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異世界転移?無双?チート? 好きに生きる為に必要みたいなので喜んで⁉︎  作者: ゆるゆる
始まりの始まり

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拠点<サラーサ>

拠点<サラーサ> 


ベオグルリンドス帝国の西にある領地<ジャンゴー>の西の端、隣国との間に広がる樹海の奥に領都と同じ位の広さの“死海“と呼ばれる場所がある。そこは動植物はおろか、魔獣ですら生きていけない地域(エリア)からその名がついた。 

そしてそこの中心に”地獄の入り口“と名のついた泉があるのだが、それは泉と言えるのか、コールタールが湧き出ているかの様にボコ、ボコと偶に音を立てて黒くてドロッとした水面が揺れる。

“死海“の樹々は朽ち果て、中心に近づく程その朽ち果てた筈の樹々すら跡形も無く、ただ灰色の大地が”地獄の入り口“まで続いている。

 

“死海“の外の樹海ですらその臭気に魔獣も近付かず、その為時々追われたものが逃げ込んでくる事がある。だが、臭気がる為長居はしない。匂いだけなら棲みつくものも出てくる筈だが、風向きによっては中心の方から瘴気が流れてくることもあるからだ。

そして、ジェフィティールが作った拠点<サラーサ>はこの”地獄の入り口“の地下の深部にある。

樹海自体、ベオグルリンドス帝国と隣国のあるもののどちらの領土では無い。幾度か両国ともこの樹海を自国の領土に組み込もうと先遣隊を送っていたが、樹海の深部まで辿り着くことはなかった。

「この樹海は生きている」「ここは魔の森だ」「人が立ち入る事は許されない」などと生きて帰ってきたものは口々に言った。 では何故樹海の深部“死海”の事や“地獄の入り口”の存在が知られているのか。それはひとえにジェフィティールのおかげである。

樹海の深部に行く為には空を行くのが簡単だが、空の魔獣を相手に勝利する力のある者は少ないし、空を行く魔法を使える者がいない。つまり樹海を踏破する為には森の中を徒歩で行くしかないのだ。その上、森の樹々は大半が魔樹で切り倒しても根が生きている限り再生する。魔樹、魔獣を討伐出来なければ開拓など出来るはずもないのだ。そしてそんな事ができるのは、この世界でジェフィティール唯1人なのである。

では何故わざわざ“死海”の“地獄の入り口”の地下深部に拠点を作ったのか。それはジェフィティールが誰も近づけない場所に拠点を置きたかったからに他ならない。そう、“死海”も“地獄の入り口”もジェフィティールが創り上げた防衛機構なのだから。


ジェフィティールとスィフィルは“地獄の入り口”に瞬間移動していた。


「じゃあ、手順通り魔力を流してから…行こうか。」

『はい、父上。』


俺たちは拠点<サラーサ>に転移した。 ここは元々地上と真逆の拠点をイメージして作った様だ。 コールタールの様な液体などどこにも無い、美しく澄んだ水の中に上に続く管を配した丸いドーム型の建物があった。 


「神殿が入る様な巨大な水風船の中に、一軒家程の(ポッペン)、俺は(ビードロ)と呼んでたけど…この透明なドームはそれを思い出させるな…。」


透明と言ってもその壁面は様々な色に時々揺らめいて、五月蝿くなく飽きの来ない変化を見せる。天井近くの管の下に反射しないミラーボールみたいな物が浮いていて、その真下、床の中央に大きなベッドがある。本当に飾り気も何もない…。見ようによってはここはまるで大きな霊安室、良く言って王墓だ。


そんな事を考えていたら、例の如く人型が現れて俺の中に戻ってきた。そして俺はまた”記憶と能力“を取り戻し、身体も14、15歳位になった。相変わらず器と中身に差が生じているが、スィフィルは嬉しそうだ。身長が同じ位になったからだろうか? いや、そんな事が嬉しいのは俺だけだろうな…。


