シュナイツとアムルタート 内緒話
ちょっと遅れました。ごめんなさい。
シュナイツに疑問をぶつけて、ある程度安心できる知識を手に入れたジェフィティールは楽しくて仕方ないのか、玩具を作ってはアムルタートに与えまくっていた。恐ろしいのは孫を溺愛する金に糸目をつけないお爺さん、知育玩具から単なる玩具まで地球にいた頃に存在を知っていた玩具の再現をしてしまったのだ。アムルタートもジェフィティールも楽しそうに遊びまくるが、スィフィルは苦言を呈する。
『父上、アムルタートも、遊びばかりではいけません。ちゃんと魔力操作や常識をお勉強してくださいね。その上で遊んでいただければ私もこの様な事言いませんよ。』
「あれ?そんなに遊んでる?魔力操作と常識か…。なんかそれ、俺用の勉強な気がするのは気のせいかな?」
『勿論、気のせいではありませんよ父上。もう大人なんですから、むしろアムルタートより必須だと思っておりますとも。』
ヤバいね、ちょっと調子に乗り過ぎたみたい。スィフィルが大分お怒りだ…。以前作った透明人工生命体不定型ヴェノデオライドを一万個欲しいと言われて、何に使うか聞いたら、どうもベオグルリンドス帝国があるガルドエスタニア大陸と<リーヴェル>があるバラルエルトニー大陸に偵察用にばら撒くという。まぁね、必要なことだし、スィフィルもあれが有用だと感じたんだろうから全く問題ない。ただ、折角の偵察用なので色々改良してみたのは不味かった。ただ透明なスライムの様だった以前に比べ、分体としてウィルスサイズの肉眼では捉えられないものを人の体内に潜り込ませる事を可能にした。問題は、こんな能力をつけたのは失敗だったかもしれない。
情報収集だけならここまで必要ではなかったのだが、敵になり得るものや、情報の取りこぼしがないようにしたかったから、こうなってしまった。その上脳に潜伏するので、後々恐ろしい事まで可能になってしまった。魔法や魔術を排除できたとしても、これにはほぼ対抗できないだろう。この世界では地球ほど人体の解明ができていないから出来たものと言える。
『父上、やり過ぎたなどと考えないで下さい。この性能は私の望むところですから。』
「いや、これはやり過ぎだ。邪神、悪魔と罵られても仕方ないよ。」
『…父上がそう言われるのであれば、この能力は使わずにおきましょう。通常の鼠や鳥、壁や天井に潜ませ情報収集させます。それならばよろしいでしょうか?』
「うん、それで頼むよ。作っておいてごめんね、スィフィル。」
『問題ありません。元々<ヤクシェム>の能力でも可能ですし、細かい作業が面倒でやっていないだけですから。』
「あ、そうね…。」
そうか、既に恐ろしい事をできる状態だったっけ。今更だったな…。でもやっぱりこの能力は使用禁止でいこう。
ジェフィティールはそんな事もあったなと、アムルタートを見つめながら「常識って大事だよな」と独り言をポツリと呟いていた。常識だけじゃなく善悪の基準、優先順位、良心、聖獣として恥ずかしくない存在であって欲しい、できれば、さすが聖獣様って言われる存在になってくれたら嬉しいな、そんな風に思っていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、また、シュナイツがやって来た。
「あれ?もうそんなに経った?間違えてない?」
『残念ですが、間違いなく一月経ちましたよ、父上。アムルタートも成長著しいじゃないですか?』
『父様もスィフィル様も嫌味にしか聞こえません!』
プンプンと怒るアムルタートだが、それもそうだ、姿は5歳くらい中身は15歳くらいのオマセさん、という様な扱いなのだから。でもそれはこの2人にとっては当然の事。彼らにとっては、まだまだ幼稚園児並みの能力しかないのだ、扱い方もその様になってしまっている。だが、その分しっかりと愛情を受けて育っているので、すくすくと育っていた。
