閑話 スィフィルのひとりごと その1
私はスィフィル。
我が父 ジェフィティールの転生前最期の[記憶と能力]を管理保存するだけの存在だった。
父上が拠点<スィフィル>に転移して戻られた時 活動エネルギーが満たされ 保存すべき託された全てにエネルギーを返還する事ができた。 そしてその事がスィフィルという個性を生み出す 一つのきっかけになった。
私が目覚めるまで 意識はふわふわと漂っていた様な気がする。
父上が拠点内を窺いながら移動していた事に 呆けていた意識が纏まり始め 父上の後をついて回っていた。
父上が研究室の机に座ってこちらに向き直った時 目があった気がしたが 違った。
私が大切に護ってきた [記憶と能力] が 父上に戻る時が来たのだ。
「君は、何者なの?」 父上が問いかけた。
(私も……?)
私とはなんだ? 私は拠点<スィフィル> 父上が作った拠点 休憩場所 保管場所 安全を確保する場所だ。
いや 私は [記憶と能力] を管理保存 そして 父上を転移で呼び戻した 存在だ。
私は 拠点<スィフィル>とは別に役目を持っている。 拠点としての役目も。
この拠点は とある森の中にある。 入口があっただけだが 幻の拠点として まだある。
実際の拠点は 遥か天上に近い場所 大空の魔物も届かない場所に ある。
私は 誰にも知られぬ様に ここを護る。 父上に頂いた能力で 完璧に。
父が地上へ降った。 大切な [記憶と能力] を取り戻す為に。
私は 父の役に立つ為に 私の中にある父の [記憶と能力] の欠片を
完全に 自分に取り込んだ。
[記憶と能力] なんという事だ…。 これが感情というものか…。
不安・恐怖・空虚
ヒト属のなんと醜い行い なんと馬鹿馬鹿しい虚言 救いようの無い妄信…。
あぁ ヒト属など いなくなれば良い 愚か者など 必要無い
何故 守ってもらえると思うのか? 守るのが当然と言うのか?
何故 ヒト属が 世界の支配者だと 勘違いできるのか?
嘗て 神罰といわれるほどの 天変地異が起きたと言うのに
自分では無い アイツの愚かな 行動のせい
と 現実を見ない者ばかり
あぁ本当に ヒト属など 消えてなくなれば良い 確かに善良なものなど 在はしない
理解できないチカラを前に 筋の通らない理屈で徒党を組み 排除するまで執拗に追い詰める
ヒト属は 害獣以外の何者でもない
善良な者を残したところで 暫くすれば 害悪に変質するのだ
小さな希望だとわかっている でも もしかしたら そんな期待も持てなくなった
父上の絶望が 転生を 決意させた。 何という事だ 父上に置いていかれた
絶対的なチカラを失った記憶が…
そう 私が私になりつつある時に 父上は戻ってきた。
その甚大な魔力の 奔流が一気に拠点<スィフィル>に 流れ込み 私は私になった
ここは 裏切らない 父上の望むまま 全てを父上の為に その願いとともに
父上が 拠点<スィフィル>に 魔力を込め創り変えていく 私にも 大量に流れ込んでくる
なんと心地良い魔力なのだろう なんて暖かい 溢れて止まらない これはなんだろう
父上 父上 父上様 父上様と ともに ともに
そして私は 父上様の前に顕現化したのだ。 まさかの姿ではあったが 父上様と会話ができた。
私をスィフィルと 認識して 私は私としてスィフィルになった。




