閑話 ウッショロケシの神殿
久しぶりの閑話です。短い…。
ジェフィティール、スィフィル、町長のカラバックの3人は応接室にいた。
座っているソファはとても大きくて、例えば柔道の100キロ超級、身長2メートル超のお相撲さんなど超大型の人が悠々座れる仕様の様で、2人が座っている姿は子供の様だった。
カラバックにとっては丁度いいので、きっと彼に合わせたのだろう。
「それで?何でワシに会いに来た。あなた達とは初対面ではないか?」
「勿論、初対面ですね。私達は旅をしているのですが、この町に来たら町長にお会いしておかねばと思いまして。」
「?そんな事が必要か?」
『普通は必要ないと思いますが、しばらくの間この町に滞在させて頂くにあたり、新しい住人としてご挨拶はしておいた方が良いかと思い伺った次第です。』
「えぇ?わざわざ、そんな事、有り難く、えと、その…どうも?」
カラバックはスィフィルの丁寧な物言いや、態度に、あたふたしながら返事をした。この町には民に階級はないのだろう、そこ迄の対応を求めることもない。時々訪れる町外の獣人(特殊進化獣人)とのやり取りも、お互い気兼ねない言葉で対応しているから畏まった言い方や態度には慣れないのだ。
「すいません、長期滞在するときには先にご挨拶した方が良いかと思っただけですから。」
「それだけ?」
「えぇ、まぁできればこの町の特産とか名所とか、何かあれば聞きたいなとは思ってましたよ。」
「特産とか名所なんてないぞ?」
「はい?」
この町は特に何処か別の所と交易はないので、特産などないと言う。漁業も農業も酪農も有り余るほどではないし、全く足りない訳でもなく、農具、工具、漁具などにも過不足がない。(特殊進化)獣人達との交易も一度貨幣に等価交換して、その貨幣を使い必要分を買い物していると言う。不思議なもので、町としては停滞なのだろうが、戦争もなく、競争、闘争もない現状に不満を持つ者はいない様だ。子供達も遊び回り、少し大きくなれば親の手伝い、大人になれば後を継ぐ、それだけの事なのだ。学校は1年から3年ほど通って文字、計算、規律、道徳を教わり社会性を養うのだが、地上のどの人族の国にもこの制度はない。そして何より違うのが“神”というものかも知れない。
「いやぁ、それにしても突然訪問した割にキチンと対応してもらっちゃったなぁ。」
『そうですね。まぁ、特産なんてまだまだ出来てないとは思ってましたけど。』
「え⁉︎そうなの?」
『特産と言うのは他者を引き込む為のものだったり、他者との差別化や、他者に得意分野で売り込む為のものだったりしませんか?』
「…何か、そう言われたらそうかも?」
『そうであるとすれば、この条件にある“他者”が存在しないと、無理ではありませんか?』
「…そうかも…」
スィフィルからのダメ出しに、反省してますアピールをしっかりやって町中を散策する。
繁華街から少し離れた場所に天井がドーム型の建物があった。建物や周囲の雰囲気からして教会、神社仏閣のようなものだろうと感じたその建物に入ろうと進んでいったら、不意に声をかけられた。
「どちら様でしょうか?この町の方々ではないようですが?」
『これは失礼しました。私たちは旅の者ですが、町の散策をしていたらこちらの建物が目に入りまして。こちらはどういった建物ですか?宿泊施設とは思えませんし…。』
「はははは、そうですねこの建物は“神殿“でございます。神様に日々感謝を捧げ、正しく生きていく事をお誓いする場所ですね。」
「“神殿“ですか。…参拝、中を拝見してもよろしいですか?」
「勿論です。神もお喜びになるでしょう。」
2人は挨拶も終え“神殿“の中に入っていった。決して大きくないがドーム型の天井から光がキラキラと差し込んで色鮮やかな壁に光が当たり、とても心地よい空間がそこにあった。
一番奥の数段高い床の上に、背中の羽を広げ、両掌に大事そうにガラスでできている様な透明の球体を抱えた、長髪の人の像が立っていた。目は閉じているが優しく微笑んでいるようだ。
「…この像が“神“かな?」
『…そうですね、このような置き方をするのですからそうだとは思いますが、そうなると掌に浮いている球体は何でしょうね?』
「そうだな……。魂源かな。」
『“魂源“という認識があるかどうかわかりませんが、“神“と言うのが父上でない事が不思議です。』
「俺の記憶、夢が根底にあるなら“神“が俺になる事はあり得ないとわかっているだろ?」
『そうですが…。この文句は父上に言えばよろしいのでしょうか?自己評価が低すぎだと
。』
「いやいや、これで良かったとホッとするところでしょ?」
2人の会話は声が響く室内で他者に聞こえないように魔法で遮断しながら話していた。
大理石のような白くて綺麗な像をよくよく見てみると、髪型や服装が管理者のヴェリュにとても似ていた。背中の羽を無くせばそっくりだ。まさかね、そう思ったもののスィフィルと目を合わせ、じーっと像の方をじっくり見直す。まさかと思っていたけど、同じようにスィフィルも確信したのだと思った。
「『何をしているんだ?ヴェリュは…。』」




