バラルエルトニー大陸 押しかけ会合?
長くなっちゃいました。半分くらいにしたかったのに…ですので切るところが変かもしれません。長いと疲れますからほどほどに。
バラルエルトニー大陸、別荘<リーヴェル>では、大騒ぎであった。
と言うのも、精霊、聖獣、天人族、水人族、獣人族、岩人族など、この大陸の主だった種族が別荘の会議室に集まって会合をしているからだ。ジェフィティールがこの<リーヴェル>を建ててから、約半年、闇女神2月目16日。人族の暦だが今は闇女神の季節だベオグルリンドス帝国はほぼ毎日日が上らない。しかしここは真反対とも言えそうな気候だ。日の長さなど多少は変わるが、どちらかと言えば一年中温暖な気候である。森林や万年雪の残る山、豊富な水源など食糧事情さえどうにかなれば最高の生活環境である。そして今、この島には居なかった筈の種族達が集合しているのは何故か?
それはーーーーそう、“精霊“のせいだ。
<アバルア>で生まれてしまった精霊、少しは残ったみたいだけどどっかに行っちゃった大多数の精霊、その精霊の一部が今まさにここに居るが、何でかバラルエルトニー大陸の他の大陸に棲み分けできてる種族を引き連れてきたのだ。事前に許可申請もらったけどね。
「何故、わざわざ集める必要があったのか、何も頼んでないしね?」
『…そうですね。それに既に自由意志の存在で、父上に何か提案、懇願するなど、押しかけてきた上に厚かましい所業であれば、私が適当に殲滅たいしょしますが?』
ん、スィフィルが機嫌悪いから何にしてもさっさと終わらせよう。
「で、一体どういう訳でここに来たのかな?」
とりあえずここに来た理由を聞かないことには何も始まらないので聞いてみた。
《!^@#%&$*#)$&%^!》《$&%$#&*?》《あgんj;うがbj;亜sjっkv》《…^^%$?…》
「うわっと?待った待った!え〜っと。はい、どうぞ!」
参った。一斉に話し出すとは…。お陰で翻訳の調整がいっぺんにやらないといけなくなったけど、まぁ、この敷地内に設定したから楽ではあるな。お互いの意思疎通方法も確立してないできてるとは思わなかったけど、それぞれ言葉が通じなくても話し出すんだから、我が強い連中だな。
『それで、お前達の取りまとめ役は“精霊“でいいのだな?無理矢理連れて来られたなどの申し開きがあれば、今聞くぞ。』
「え、それは怖いだろ、スィフィル。もうちょっと優しくしても…。」
『いいえ父上。どんな輩も少し優しくすると付け上がりますので、最初にきっちりと意思表示をすべきです。父上は謙る必要はございません。この者どもが勝手に押しかけて来たのですから。』
「…そうかも知れないけど、勝手にここに別荘建てたのは俺だし…。」
『でしたら、先住種族にだけご恩情をお掛けください。この者達は勝手に来たのですから。』
スィフィルのにこやかな笑顔と裏腹の冷たい声が、誰がこの場を掌握しているのか、誰が強者なのか、誰の目にも明らかだった。俺も含めて全員が背筋を伸ばしてスィフィルの言う事を大きく頷いて聞いていた。
『父上まで何してるんですか?私はあくまで父上の補佐ですよ?』
「いや、何だろ、よろしくお願いします…?」
「(だってこういうのスィフィルの方が上手いじゃん。)」
『(父上が面倒くさがりなだけですよ…。)』
小さな溜息の後、咳払いをするとスィフィルはここに集まった理由を順序立てて聞いていく。
『先ず、“精霊“のお前。何故これだけ集める必要があったのだ?許可は与えたが、ただ挨拶に来た訳でもあるまい?戦いでも始めたかったのか?』
うおっと⁉︎ スィフィルさん⁉︎ “おまえ”ってなに?そんな喧嘩腰な?話し合いに入ったんだよね?いつもの口調じゃないですよね?どうしちゃったの?それも腕組みしたまま顎で促さないで、怖いから。
今回の会合の首謀者たる“精霊”が話した内容は、自分の出生について(ジェフィティールの魔力とその時の気分が自分たちが生まれた理由だと言う)説明し、<アルバア>に残った者、世界に散らばった者と別れたが繋がりはあると言う。そして俺の居場所をつきとめ付き纏う…もとい“一緒に居たい派“がここ<リーヴェル>周辺に集まったようだ。近くで良質な魔力を浴びて生活できていればそれで良かったのだが、最近多種族がその魔力に惹かれてか偵察が増えてきていた。
