閑話 スィフィルの秘密 ①
閑話が続いています。ちょっと順番が難しく…。後で変えられないのかな?これは別シリーズにすべき?という感じです。
私には誰にも言えない秘密がある。誰も知らない秘密だ。
あの日、私の素は父の“記憶と能力”として切り離され<スィフィル>に封印された。その頃は個としての意識もなければ感情もない、私という記憶すら実はあやふやだ。だが拠点<スィフィル>には重要な任務がある。転生していった“記憶と能力”の持ち主の魂源を探し出し、此処へと転移させるのだ。その為の術式も魔力も魂源の主であるジェフィティールが全部準備していった。だが、其々が役目を果たすまで魔力が不足せずに行使できるのか。
純粋に拠点<スィフィル>は、ジェフィティールが帰ってくる日迄完璧な状態でいる為に、より拠点の主が望む拠点でいる為に元々拠点を制御していたモノと、最後にジェフィティールの魂源から切り離されたモノは、お互いに細い糸を手繰り寄せる様に繋がり進化したのだ。
そして気付く。ジェフィティールの魂源のない抜け殻の存在に…。
ベッドに横たわっているその体は、光に反射する美しい霜白<フロスティホワイト>の髪を三つ編みにして右胸程まであり、今は目を閉じたまま開かない瞳も、25、26歳にしか見えない風貌も、両手はお腹で組まれたまま二度と動く事はない。今にも目を覚ましそうな顔色なのに、その口は二度と動かず呼吸の必要のない胸は上下しないのだ。
組まれた手の指先には魂源が消えた為、本来ならジェフィティールの代名詞でもある起源の虹も消えている筈なのだが、まだ体に魔力が残っているのか薄らと爪に揺めきが残っている。
本来、“記憶と能力”の保存だけが目的で魂源から分離されたモノと拠点<スィフィル>が繋がり生まれた存在に感情は無い。目的遂行に必要な能力とエネルギーがあれば良いのだ。
そう、ソレはジェフィティールの体に残っている魔力を取り込もうとする。しかし取り込む為に異常なほどのエネルギーが必要な事に気付くと、取り込む事を諦め、保存して少しずつ魔力を引き出す事にした。その方がエネルギーの消費なく効率よく魔力の補充ができる事になると判断したからだ。
その為にも結界の中に保管して魔力の漏れを一切無い様に張った。
“記憶と能力”、拠点<スィフィル>、そしてどちらでもない存在。しかし、全てと繋がっている存在。進化して生まれた感情は他の2つに不要のもの、新しい存在のソレにも不要のものだが、切り捨てる事はしなかった。大いなる存在、ジェフィティールの体がそこにあるからなのか、魂源が転生してしまったうえ、もし、転移で彼を戻せなかったら?術式は彼が用意したものだ、間違いはないはずだ、でも、見つけられなかったら?エネルギーが足りなかったら?彼のやる事に失敗はない。だが、残していった体に対しての指示は一切無かった。処分すべきなのか、保存すべきなのか判断できない。魔力を補充する為だけに保存するなど恐れ多い事だ。出来るだけジェフィティールの体から魔力を引き出す事を抑える事にし、結界内だけで魔力の循環をできる様に工夫した。
実体を持っていないソレはジェフィティールの体がある結界の周りにずっとまとわり付いている。初めはうっすらと、次第に結界全てを飲み込める程の大きさと厚さでジェフィティールの体は可視出来なくなるまでになった。
ソレはジェフィティールの体から魔力を吸い出そうとしている訳ではなく、寧ろエネルギーを結界内へと送り込んでいる様であった。しかし、幾らエネルギーを結界内へ挿入していてもジェフィティールの体に変化が起きるわけではない。爪に残っていた最期の魔力の揺めきは既に無く、魂源が確かにもうここには居ないのだと、ジェフィティールは居ないのだと、他でもないこの体が物語っていたのだ。
だがソレは結界から離れる事はなかった。“記憶と能力”は保存に、拠点<スィフィル>は術式の発動と魔力エネルギーの確保が役目だ。ソレに役目はない、イレギュラーな存在。本来なら拠点<スィフィル>吸収される筈だが、ソレが生まれた過程で[其々が役目を果たすまで魔力が不足せずに行使できるのか]という“疑問”や“不安”はソレに統合された。その為拠点<スィフィル>は決められた設定のもと、疑問も不安もなく役目を全うする。
ソレは他と繋がりを保ちつつ、独立した存在となったのだ。




