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異世界転移?無双?チート? 好きに生きる為に必要みたいなので喜んで⁉︎  作者: ゆるゆる
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メヒモンテスの行方

秋女神(ケラスドヴェン)二月目三十日


吹く風も冷たさを増し、早い朝には吐く息も白く外を歩く領民の服装も重ね着やマントを羽織るものが多くなって、日が出ている時間も短くなっていた。

メヒモンテスは、オイルスキンの上等なマントに身を包み、日は出ているがまだ朝靄の残る時間、人通りもなく馬の蹄の音が響く中かつて両親、弟と住んでいた西の領地<ジャンゴー>の領都<ドゥルガン>、そこから西の郊外にある村を訪れていた。家族を亡くしもう20年近くになる。だが、そこにはもう村はない。家だったものは朽ち果て、畑だったところは雑草と木が生え、どこまでが村落だったかさえ判別できないほどだった。


「…」


メヒモンテスにとって、当時の記憶は辛く20年経った今でも胸をかきむしりたくなるものだが、その後魔術の師匠であるジェフィティールに出会えたことは自分の人生の中で最高の幸運だったと言える。でなければ、数日のうちに息絶えていただろう。だが、その大恩人であり、師匠であり、養父であるジェフィティールになんという仕打ちをしてしまったのか。なぜ自分は師匠と共に国と戦わなかったのか、いくら師匠に決別されたとしてもしがみ付いて行くべきだったのではないか、どうしていつも自分はこうなんだ。俯き肩を震わせるメヒモンテスを慰めるものは誰もいない。


「…なぜ、最後まで共にいることを許したのがアイツ(チャスカ)だったんですか?アイツ(チャスカ)より私の方が役立たずだというのですか?そんなに私は信用できませんでしたか?」


天を仰ぎながらメヒモンテスはここに居ない師匠ジェフィティールに問う。その目は天を睨んでいる様だったが、勿論答えなど返ってこない。握りしめていた拳が緩まるとメヒモンテスは深呼吸をしたあと馬に乗りその場を後にした。

竜眼(ドラゴンアイ)の虹(レインボー)を全両指に持っているメヒモンテスはベオグルリンドス帝国の宝と言っていい存在だ。ジェフィティールの弟子の中で宮仕をしているのは彼だけだからだが、他の3人は国に住んではいるがいつ他国に移動しても仕方ない立場なのである。それは(メヒモンテス)が生きていく上で仕方のない選択だったのだが、今ではその立場も煩わしいだけである。

そしてその立場がある故に師匠と決別せざるを得なかった事も。


村の跡地から畔道を通り街道に出て、少しばかり領都<ドゥルガン>に向かって進んだ辺りで、急に周囲の空気が変わった事に気づいた。


「!(何だ?結界か?いつ入った、何の抵抗もなく魔力が反発もしないなんて!)」


メヒモンテスは気付いてないフリで馬をそのまま歩かせ、周囲を魔術で探る。馬も怯えていないと言う事は敵意はないのだろう。だが、強力な結界なのはすぐに理解した。近くに人の気配もなく、感知できず解除できず抵抗できず術式も理解できない結界など、師匠以外にもできる者がいたなんて。内心焦りしかなかったが、少ししてその術者が接触してきた。


