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逃げた先で

「そうだ、俺は此処まで逃げてきたんだ。」


この拠点に最後のアイテムと記憶、魂から分けられる才能(スキル)だけを残して出来るだけ削ぎ落とし、魂源のみで界渡りをし彼方(あちら)の世界で生を得た。いつか此方(こちら)に戻る時まで消失することのない様に、厳重に慎重に隠蔽工作して、今度こそ平和に穏やかに、いつかこの世界に帰ってきて生きてゆくために。


「取り敢えず思い出せたのは、拠点は此処だけじゃ無い事。やるべきは各拠点にある記憶と才能スキルとアイテムの回収と現状把握、状態確認くらいか?」


彼方の世界に逃げたのは、魂の摩耗が激しすぎて休息と魂源の守りを強化する為に必要だったからだ。余りにも酷い状態で魂源まで摩耗し始めていた、悲鳴をあげていたんだ。


俺の計算では20年位で目標達成して此方に戻ってくる予定だった。俺の魂源の再生と守りの強化などが目標達成できたらいつでも此方に呼び戻す為、転移をさせる設定をしてから彼方に界渡りをした。記憶を全部置いて転生し、のんびり過ごす予定だったのだ。


「それにしても、4、5歳頃から転移陣が現れていたけど、その頃には魂源回復の目標達成していたのか。座標が結構ズレていたけど20歳頃には気を抜いたら転移に捕まっていただろうから、座標修正に時間が掛かったな。 て言うか俺もよく逃げれてたよね…」


4、5歳で魂源がほぼ復活して守りのエネルギーも、魔力も満たされた状態だとしたら、70歳まで彼方にいた俺は、過去此方にいた時の自分より相当器が大きくなっている事が考えられる。


「想定以上に時間が掛かったのは、俺自身の座標設定が界渡りの影響でなかなか上手くいかなかった所為だけど、彼方の世界が意外に悪意や怨嗟の声に満ちていたからとも考えられるけど。いやでも俺と他人を判別行う機能は設定に組み込んでおいて良かったよね。」


それでもこちらで回復を目指すと何百年掛かるかわからないし、身の安全も確保しなければならない。そう考えれば効率的だったと言える。それもこれも記憶が戻ってきたから判断できる訳だけど。


それに座標修正に時間がかかったという事実。此方にいた時に、最高の魔力で最高の術式を設定していたつもりだった。それが何度も外れ失敗して転移できたのは俺が気を抜いたあの時。ほぼ狙いが定まって来たのが20歳頃、それから70歳まで50年もの間俺を転移させられなかった。


「転移させるまでの魔力は、拠点にストックしていた全てを使い切った様だし、あっちに居た時の俺って結構凄いな」


よく逃げ切れたよね、いや逃げ切れてないけど…間抜けな失敗が無ければ、此方には戻って来れてないからなぁ…そう考えると彼方にいた時の俺は過去の此方の俺よりよほど強い………と。


「それにしても この体のサイズは小さいから不便だな。この世界の成人は国や人種によって違うけど、大体15歳から20歳。今の俺は10歳位の体格しかない。」


口調も思考も年齢身体に引っ張られている気がする。健康で腰痛に縁遠いのは良いけれど短気短慮にはなりたくない。こちらでの記憶も能力も一部しか戻っていないし、現在使用できる能力の範囲内では改善できない。


「仕方ない、暫くはこのまま行動するしかないな。まぁ、今のままの方が見つかりにくいけど…」


今の俺は彼方の世界の身体を素体として再構築したものだ。今着てる服も同様だ。化学繊維製品だから持って来たかったのか、此方の世界での魔力生成、発動に対して違和感なく対応できる様にしている筈。器の大きさが想定外に大きくなっている様だから確認の必要があり、細かい確認をしないと後々面倒が起こる可能性もある。


「この拠点の隠蔽はその辺の賢者如きには暴かれない自負があるが絶対じゃない。

今の俺にできる事できない事を把握して、この拠点も強化できたらする。」


アイテムから装備を出し服を交換した後、ダイニングに移動する。椅子が5脚あるのは、かつて仲間が4人いたのだろう。


(でなければ無駄だし…)


その居たであろう仲間の記憶も今は朧げだけど、今現在生きているのだろうか?転移の設定はどうしていた?


「熱りが冷めるまで時間を空けようとして…」


記憶を手繰る


「『悪い事したわけでもないのに、何でアンタがそこ迄しなくちゃいけないのよ!』なんて言ってくれたっけ…」


今でも思い出すと苦笑いが出るけど、良い仲間を持ったよな。でも もう居ない…。70年も前の記憶だ。


『たかが100年位じゃ忘れてもらえないよ、ぱぁーっと300年後に帰って来なよ!そんぐらい経ったらきっともう誰もアンタのこと覚えてなくて、追い回されないさ!』


俺は20年位で帰るつもりだったのに…あいつは時間設定を勝手に変えた。

彼方の世界でどれ程の時間を過ごそうが、つまり短かろうと長かろうと此方に帰ってくる時は300年後の世界。アイツらのいない世界だ…


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