その事についてはもちろん知っていた、特に害がある訳ではないので放っておいたが“精霊“はそうもいかなかったらしい。俺が生み出した“精霊“だからか<リーヴェル>を“聖域”として近づくものを威嚇していたようだ。頼んでないけどね。それがより多種族の興味を引いたらしく、<リーヴェル>の存在がバラルエルトニーの他の大陸に住む多種族に知れ渡っていき、偵察部隊を送り出していた主だった種族の代表者が“精霊“を説得して<リーヴェル>の主である俺と“話したい“と、今日、ここに至った訳だった。
会議室に全員分の椅子を用意し、テーブルの上に飲み物やお茶請けを用意して話し合いの席を設けたが、話の途中から、どんどんスィフィルの機嫌が悪くなっていく。それでもちゃんと自制していることがわかるので要らぬ口出しはしない。
『それで、棲み分けできてる種族どもが、態々一堂に会して何用か?』
「:ここが“精霊様“の言っていた“聖域“なのはここに入って納得いった。この様な清浄な場所は我が国にも、我が知る限り何処にもないです。:」
獣人族イシュバの意見に皆が同意し、誰もが周りをキョロキョロ見回し、用意した飲み物やお茶請けだけでなく、器にも興味を示した。イシュバはライオンの雌のような外見だが雄で、体毛は灰色で二本足でも歩けるが指先を器用に使う事はとても無理なようだ。そして今度は水人族のヴァランが興奮気味にプールに関して意見する。
「:あれは何です?人工的であるのに、魔力が豊富な上澱んでいない池なんておかしくありませんか?:」
「:“聖域“だからだろ?:」
「:何でもかんでもそれで済ますのはおかしいですよ?獣人さん。:」
「:だが、この地域の地面は良質な魔力で満たされているぞい。歩いているだけで地面から魔力がふわふわ埃のように舞いよる。“聖域“だからじゃろ?:」
岩人族のウォーベンが間に入る。彼は所謂ノームのような小柄なおじさんだ。基本は地下で暮らしている種族だから岩や土の質が特に気になるらしい。
「:それよりも私はここに居る天人族に興味がありますね。何故ここに?どう言う立場で?何処の出身なのか、全てお聞きしたい。:」
『…。』
天人族のタッティンドーはスィフィルを同族だと言ってじっと睨んでいるが、スィフィルの方は全く気にもせず無視しているし聖獣は名乗らずただじっと会話の内容を聞き、周囲を観察している。
『…つまりこう言う事だな?おまえ達は“精霊“が守り侵入を阻んでいる“聖域“の魔力の心地良さに、自分達もその恩恵を受けさせろと、勝手に乗り込んできた訳だな?つまり、侵略だ。』
スィフィルの普段綺麗なお顔が、般若が見え隠れするお顔に…。今にも魔力が漏れ出しそうなんですけど、大丈夫か?“精霊“もスィフィルよりの意見のようだし、落ち着こうね?
「:待て!そんなつもりじゃない!:」「:独り占めはずるいんじゃ…:」「:この地下は住み心地良さそうじゃし…:」「:天人族のものは天人族皆で共有すべきで…:」
またまた一斉に勝手な事を言ってるし、面倒だな…。と思ったら、スィフィルがチョイ切れした。人差し指を立て横にピッと振ると全員口が動かなくなり、声も出せない。そしてその人差し指を下にピッと振ると身体も姿勢良く椅子に座った状態になった。
『…五月蝿い…。おまえ達は余りにも愚か過ぎる、賢い者は居ないのか?“聖獣“。おまえはどうだ?』
「:妾は、ここに居るととても心地良い。妾の住処はここより西の大陸だが一族皆それぞれが色々なところを移動している。住処を持つ妾は一族でも珍しいのだ。いつか一族の誰かがここを訪ねても追い払わないでほしいとは思う。他のものは大概長居はせんだろうから。:」
『お前はここに住み着くとは言わぬのだな?』
「:…ここに住めれば良いとは思うが、お主は許さんだろ?妾は、偶に遊びに来れれば嬉しいが、それもダメであろうか?:」
スィフィルは俺の方に向き、はっきり従者の礼をとって聞く。
『父上様、この“聖獣“に関しては稀に遊びに来る事を望んでおりますが、如何致しましょうか?』
「そうだな、入れる範囲を決めて稀に来ることは許そう。また“聖獣“族が稀に立ち寄ることも同じ範囲で許可するが、こちらに迷惑が掛かれば許可は取り消す。」
