会合の締め
スィフィルは岩人ウォーベンに聞く。
『お前はこの地にどれほどの宝があるだろうかと期待していたが、本来のお前達が好むような岩場はないぞ。それなのに住みたいと望むのは何故だ?』
「:ここは良質な魔力が豊富じゃろ、地下深くには必ず岩盤があるもんじゃ、そこには必ずお宝がある。これだけの魔力じゃ、どれほどの質と量の魔石が出てくるか、考えただけで涎が出るわい。それを手に入れたいんじゃよ。:」
『…先程のシュナイツとのやり取りを見てもその態度とはな。お前達の欲望は命より重いらしい。』
「:そ、そんなわ…:」
スィフィルはウォーベンが反論する時間も与えず口を塞いだ。そして最後に水人と天人。彼らに聞く。
『さて、お前達はどうなのだ?少しは賢いところを見せてみろ。』
スィフィルさん、本当に人が変わってない?優しいスィフィルはどこに行っちゃったの?早く帰ってきて〜。殺伐とした雰囲気って好きじゃないんだよ…。
「:…私はただ良質な魔力が豊富な水源に住みたいだけよ。私たち水人族は天人族と同じ様に澱みには弱いの。清浄な場所じゃないと生きていけないから、天人族とは生息域が重なるのよ。天人族は樹の上が住まいだから領域が分かれてるけど、それはご存知でしょ?それにお互の弱点を補えるから丁度いいじゃない。:」
「:お待ち下さい、私はここには第一段階調査に来ただけなのです。“精霊様“が“聖域“とした地域の広さや位置など、また“精霊様“と友好的な関係を築けるか否か。最初から侵攻しようなどと考えてはおりません。この様に“聖域“内に立ち入り、同じ天人族がいたと勘違いし、感情が高ぶってしまったとは言え、大変なご無礼を致しました。どうぞお許し下さいませ。:」
水人ヴァランはここに住み着く気で、まだスィフィルに天人族なら分かる筈だと言い募っていたが、一方の天人タッティンドーは紫紺の虹の存在を忘れる訳がない。そう言った知識があるのは天人族だけの様だ。口調や態度が明らかに変わった。その態度の変化に周りが気付いた。天人族は上位と認めた者にしか謙る事はない。今までも“聖獣“と“精霊様“にしか敬意は払わなかった、それが今は身体が動けば土下座でもしそうな勢いだ。それが水人、岩人には青天の霹靂だった。ここにいる2人は“聖獣““精霊様“と同等、若しくはより上の存在なのだとやっと認識して記憶に刻まれた。そして自分達の今までの言動を省みて血の気が引き動けず話せないままの状態でパニックを起こし気を失ってしまう。
『はぁ…、情けない。何もしないうちに気を失うとは面倒な。父上、これ以上の会合は必要ない様に思いますがいかがですか?』
「そうだね、結界内には二度と入れるつもりはないから、もうお引き取り願おうか。あとの事は君に任せるよ、シュナイツ。君が来たら結界内の別の場所に入れる様にしておくから、こっちに迷惑かからない様に責任持って説得してね。」
「:!わ、妾がか⁉︎そんな面倒くさいこと:」
『その程度の事もせずにここに来ようというのか?<リーヴェル>に一切関わらないと言うならば、その様な雑務はせずとも良いがな。』
「:やらぬとは言っていない!少しばかり面倒だと思っただけじゃ!お主、気が短すぎではないか?:」
あら?シュナイツはなんで涙目なのかな?スィフィルもちょっといじわるな雰囲気だけど、なんか碎けてきたみたいだ、この短い時間でも仲が良くなってきたのかもしれない。俺もシュナイツとイシュバは嫌いじゃない。ヴァランとウォーベンはスィフィルとはやっていけないだろう、タッティンドーはプライドが高い奴みたいだけど改心したみたいだから害はなさそうだ。それにしてもこんな感じに他の大陸からやって来られるのは困るんだよね…。
“精霊”達は情報がこれ以上漏れない様にするとは言っていたが、一度漏れた情報を止めるのは無理だろう。結界の構築を見直すべきかも知れない。それに逆の噂を流すか?魔界的な?それはそれで面白そうだけど、別の意味で面倒が飛び込んできそうだ…。人族のいない大陸でのんびり好きな様に生きていこうと思ってたのに、こっちはこっちで面倒があるとはね…。
『父上?どうかされましたか?』
「あぁ、結界の構築を見直すべきだなって思った所。ただどうしようかな、ここに辿り着けないだけにすべきか?それとも視覚的にもなにもない様にしてしまおうか?この<リーヴェル>以外の大陸からは来れない様に大陸を囲っちゃうかとか、色々悩むんだよね。」
『父上のお好きになさって大丈夫ですよ。後のフォローはお任せください。』
スィフィルは胸に手を当ててにっこり嬉しそうにお辞儀をする。「そお?」などと簡単に考えられない事を話している2人を聖獣、天人、獣人は呆けたまま見ているし、“精霊”はただじっとしていた。
「じゃあ、面倒だから<リーヴェル>大陸だけ結界で囲っちゃうね。ついでにそうだな…、幻影の島として魅せる様にしようかな。“精霊”も“聖獣”も“獣”も幻影の中だけで生きる者としてつくろうか?それとも幻影なんだから魔界っぽくしちゃおうかな?」
『…父上、悪い顔してますよ。そんな事したら益々邪神だの魔王などと言われてしまいますよ?よろしいのですか?』
「あれ?幻影でもダメ?“魔界に囚われた楽園”みたいなコンセプトで幻影を作ったら面白そうだなぁって思ったんだけど…。」
『成る程、幻影だけですよね?エリア外に出られない様にしてくださいね?強さも控えめでお願いします。そうですね、強さと賢さの基準は彼女くらいでお願いします。』
そう言ってスィフィルは聖獣のシュナイツを指差す。指差された本人もびっくりだが、天人と獣人は別の意味でも大口開けたまま固まっていた。
「:(基準ってなんだ?上限か真ん中か下限か?真ん中だよな?聖獣が真ん中なのか?):」
「:(魔界とか、作るとか意味がわからんぞ?この大陸を包むとか一体何を言っているのだ、この2人は?):」
スィフィルはこの地に再び入れる気がない気絶している2人と天人、獣人には、新しい情報を与えるつもりがないので視界を閉ざした。ショックを受けた2人だが、先に気絶している水人と岩人を苦々しく見た。こんな恐ろしい会話を聞いてしまうなんてとんでもない事だ、ここに来たことも間違いだ、ここで寝ている2人の様にどうせなら気絶したいと思っていたに違い無い。