「何がそんなに楽しいの?スィフィル」

『父上が私達との記憶を取り戻して下さって嬉しいのです。…要らぬ記憶も戻っている事は忌々しいですが…。』


スィフィルの顔は以前と違い表情が豊かだ。声にも感情がのっている。 俺も初めて記憶と能力が戻ってきた時よりも随分落ち着いていると思う。碌でもない記憶と共に嫌な感情が湧き出てくる事もあるけど、地球で得られた豊かな魂源とスィフィル達の存在が、俺を以前よりまともな人間にしてくれている。


「いいや、スィフィル。心配してくれて嬉しいけど俺は大丈夫だよ、お前達が居てくれるからさ。」

『…父上…。』


スィフィルは目をうるうるさせ、俺をハグしようと両手を広げて近づいて…。

とその時、俺とスィフィルの間に大きな水滴が上から落ちてきたと思ったらパンッと弾けて現れたのは、赤味をおびた金髪で編み込みが両サイドにあり腰丈まであるウェーブのかかった髪が風もないのに揺れている。服装は黄色味が強いアイボリーの体にまとわりついている様な布を紐で纏めていて、神話の銅像が動き出したかの様だ。一つ違うとしたら、肩くらいの高さの大きな狼っぽい獣が彼女の傍に控えている事か。


「君は…」

『私めは拠点<サラーサ>を預かる者。父上様にお目通り叶い、恐悦至極に存じます。』


相変わらず拠点の者は俺を父と呼ぶ上に堅っ苦しい。それにどこを見ても貴女の方が年上ですけどね。

だって色気がね、なんて言うか大人なんだよね…。俺も記憶が繋がってきて外見は14、15歳でも人生年齢的には100歳超な訳ですよ。娘を見る気持ちもあるけれど、照れはあるしあんまり(へりくだ)られても、日本人の記憶が大分影響してる今の俺は、俺が偉いわけじゃないんだよって言いたい。


挨拶しながら膝を突いたまま顔を上げず、横の狼…?も伏せたまま。

スィフィルは俺との間に割り込んだ事が気に入らないのか、俺の斜め後ろに移動して控えていてもまだ不機嫌だ。


「はぁ…。えぇっと、君にも名を与えるべきなんだろうけど、君の登場の仕方は礼を失する行為だったと、思う。」


俺はチラリとスィフィルの方を見て、機嫌が直りつつある事を確認して話を続けた。


「俺の事もスィフィルの事も軽視した行動について反省してもらいたい。だから暫く姿を見せず控えてくれ。」


スィフィルは特に表情も変わらずに佇んでいるのに、何だかとても満足している事がわかった。 対して拠点<サラーサ>の者達はチラリとスィフィルの指先に目をやり紫紺の虹を確認した途端、より深く頭を下げて謝罪した


『大変な無礼を働きました事、真に申し訳ございません。言い訳をお許し下さるならば…』

「いやいい。大体わかってるから。次は呼ぶまで下がっていて。」

『…畏まりました。』


この場に姿があるのは俺とスィフィルだけになった。拠点<サラーサ>内に居るから姿が見えないだけで、会話はダダ漏れになるけどそこは結界張ってクリアする。


「スィフィルは随分怒ってたね、そんなに大した事でもない気がするけど?」

『いいえ父上、あの登場の仕方はわざとですから許す事はできません。明らかに礼を失していますし本来すべき行動は、脇に控え邪魔にならぬ様に姿を現すことです。』


「そお?スィフィルが言うならそうなんだろうけど、あんまり厳しすぎない様にね?」

『……父上が、あまり変わっていらっしゃらないので、安心致しました。』


スィフィルが優しく言った。俺の記憶の事もあるのだろう。転生前の俺の記憶が今の俺にどれ程の影響を与えるか、実際のところわからない。時間と共に影響が強く出てしまうかもしれないし、日本人として生きた価値観とも相まって人格にどの様に影響するやら…。


「(俺の嫌いな俺にならなければ良い…。)」


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