『畏まりました。』
スィフィルは“聖獣“の方を向きにこやかな笑顔でジェフィティールの決定を伝える。“聖獣“も次回から手土産を持参する事を約束した。先程までとの落差に他の者たちは動かない身体を強張らせた。獣人のイシュバは情けない事にキューンキューンと鼻を鳴らしてしまった。既に目に涙も溜まって充血している。その声に戦意はないと判断して、スィフィルは話せるようにした。
「:ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!“精霊様“が守るほどの所だからきっとすごい所だろうって、行って来いって言われました!ちょっとだけでも何かもらって来れたらいいなって思いました!:」
うわ〜、ぶっちゃけたなぁ。まだ若そうだし、そんな感じなんだろうとは思ったけど、獣人て正直だよね、特に彼の種は…。「我」とか言ってカッコつけてたけど違和感ありまくってたからね。耳までぺしょってなってるし、何かかわいいね。イシュバには後で手土産をあげちゃおうかな?なんて思ってたら、スィフィルに何か睨まれた。考えがバレてる?読めない様にしたよね⁉︎
スィフィルは残りの3人、水人ヴァラン、岩人ウォーベン、天人タッティンドーに順番に聞いていく。
「:こんなに綺麗で魔力に溢れた池とか川とか独り占めってよくないと思うのよ。ここに住んでいるのはあなたたちだけなんでしょ?私達水人族がここに引っ越してきて寂しくないようにしてあげるわ。ついでに守っても…:」
『恩着せがましい上に、寄生するつもりか。話にならん。父上様、これは殲滅対象ですね。』
スィフィルは聞くに耐えないと、魔法でまた口を塞いだ。ヴァランは何故拒否されるのか理解できない。水人属と天人族は長い間良好な関係だ。天人族の1人が仕切っているのだから当然優遇されると思っていた。
「:わしゃここの地下に住めたらどんなに楽しいじゃろうと思う。これだけ豊富な魔力を含んだ土地はない、地下にどれほどの宝があるじゃろうか…。楽しみでならん。:」
『…確かに、岩人族ならば知らぬ間に地下に住み着く事も簡単だろう。』
「:じゃろ?:」
『ーーー他の土地ならばな。出来なかったから交渉しようとこの様に一緒に来たのだろう?』
「:!…じゃ、じゃが迷惑はかけんように…:」
ウォーベンはヴァランと同じように魔法で、口を塞がれた。
「:…:」
天人タッティンドーは無言だ。どうもプライドが高いらしくスィフィルを睨みつけている。基本的に天人族が人族を嫌っているのは有名だ。
魔力も弱い、知識もない、文化レベルが低い。総じて人などはそんなものだ。なのに目の前にいる同じ天人はその人族に従者のように付き従っているではないか。何たる侮辱だ。そんな思いが抑えても溢れる感情となって他の情報を忘れさせた。
ここにいる“精霊様“を生み出した存在が、誰であったかを。
『…まず先程のお前の質問に答えよう。私の名はスィフィル。我が父ジェフィティール様に創造された者であり、付き従う者。宇宙樹の島の守護者であり、<リーヴェル>の管理者である。』
「:創造された?…宇宙樹の島とは?ここのことか?<リーヴェル>とはなんだ?:」
『詳しく知る必要はない。ここが<リーヴェル>だ。』
ドン!とタッティンドーの目の前でテーブルに両手をつく。10本の爪全部に紫紺の虹が宿っているのが見えた。いや、わざと見せたのだろう。タッティンドーは眼球が落ちるのではないか思えるほど目を見開き息を呑んだ。これ程のオーパールの虹を持っているものは自分が知る限り何処にもいない。以前人族に起源の虹を宿した者がいたと噂を聞いた事があった。だがそれは邪神だったとか悪魔だったとか、噂を確かめたくても“精霊様‘や多種族の噂話で真偽は掴めないままだった。
現在確認できているオーパールの虹は瑠璃の虹を片手3本ずつの6本が最高位であり、この世界で最高位なのは魔法師である自分の祖父だけだ。その祖父でさえタッティンドーにとっては崇拝対象であるのに対し、紫紺の虹は崇拝以上、何が何だかわからない存在だ。自分はなんと恐ろしい事を、何と不敬な事をと震えながらギリギリ意識だけは手放さずにいた。




