みを見ることもなく、床に押し付けたままのヴェリュだが、何故かスィフィルが今どんな表情をしているのか、敏感に感じ取っている様だった。

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