避けられない異世界転移
何となく気軽に書いてみました。途中どうなるかわかりませんが、もしかしてR15になる事もあるかも知れないので保険で設定しました。ならないで終わるかも。
さて、今日も私の周囲では 人が転移してはその瞬間に戻ってきている。
「異世界転移、流行ってるから仕方ないか」
こんな事を言うと「何を言っているんだ?」「そんな訳ないだろう」と 誰もが言うだろう。
だが、私にはその事象が見えているし本人も周囲も気付いていないだけ、若しくは「あれ?」と思いつつも気のせいだと思い、何事もなかった様にそのまま過ごしていくから気付かないだけなのだ。
小さい頃は私の目の錯覚だと言い聞かせていたが、この数十年のうち年に数回だったものが50年ほど前には月に数回、30年ほど前からは月に十数回と増え、ここ最近は頻繁に起こり過ぎて「いずれ我が身」と恐ろしい。何せ回数だけでなく、距離が近づいてきているのだ。
「まさか私を探してる? いや、狙っている?」
自意識過剰だと私だって思いたい。だが転移がおこる回数が余りにも多く、かつ十数メートル位の近しい距離のお陰で、感覚的に気付ける様になり 転移が起こりそうな気配を感じると、その場から逃れる行動をして位置をずらすと、偶々其処に来る人は転移させられる。
ーーーが、違うと解るとなのか、その人は直ぐに戻ってくる。多分本人も周りも気付かぬ内に…
「気配を感じてから大体5秒、転移陣自体はサイズが本当に一人分のコンパクト設計で広範囲に影響はない。
発動時間もコンマ何秒なのか…1秒以内に消えてまた戻って来てる時点で凄いな」
いや もしかしたら私だって、周りの人達が気付かぬ内に転移しては戻ってきて、その後を普通と変わらず過ごしているのかもしれないが、この事象を認識し避ける事ができる時点で 違うであろうし碌なことになるわけがない。
そう、私は小さい頃からそういう勘が良く当たる。
天才でも秀才でもなく、スポーツ万能と言う訳でもない。いつだって中の上という普通よりは出来るくらいの才能しかないが、一番人の記憶に残り辛い立ち位置にいる。まぁそこが一番気に入ってるのは私自身だが。
子供の頃少しばかり目立つ事をしてしまい、面倒になってからは二度とそんなミスは起こさないと心に決めたものだ。親が遺してくれた家の敷地内と部屋には、目立たない様に独学で私が書いたお札を貼り、これまた独学で書いた陣も床に描いている。
側から見れば「イタイやつ」「アブないやつ」だと思う。ーーーが、安心安全の為だ。事実この部屋の中にいる間に例の転移の光は発生していない。
そんな私も定年退職し、嘱託期間も満了、『優雅』とは言えないが年金生活で生きてはいける程度に貯蓄もある。
だから 気を抜いていたと言えばそうなのだが…
「はぁ 気持ち良い…」
ソファに横になって目を瞑る。心地よい風が窓から身体を撫でて流れてゆく。
ついでに その爽やかな風がまさか自己流のお札を剥がしてゆくとは思ってもいなかった。
ふっと目を開けた瞬間に風に舞うお札を目にした時には…
「あ」
次の瞬間には眩しいフラッシュの様な光に目を眩ませて 気付けば知らない場所にいる。
そう転移していた…。