ちょっと休憩
各拠点を回って同じ様にVRスーツを用意し、使用方法を説明した後俺はさっさとバラルエルトニー大陸の<リーヴェル>に帰った。<アルバア>でやらかした反省からだ。正直ビクビクしていつに無く魔力操作に集中してVRスーツを作ったのだ。
「ふぅ…。良かったよ、<アルバア>以外では精霊が生まれなかったし、無事にVRスーツ作って渡せたし、これでここで何の気兼ねなくみんなと会議できるよね。」
『(父上でしたらパスだけで会議など出来るでしょうに…)何故態々面倒なスーツを作られたのですか?』
「え、だって映像だけとか声だけとか味気ないし、やっぱり皆んなと同じ空間、時間の流れなんかを共有したいじゃないか。そりゃ、瞬間移動、転移っていうのもあるけど、それだと何となく後手に回る瞬間が来るような…、そんな予感めいたのがあってさ、あのスーツ作ったんだよね。」
『そうでしたか。畏まりました、それでは私もその様に準備いたします。』
「いやいや、直ぐにどうこうあるって訳ではないし、これから先あるかも分からないんだよ?何となく俺が、フッっと思っただけだから何も無いかもしれないよ?無駄かもよ?」
焦ってアタフタしている俺に向かって、いたって真剣なスィフィルが答える。
『いいえ父上。父上が少しでも対処している事に対して、私がやらないと言う選択はあり得ません。父上が動きやすい様(生きやすい様)根回し、準備する事が私の仕事ですから。』
「…ありがと…。」
そう断言するスィフィルに、俺の心にじわっと温かいものが広がった。本当にスィフィルには何かにつけ助けられている。全てにおいて、彼がいなければここまでスムーズに事は進まなかっただろう。ブレそうな時に引き留めてくれる、彼がいない状況はもう考えられない。
『どうしました?いじけてないでVRスーツをもう2つ作ってくださいね。一応父上と私の分もあった方が良いでしょう?』
…最近、ちょっとだけ意地悪になってきた気がするけど…。そんなやりとりが心地良い。
俺達2人分のスーツを作って早速試着し、別荘の周囲を散歩する。先ずはスーツを着たままの行動規制に関して、魔力の放出は意識的に抑えてる現状の尚且つ200分の1まで抑えられる様にしてある。つまりちょっと気を抜いても大して漏れないから大丈夫。外見は変えられる様にした。種類としては人、天人、水人、獣人、岩人など二足歩行している種族に限った。それに併せて声質、生態、魔力、魔法なども擬態できる様にしたので今のところ知っている種族に限られた。
「良いね、楽だな〜。気が抜けるのがやっぱりいいや。周りも気にしてないのが分かるし俺には必要だったな。スィフィルは?」
『そうですね、以外に着ているという感覚が少ない事に驚きましたね。自分の手を見るとおおきく覆っているスーツが見えるのに、父上を見ても何もそんなものが見えないことが不思議です。今の父上は紛れもなく天人ですね。父上のいつもの魔力の揺らぎが全く見えません。』
「そういうスィフィルは獣人だね。なんか似合ってるよ(豹っぽいところが)」
2人は軽く散歩を終え、別荘に戻りスーツを脱ぐ。どんなにスーツが着やすいとはいえ、やはり脱ぐとホッとするのかジェフィティールはプールサイドのベンチに寝転んだ。各拠点の様子は一応確認できたし、早急に対応が必要でも無い。そうなるとこの<リーヴェル>を網羅しようじゃないかと、意欲が湧いてきた。このバラルエルトニー大陸にいる間はアイツらの存在を忘れられている。その事はジェフィティールにとって精神衛生上とても良い事だった、傍にいるスィフィルにとっても。だから極力スィフィルは<ヤクシェム>かバラルエルトニー大陸で過ごせるように各拠点の守護者たちに通達する。『本当に解決困難な場合を除いて、絶対に父上に迷惑をかけるな』と。そして、定期連絡を怠ったり虚偽申告も許さない、正しく父上の希望を成すために行動せよ、と。
スィフィルはベンチで寝ているジェフィティールをじっと見ていた。見ているだけで声もかけない、ただじっと目を覚ますのを待っていた。
「ん…?んぁ、ふぁ〜…。どうした?スィフィル、何かあった?」
『いえ、何もございません。お目覚めになるのをお待ちしてました。』
「え、怖いからやめて。」
『お気になさらず、今後のご予定をお伺いしてもよろしいですか?』
「気にするからやめてね。あ、予定ね、大きくはバラルエルトニー大陸の網羅、小さくはこの<リーヴェル>の網羅。だけど、直ぐに網羅しちゃうと先住民のストレスになるかも知れないから、ゆっくりやる。あと、<ヤクシェム>の発展のチェックとか、かな。」
『畏まりました。それでは、<ヤクシェム>で新しい変化がありましたが、確認に行かれますか?私の方で確認して報告いたしますか?』
<ヤクシェム>の事でこんな風に聞いてくるのは珍しい。多分俺に見せたい何かが生まれたのだろう、あそこでは俺は一番自由にできるから、行くのは苦でも何でもない。
「わかった。直ぐに行こう。」
『はい。』




