ラシュナイ
俺はベッドに横になり<サラーサ>から戻った“記憶と能力”を整理していた。
嫌な記憶は少しでも別ホルダーに保存して、能力の確認を優先する。
「(…まぁそうだよな。重要度の低い“記憶と能力”から順番に俺から剥がして保存していったんだから、スィフィル、アルバア、サラーサときて残り2箇所。正直言って記憶以外はどうにでもなるんだよなぁ…。)」
そう、転移で戻って来て回収した記憶から、重要度の高いものから回る様に設定していた。転生前に ①→②→③→④→⑤ と順番に保存したら、転移で先ず⑤に戻る様に設定し、その後は④→③→②→① と回る様に記憶に残しておいたのだ。つまりはもう③番まで回収出来たから、残りの能力などたかが知れているのだ。
「(…正直なところ、今の能力で結構事足りてるんだよね…。他国とか行ってみたいんだけどなぁ。ダメだよなぁ…。さっさと回収して世界を見て回るつもりだったんだから、もうちょっとの我慢か…。ふぃ〜。)」
『もう少しの我慢です、父上。それよりもあの者の名も授けなければなりません。』
「!? 何で考えてる事…。覗いた?」
『とんでもございません。父上が分かり易いのですよ。』
「ぐっ…。はぁ〜、ホント、スィフィルには敵わないな。」
『勿体ないお言葉です。』
にっこり嬉しそうなスィフィルに俺も嬉しくて、照れてしまった。
そう、名前ね。 もう決めてある。
俺の表情から確信したのか、スィフィルは拠点<サラーサ>の守護者を呼んだ。今度はちゃんと少し離れた場所に跪いて現れた。
「君に名を与える。“ラシュナイ”それが君の名だ。」
そう名付けると、ラシュナイは黄色味がかった白い光に包まれる。その光はラシュナイに吸収されると、薄い青色だった瞳は濃い琥珀色に、赤みを帯びた金髪は見事なハニーブロンドに変わり、両手両脛に装具が纏われた。アマルと同じ様に内包する魔力が増大し、傍の狼は長毛種になり全体が白銀だが首回りと足先は黒く、背中にも数本黒い縞が入っていて狼ではなくなっていた。
アマルは瑠璃の虹のオーパールの印を持っているが、ラシュナイは純白の虹のオーパールの印を持った様だ。そしていつも通り魔力が俺にも還元された。それでも中身と外見に差があるままだ。魔力量はほぼ満タンだから、この差は魔力とは関係ないのだろう。
『父上様、ラシュナイは拠点<サラーサ>とこの樹海を守るため眷属を生み出す許可をいただきたく存じます。』
「…?』
あれ? 樹海を守るって必要か? 死海部分だけでも良いよね? え? それとも樹海も拠点の一部? <サラーサ>から意識を広げていくと…。
何と言う事でしょう、樹海全域にパスが繋がっているではありませんか!って、いったい何のビフォーアフターだ…。
「仕方ないな。どうせならバレない様に思いっきり繋いじゃ…えぃ!」
樹海全域とのパスを強化したら、魔樹、魔獣だけじゃない動植物の詳細な情報まで入ってきたから、面倒になって<サラーサ>と地上の間にコントロールルームを新たに設置した。
俺のイメージの所為だけど、防犯カメラのモニターが沢山ある司令室みたいなのを想像してしまったからそうなっちゃう訳で、情報量が多過ぎたから仕方ない。
「じゃ、ラシュナイ。そこ使っていいから、バレない様によろしくね。」
『父上様…。ありがとうございます。…眷属は諦めます。』
ラシュナイは大きな溜息をこれ見よがしに吐いたが、これも半分位は、悪気はないのだろう。
「樹海とは言えあんまり変に生態系が崩れるのは困るからね。暫くはこれで様子見して。」
『は!』
取り敢えず、樹海はどこの国も所有していない場所だから文句は出ないだろうけど、どこにも内緒で所有して良い物でもないからなぁ。……
ん。後回しだな。
「なんか拠点を回って回収する毎に色々増え過ぎじゃないか?」
俺は小声でスィフィルに聞いてみる。
『当然の結果かと。父上の能力、魔力が向上し無意識下でベオグルリンドス帝国は網羅された様ですし、他国については遠慮があるのか、遥か上空の<ヤクシェム>の方から情報収集されていますよ。斯く言う私も父上の能力に便乗して情報収集しておりますから。』
と小声で怖い事を言ってのけた。マジか、マジなんですか、は、は、は…。はぁ〜…。
怖過ぎだろ、無意識下って…。
俺はふと、自分を外から見た時にサイズ違いの二重になっていることを思い出し、そして納得してしまった。




