5.転機
最近ガチャ運悪い〜_:(´ཀ`」 ∠):
風に吹かれたカーテンがパタパタと音を立てる。窓からは太陽の光が差し込み、部屋の中を照らしてくれている。こんな日はきっと気持ちのいい朝を迎えれるんだろう。
『起きなさい、シン』
赤い髪の少女が僕の体を揺する
『起きなさい』
「もうちょっとだけ〜」
まだ眠たいので少女に懇願する。
『そう。じゃあ悪戯しちゃお』
すると、少女はニコりと笑い
『暗黒騎士呼ぶわね?』
美しい髪を揺らしながらそう言った。
ガバッッ!
布団を蹴飛ばすように一瞬で起きる。
「ゆ、夢かぁ………」
朝から変な汗をかいてしまった。
そのせいで服が体にへばりついて少し気持ち悪い。
「お風呂に入りたいなー」と思っていると。コンコンとドアをノックする音が聞こえ、すぐに
「シン様、失礼します…クロエです」
少し目線を下げたクロエが入ってくる。
3年前のあの時からずっとこんな感じで、最初は違和感があったんだけど……なんかもう慣れてきちゃったんだよなー。
「おはよう、クロエ」
「…はい、おはようございます。シン様、朝食の支度
ができておりますが」
「先にお風呂に入ってもいいかな?」
服をパタパタと靡かせて中に風を入れながら言う。
「…かしこまりました。すぐに用意させます」
「ごめんね。ありがとう」
そして、お風呂の準備が出来るのを待っている間に、気になっていたことを聞いてみる。
「クロエ、僕をここまで運んでくれた人の名前って何なの?」
実はずっと気になっていたんだ、彼女の名前。
どんな名前なんだろう。
と少しワクワクしていると。
「?、なんのことですか??」
クロエは何を言っているのか分からない。と言う様子で首を傾げる。僕も、一瞬何を言われているのか理解できなかった。おそらく聞き間違いだろうと思い、揶揄われるのも覚悟でもう一度聞いてみる。
「ほら、あのすごく綺麗な赤髪の少女のこと。
彼女が僕をここまで運んでくれたんでしょ?」
「赤髪の少女?そんな人来てませんけど…」
え……?
今度こそ完全に僕は固まった。
「……ねぇクロエ、僕は昨日何してた?」
クロエが知らないだけであって欲しい。
そう願いながら聞いたが、僕の希望は粉々に打ち砕かれた。
「昨日はお部屋で本を読んでいらしたのでは?」
違う!と叫びそうになったけどなんとか我慢する。
やっぱり、無いことになってるんだ昨日のこと全てが。……何が起きてるんだ。
「それでは、失礼します」
クロエが部屋から出ていく。僕はそれに応えることなく、ベッドの上に座って昨日のことを考える。
「現実…だったんだよな……?」
僕が暗黒騎士に襲われたことも。それを彼女に助けられたことも。一瞬、夢だったのではないかと疑ったが、おそらくこけた時に着いたのだろう擦り傷や切り傷に、あれが現実だったことを確信させられる。
「ほんとに、何が起きてるんだ……。
そして、彼女は誰なんだ?」
胸の中にモヤモヤが溜まっていく。
気づけばシンは、何かに突き動かされるように部屋から飛び出していた。誰にも見つからないよう心は慎重に、でも体は最高速度で駆け抜ける。
そしてその行動の理由は、自分の心に気持ちとなって表れた。
知りたい知りたい知りたい知りたい!
僕を助けてくれた、あの美しい彼女のことを。
どこで生まれて、何という名前なのか。
どんな食べ物が好きで、何をするのが好きなのか。
笑うとどんな顔で、どれほど美しいのか。
挙げるとキリがないほど、知りたいことがある。
そして何より……もう一度彼女に会いたい。
街を抜け、荒野に出る。足が取れそうになったが、それでもまだ走り続ける。そして走り始めて3時間以上が過ぎた頃…
「着いた…」
疲れ果てた足は、しかしそれでも木の根で
ゴツゴツした地面を踏みしめている。
目の前には少し開けた空間が広がり、
何かが吹き飛ばされたような跡がある。
「…ん?」
地面に何か光るものを見つける。
なんだろうこれ。…魔核?
