閑話 管理者ヴェリュのとある1日
私は宇宙樹の島の管理者の一人、水属性のヴェリュ。スィフィル様に見出され、創造主様に名を頂いた高貴なる存在。
私の仕事は<ヤクシェム>の管理と発展に寄与する事。その為の魔力も才能も当然持ち合わせています。ですが、水属性の私の管理範囲はとても広いのです。水属性ってホント損な役回りですね。池も川も湖に終いには海もですもの、眷属を増員しても全く手が足りません。
『創造主様が生み出された獣達は私の思う通りになりませんし自由過ぎます。私の眷属達も数はまだまだ足りないですし、困りましたね。これは早速スィフィル様にご相談いたしましょう!』
私は面倒な仕事…いえいえ…光栄な仕事をより効率よく進める為に、スィフィル様にご相談に行くのですから、神妙な面持ちで行かなければ。にやけた顔をしている訳にはいきませんものね、そうよ、真面目なお話をするのよ、ただお顔を見に行くためだけじゃないわ。
あぁ、でも、スィフィル様のお姿を思い浮かべるだけで他の事はどうでもよくなってしまいそう。困ったわ、スィフィル様が惚けた私をお許しになるわけがないもの。ちゃんと仕事のできる私でないと管理者から外されてしまうかも知れない、そんな事になったらスィフィル様のご尊顔を拝めなくなってしまうし、言葉を交わす機会さえ失ってしまうわ…。
『ダメよ、ダメダメ!そんな事!ぜ〜ったいにダメ!想像するだけで正気を失いそうだわ!』
頬にあてている両手が震えている。パンパンっと両頬を叩いて気合を入れ直し、ログハウスから少し離れたところにある大きな樫の木に面会に行くのである。
『スィフィル様、この度は面会のお時間を頂きありがとうございます。』
『問題ありません。それよりも相談があるとか?』
スィフィル様は相変わらず無表情でいらっしゃる。創造主様に見せる様な笑顔までは願いませんが、少しばかりの微笑みでもいただけたら嬉しいのですけど…。
『はい。ここ<ヤクシェム>の成長に私の眷属の数が間に合いません、この様な事をお願いするのは心苦しいのですが、眷属を増やす為に魔力の補充、若しくは…スィフィル様にお力をお貸し頂けないかとお願いにあがりました。』
『ふむ…。』
暫く沈黙したまま何かを考えていらっしゃる様でしたが、スィフィル様の答えは短い物でした。
『特に不都合を感じませんね。手が足りないと言いますが、問題ないでしょう。正直なところ父上のお力で生まれた宇宙樹の島ですから、私やあなた達の力など大して役に立ちません。管理者というのも名ばかりのただの住人に等しいのです。気候や海流なども管理下に置いておられるので、不都合が生じた場合のみ報告をお願いします。』
『…住人…ですか…?』
『そうです。住むのに不都合がある事象について報告して下さい。それがあなたの役目です。』
『畏まりました。』
私とスィフィル様の面会はそれで終わってしまったけれど、たっくさんお話しできたわ…。小さくても威厳あるお姿、心地よいお声、涼し気な眼差し、何もかもが素晴らし過ぎて何て幸せな時間だったでしょう…。
『私達は皆、ここの住人でしたのね。つまり私は我が眷属達の長という立場になるわね。』
私はここ<ヤクシェム>の住人として選ばれたのだと、創造主様がお造りになられた楽園の住人として相応しくある様に努めようと、心を新たにいたしました。




