アルバアの記憶
アマルと名付けた事で進化成長したみたいなのに、あんまり変わらないな。
スィフィルと同じ様な感じだ。まぁ、良いけど。でもスィフィルより自由が効きそうだな。
詳細とか深くまで把握しようとすれば出来るけど、そこまでの必要性はない。
個々の個性や能力の差別化をしたいから、ワザと情報のシャットダウンをしている状態だ。
1人で何でも出来るからと言ってやってしまうと、誰も、何も必要がなくなってしまう。
「(周りの全てを掌握したい訳じゃない…。)」
ホントウニソウカ?
ふっ、と自分の中の何かが問いかけてくる。
「(そうだよ…)」
アレホドノアクイトボウリャクノウズニタイシテ ドレホドノオンネンヲイダキ エンサノマトトナリ ソノタイオウニセマラレタ?
前世で受けた妬みや嫉みによる罠、悪意ある流言、笑顔で裏切る人間の記憶が一気に溢れてくる。コールタールに飲み込まれる様に息苦しく、周囲が黒く重くなる。
「(そうだな…)」
スベテテノウチニショウアクデキテイレバ タイセツナモノガウシナワレルコトハナイ。
スベテノコマノコウドウヤカンガエガリカイデキテイレバ オモウトオリニウゴカセル。
「(そうしたら、きっともう辛くなる事はないな…)」
前世の記憶、絶望、報復、悪意が唆す。
ソレゾレカンガエガコトナレバ カナラズアツレキガウマレ カナラズサベツガウマレ
オオキナイサカイトナル
ソレヲイトウナラバ スベテヲオナジカチカンニトウイツセネバナラナイ
「(…そうだよな…)」
全てに疲れて俺は転生を選んだんだ。俺が擦り切れて魂源ごと消滅してしまう前に、生きたいと、思ったんじゃないか?
ソウデハナイ ニゲタダケダ ネラワレツヅケルコトニ ツカレタカラダ
モウドウデモヨカッタダロウ? ココカライナクナリタカッタハズダ
ダレモカレモイナクナレバイイトオモッタハズダ
ソウスレバイイ
だけどそんな事をして、ほんとに俺は嬉しいのだろうか?
全てを自分の思う通りにして、他者の感情もコントロールしてしまって何が楽しいのか。
そんな物、脚本、監督、キャスティング全て自分で割り当てて、結末まで内容を知っている舞台に立っているだけじゃないか。違う?
ダレニモウラギラレルコトハナクナル
そうだけど、それは俺以外人形しかいないって事だ。
そんなの直ぐ飽きる。面白くないじゃないか。
ウラギラレテモイイノカ?
そんなの嫌に決まってる! でも…優しさをくれる人もいる…。
俺の指示ではない、善意の感情が自分に向けられる事の幸福感。
ジェフェティールは、ハイバッハのキャラバンと共に旅した数日間を思い出していた。
孤児の自分を受け入れて、心配して、信頼してくれた。
単純に嬉しかった。その気持ちも彼らが人形ではなく、彼ら自身の好意の表れだからだ。
多分、こんな風に考えられるのも日本人に転生して、色々な人と関わり合い家族という無条件に愛情をくれる環境が揃っていたから、魂源にとても影響を受けて転生前と大きく変わったのだろう。
日本に転生せず、同じ世界の遥か未来に転生したとして同じ境地に至れただろうかと思う。魂源の修復は出来ていても怨み辛みは溜め込んでいただろうから、今と違う魂源を持って生まれ変わっている筈で、どれ程醜い魂源になっていてだろうか。
「(…真面目に、邪神、魔王、悪魔等々になっていたかもな…)」
地球は平和だった。戦争もあるが全世界で侵略戦争をしている訳ではないし、魔獣もいない。各国がある程度建前に則り表立った行動を取らずにいる。内政も完璧ではないし、外交も上手くいっているとは言い切れないが、バランスは保てている。
住人も明らかな悪意を向ける人はほぼ居なかった。全ては平和だからこそだ。どこの国も何かしらの吹き溜まりを抱えている。
全世界的に考えても、このベオグルリンドス帝国よりは貧富の差や差別や迫害も少ない。
そんな事をつらつらと考えている内に、アノ声は聞こえなくなっていた。
『父上様?どうしたですデスカ?』
「おっと、何でもないよちょっと考え事。んじゃ、また来るからよろしくね。」
俺は素材を手に入れ、軽く手を振って<アルバア>を後にした。