この世界には魔物というものがおりその種類は様々だ。しかし絶対に共通しているのは、すべてのモンスターが核を持っていること。核に魔力が込められて形作られたもの、それが魔物なのだ。
なので魔物の強さは、核に込められた魔力の量で決まる。また、魔物は"スポット"と言う場所で生まれる。そして、魔物が死ぬと魔核を残して消え、魔核も時間が経つか魔力を失うと、スポットに還元される。還元されると、また魔物が生まれる。
そのように無限の循環を繰り返しているのだ。
これは…もしかして暗黒騎士の魔石⁉︎
暗黒騎士は伝説の魔物だ。もしそんな魔物の魔核を
持っていると知られたら……ま、まぁバレなきゃいいよねバレなきゃ。
そう誰かに言い訳しながら大切にポケットにしまう。
人間好奇心には勝てないのである。
興奮している心を少し落ち着かせて周りを見渡す。
「やっぱり、会えなかったか…」
予想はしていたといえ、やはり落胆は隠せない。
「どうすれば会えるんだろう……」
少し気落ちしながらも何か他に手がかりはないかと探していると、カサカサと草をかき分ける音が聞こえ、反射的に木に隠れる。
心臓がバクバクと大きな音を立てて胸を圧迫する。
暗黒騎士の姿がフラッシュバックし、恐怖心が蘇りだす。
何十分にも感じられたその時間はしかし、良い方に裏切られ終わりを告げる。
草の中から出てきたのは2人組の男性だった。
2人の男性は会話しながらこちら側に歩いて来る。
「なぁ、本当にこんな所に"炎貴"がいたのか?」
両手剣を持った男が信じられないと言った顔で
顔に龍の刺青がある短剣使いの男に尋ねる。
「ほんとだって。俺見たんだよ、炎貴が青髪の子供
を大事そうに抱えているのを」
え……?それって‼︎
「炎貴って子供いんの…うおっっ」
居ても立っても居られなくなって、僕は男性に突進する勢いで近寄った。
「その炎貴っていう人のこと詳しく教えて下さい!」
「ど、どっから出てきやがった⁉︎」
「待てよ…君はあの時炎貴に抱えられていた子じゃないか!!」
「そんなこといいから!その人のこと教えてください‼︎」
短剣使いの男性の体をゆっさゆっさと前後に揺らす。
「わ、分かった!教えるから落ち着いて!!」
「あ…すみません……」
彼女の手掛かりを見つけたことで少し()興奮してしまった。深呼吸して心を落ち着かせる。
「ふぅ……炎貴さんのこと教えてください」
きちんと落ち着いてからもう一度お願いする。
男性も僕が落ち着いたのが分かったのか、少し刺青を気にしながら、了解だ、と言って話し始めた。
「彼女の本名はアリアという名だ」
アリアさんって言うんだ……かわいい名前だなぁ。
「少し高圧的な性格と高貴な雰囲気、そして炎属性を
扱い、どんな魔物でも一刀の元に両断するその強さ
から、炎貴と呼ばれている」
炎…レア属性かぁ〜。かっこいいなぁ〜
ここまでは、余裕を保てていたシンは、しかし次の
言葉を聞いてまたもや落ち着きを無くす。
「そしてなんたって1番すごいのは、この世界に5人し
かいない称号持ちの冒険者だってことだよな」
「……それ本当ですか⁉︎」
「おうよ!それにある筋からの情報によると、
何千年も前からずっと姿が変わらず生きている
魔女だって話も……あれ?聞いてない?」
話していて気分が乗ってきたのか、全く信憑性の無いことまで話し始める男性を、両手剣使いの男性がやれやれと若干諦めを醸し出しながら止める。
仲が良さそうでなによりだ。
しかし、シンはそれどころではなかった。
今のシンの思考を簡単に説明すると…
アリアさん
↓
冒険者
↓
冒険者になったら会えるかもしれない
↓
冒険者になる!
↓
アリアさんとイチャイチャできる‼︎
これである。クロエに知られたら切腹ものだろう
この思考も、割とマジで考えてるあたり手がつけられない。
よしっ!そうと決まればまずは特訓だ‼︎
この日からシンの魔法と剣の訓練が始まった。
顔に刺青ってすごいですね…。
龍の刺青がかっこいい!!と思った方は、
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最後まで読んでいただきありがとうございました!