《聞こえるかな?メヒモンテス。声を出して返事をしてくれる?ちょっと調節したいんで。》


メヒモンテスはぼわんと幕に包まれたような音声に、知らない魔術の行使に驚異と知識欲が刺激された。


「…何故?…私の名を?…お前は誰だ?…。」

「おー!よしよし、これでいこう。」


音声が明確になり、姿でも現したのかと思えば煙の塊のようなものが人の形で現れた。目も鼻もないが、手足と口だけは動いている。


「久しぶりだな、メヒモンテス。元気そうで何よりだ。」

「…私の知り合いのような口ぶりだが、お前は誰だ?この様な魔術を使う知り合いなどいない筈だが?」

「あぁ、悪い悪い。そうだな、分からんよな。俺はジェフィティールだよ。信じられないと思うけどな。」

「…師匠の名を騙るとは良い度胸だな…!どこの派閥の者か知らないが、私ももう心を決めた(・・・・・・・・・)んでな、無傷では帰さんぞ!」


メヒモンテスは瞬間に怒りが沸点を超えた事で、魔力が一気に溢れてしまった事に気がついたが、もうどうでも良いと魔力の放出を止めなかった。


「おい!待て待て待て!落ち着けって!メヒモン!!」

「!!!!」


それは、ジェフィティールがよく使う呼び名だった。それを知っているのはかつての仲間である師匠と弟子3人だけである。他者の目や耳がある場所では決して使わなかった為絶対の信頼のおける呼び名とも、合言葉とも言える。


「…誰だ?こんな術式は知らないぞ?何故姿を見せないんだ?」

「ふ〜。悪いな、結界張ってるとはいえ慎重に接触しないと、お前の立場が悪くなるしな。それにちゃんとジェフィティールって名乗っただろうが。」

「…師匠が転生術式を行使されたことは仲間(わたし)達全員が知っている事だ。他の誰も知らないがな。それにチャスカが帰還設定を300年に設定したと聞いている。いくら何でもたかが4ヵ月程度で戻って来るなどないだろう。」

「あぁ〜、それな。聞いて驚け、アイツ(チャスカ)に設定弄らせたのが失敗だったんだよ。俺もビックリしたけどな。」


メヒモンテスは少しだけ警戒を解きながら話を聞いている。


「なんてったって、転生してから戻ってきたの12日後だぞ?あり得ないだろ⁉︎」

「………はぁ⁉︎」

「だよな?そういう反応になるよな!全くアイツのおバカ加減にしてやられたよ。300年どころか300時間ってところだぞ?まぁ、300秒や300分よりはマシだったけどな。」

「……」


馬上であんぐりとしたメヒモンテスはその言葉に、完全に警戒を解いていた。アイツ(チャスカ)ならあり得る、やりかねない、いやきっとやるな。という考えが頭を占めガックリと頭を堕とした。


「…それで、師匠。4ヵ月も経ってから(・・・・・・・・・)私に会いにきた理由は何ですか?」


戻って来てから直ぐではなく時間が経ってからだった事に、少しだけ臍を曲げたメヒモンテスが聞いた。


「あぁ、それはだね、メヒモンよ。ちょっとしたお願いがあるんだよ。」


メヒモンテスは懐かしいその口調に完全にジェフィティールだと確信した。そして、そう言う時は必ず面倒事を押し付けられた事も思い出していた。


「…一応聞きますが、お断りしても良いのですか?」

「ん〜、それはちょっと。受けて欲しいなぁ。」

「やっぱり。(断れないんじゃないですか、全く。)」

「でも、本気で嫌なら言ってくれ。その時は別で考えるから。」


ジェフィティールはメヒモンテスが断るとは思っていないらしい。確かに今までも本気で嫌な仕事をさせられた事はない。面倒だけど、メヒモンテスが興味のある事や面白いと感じる仕事ばかりであった。なので、内容を聞いた時メヒモンテスは目を輝かせて二つ返事で引き受けたのだ。


「良かったよ、引き受けてくれて。でさ、同行させたい人でもいる?お前の場合宮仕だから引き継ぎもしないとダメか…。」

「引き継ぎなんて要りませんね。どうせ私の代わりになる者は皆無だし、そんな態々追いかけさせるような要因を与えてやる必要もありません。」

「ま、そうだな。で?同行者や荷物は?」

「大事な物はいつも持ち歩いていますから。他は変えの効くものばかりです。」

「…メヒモンらしいな。じゃあ、このまま行くよ。」


ジェフィティールはメヒモンテスを馬ごと転移させる。そこに展開していた結界も何事も無かったようにスーッと消えていった。

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