「:ひと月ぶりだの。今日こそはのんびりさせて貰うから妾に構わないでもらいたい。:」
『僕も、今日はシュナイツと一緒に行くから、ほっといてね。』
「ついて行かなくて大丈夫か?あんまり周りに迷惑かけない様にするんだぞ。」
『大丈夫。僕は父様より迷惑かけないもん』
『そうですね。シュナイツ、あなたの方が大人なんだからアムルタートの面倒を見るように。頼みましたよ。』
「:え?妾は1人でのんびりしたいのだが…。:」
『何もべったりついてろ、という訳ではないのだから問題あるまい。』
「:はい…。:」
ジェフィティールはアムルタートとスィフィルの言葉に口を開けたまま固まってしまい、シュナイツはスィフィルの頼みと言う命令に身体を小刻みに振るわせていた。
2人はシュナイツのお気に入りの山に来ていた。勿論シュナイツはアムルタートの面倒など見るつもりもなく、ただのんびりとだらだらするつもりだ。だが、遊びたい盛りのアムルタートがじっとしているわけがない。シュナイツの安息の時間はほぼやってこないで一日が過ぎて行くのだった。それでも身体に魔力が満ちて調子良くなるので、<リーヴェル>に来ないという選択肢はない。
「:何故お前はじっとして居れんのだ?魔力を貯めようとは思わんのか?:」
『?魔力は十分だし、知識も大分増えたと思うけど、魔力操作とかはまだまだみたいだから遊びながら練習してるんだよ?シュナイツはもう必要無いんだろうけど、僕はまだまだだから。』
「:…どんな風に練習とやらをしておるのだ?:」
『ん〜、今は僕を中心に半径5キロメートル内の地下と地上の魔力を使って情報収集と、動物達が近寄らない様に気付かれない程度の結界を張って、この精霊と北の端の泉にいる精霊との情報交換に混ぜてもらってるとか?中々同時に沢山のことが出来ないんだけど、スィフィル様の課題はもうちょっとでできるようになるかも。父様は精霊を生み出して遊ぼうって言うけど、まだ無理だし…。』
「:…同時に幾つも多種類の魔術展開とか、生まれて間もない聖獣の出来ることではないし、精霊を生み出すのは妾も出来んが?聖獣が精霊を生み出すのでは無いのではなかったか?:」
『え、そうなんですか?父様はすぐ出来るって…。やっぱり出来ないですよね?』
「:其方の父はばけ…規格外に…非常に…凄いので、真似る事は出来んと思うぞ。:」
『…ですよね。今度父様にシュナイツに聞いたと言っておきます。』
「:それはやめよ!:」
シュナイツは慌ててアムルタートに口止めをする。実際、自分はできないがこのアムルタートはできるかも知れないし、他の聖獣にできる者がいるかも知れない。正直言ってここに来てから聖獣としての自信が崩れ落ちて、自分はただの聖属性の魔獣なのではないかとさえ思えるほどなのだ。それなのに聖獣には精霊は生み出せないと言い切って良いかわからなくなってしまった。
『どうしたの?なんだか元気ないね。元気出してね。』
そう言うとアムルタートは優しくシュナイツを撫でた。その手から温かい魔力がすうっとシュナイツに流れ込んでいく。驚くシュナイツだがにっこり微笑むアムルタートを見てそのまま横になり気持ちよく眠りに落ちた。アムルタートもボルゾイの様なシュナイツにくっついて寝てしまうが、寝ながらちゃんと防御の結界を張るところは、現時点で既にシュナイツよりよっぽどできた聖獣だ。
すっかり昼寝ができたシュナイツが目を覚ますと、自分にもたれ掛かって寝ているアムルタートがいた。姿は人だがやはり聖獣の匂いがすることから、不快に思う事はなく、寧ろ心地良さを感じる事が不思議だった。そんな事を考えているとアムルタートも目を覚ましたので、今感じていた事を話すと
『それは僕が宇宙樹の島で生まれたからかもしれないね。あそこは本当に、ん〜、なんて言うか、最後の楽園、みたいな所だから。』
「:最後の楽園⁉︎:」
『うん、最高の場所!』
アムルタートとシュナイツは最高の場所<ヤクシェム>の話で盛り上がるのだった。




