最初に町 “ウッショロケシ”
バタバタして更新が遅れてしまいました。尚且つ短めです。
町長にも挨拶し、2人はのんびりと繁華街を見て回る。繁華街は一階が店で2階以上が住居の3階建てが並んでいる。衣服、食器、食品等々、商店街の様に建ち並んでいて、別の繁華街には工具、農具、金物、部品等々、また別の繁華街には食事処、食料品店などが軒並み並んでいた。人流もあり、栄えてる事が一目瞭然の町の人々の笑顔だった。
「平和な光景だなぁ。誰もがリラックスして買い物や食事に行っている。生活が裕福、まぁ、余裕があるんだろうな。」
『そうでしょうね、ゆとりが無ければ盗み、強盗、その他争い事は頻繁に起こるでしょうから。ですが、ここの住人達が人族以外、と言うのも大きな要因かも知れませんね。』
「残念だけど、一番の要因だろうね。人族みたいに欲深い性質の者がいないから成り立つんだろう。」
『そうですね。』
2人はそんな会話をしながらも時々店に入っては商品を見て回っていた。この町は<ヤクシェム>の恩恵を受けて豊かな土壌で苦もなく生活できている、子供から老人まで生活し、確かに生きているのだ。ただ、その命や全てにジェフィティールの力が及んでいる事はこの町に知る人はいない。彼にとっては命が簡単に生み出されてしまったこの事実はとても恐ろしい事だった。
簡単にできたものは簡単に消えてしまう。俺の見た夢から生まれたのなら、俺の見る夢によって消えてしまうかも知れない。既に生きて生活しているのにこの景色さえもなかったことになるかも知れないのだ。恐ろしすぎる。俺がどんな夢を見ても彼らが消えることのない様にするには…。
『…父上。町に名前をつけましょう。』
「へ?」
『父上が命名し、彼らの存在を、この世界に存在する事を認めさせるのです。そうすれば簡単に存在を脅かされる様なことは無くなるでしょう。』
「…そうだろうか…」
そうであって欲しいが、そう簡単な話ではない気がする。多分スィフィルも分かってはいるのだろう、ここ<ヤクシェム>自体がジェフィティールの魔力によって創られた世界なのだから。究極論として、<ヤクシェム>自体の存亡もジェフィティールの意思一つでどうとでもなってしまうのだという事だ。それだけ力があるのは誰も疑わない。
「(スィフィルもずっと不安なのだろうか、それともそんな事、考えもしないのだろうか?)」
俺の視線に気付いたスィフィルは不安など感じない笑顔を向けた。それは疑いようもない信頼と安心感を与えただけでなく、これ以上ない自信をジェフィティールに持たせた。そう、幸せな自信だ。
「(ありがとな、スィフィル。)」
この町の位置からすると港町として漁業の発展をしていくだろう。<ヤクシェム>の最初の街だし発展もしてもらいたいし、俺の夢から生まれたのなら堂々と日本の地名を付けても良いんじゃないか?若しくは似た感じとか、誰も知らないし、新しく感じるだろ?
「じゃあ、この町の名前を“ウッショロケシ”としようか。」
ジェフィティールが名付けた瞬間から変化が起きた。多分住人の誰も気付かないだろうが、ジェフィティールにははっきりと変化がわかったのだ。例えるならずっとそこにあった新しい道路がやっと開通した様な、ずっと待っていた新しい遊園地が開園した様な、地図に点線で描かれていた場所が実線で明確に表記された様な感じだ。そう、薄らかかっていた靄が晴れた様な感覚。実際、町とその他の地との境が明らかにあったのに、見えない境目は消え、逆にフェンスが必要箇所に現れた。それについて誰も不思議に思わないのだからそれこそ変だと思うのだが、何か、スッキリした気分になったおかげで町や住人だけでなく俺自身の気分が落ち着いて楽になった。
『父上の気分が良くなった様で、私も嬉しいです。』
「ゴメン、心配かけたみたいだな。もう大丈夫だよ。」
『とんでもない、父上が楽しい事が一番です。それだけで世界は平和ですからね。』
「何言ってんだよ、スィフィルは本当に俺に甘いよね〜。」
『(事実ですけど、そこまで言わない方が良さそうですね。)そうですよ、父上の事が一番大切なんです。』
「…ちょっと恥ずかしい…。照れちゃうから言葉にしないで…。」
そんな会話をしながら繁華街の散策を軽く済ませ、はじめの宿屋まで戻って宿泊する。
「何て言うか、部屋もベッドも大きいな…。これってスイートじゃないよな?」
『スイートとはよく分かりませんが、通常の大人2人部屋の様ですよ?特に町外れで、郊外からの客は荷物も多く身体の大きい方達ばかりなので、必然的にこの様になったそうです。お風呂も全て大きい為ベランダに設置されているものだけだそうですよ。』
「そうなんだ。まぁ、町長基準に考えれば丁度良さそうだもんね。」
『そうですね、繁華街に宿屋はない様ですので何処の宿泊施設も同じ様なものでしょうね。ただこちらは山側なので(特殊進化)獣人が取引に来たときに宿泊するかも知れません。』
「そうか、会えるといいな。特殊進化なんて、楽しみだ。」
そして、宿泊して一月にもなろうかという頃、彼らは町にやってきた。
朝早くから大きな荷車3台が道をゆく、山盛りの荷車を引くのは彼ら自身で馬などはいない。その為人数は9人で一台あたり3人が担当していた。全員が2メートルほどのラガーマンみたいな体格で矢も刃も通じないんじゃないかと思うような体つきだ。
ほぼ人の様だが熊の獣人だろう、顔つきと体格からの連想だが外れな訳はない。町に入ってきてそのまま取引のために道を進んでいった。森で狩った獣の皮と骨や牙、肉は塊で保存魔法がかかっている。
「へー、結構な量持ってくるんだなぁ、これでどれ位なんだろう。」
『相場を調べますか?』
「いや、そこ迄はいいよ。何を買って帰るのかな?」
『では、そちらを調べましょうか?』
「そうだね、その方がいいね。」
『畏まりました。』
そう言うとスィフィルは、ジェフィティールの傍から離れて彼らの後を追っていった。




