その頃の人界
今回はフェリスを転移させてすぐのギルドのお話になります!
グランはフェリスを魔界へと転送すると、すぐにギルド内のクランリーダーとS級冒険者を召集した。
「えー、今日全員を集めたのはこの前の追放動議の件だ」
そのグランの言葉に醜悪な笑みをこぼしたのはブルーローズのクランリーダーであるザバスだった。
「彼がどうかしたんですかぁ?」
「追放動議が可決されたフェリス・ルシフェルだが、先ほどこのギルドを去ったよ」
「そうですかそうですかぁ!…ようやくあの無能で目障りな奴を消せて良かったですねぇ!これからは我らブルーローズが」
とザバスが声を出そうとした時だった。
「大変です!南方、魔界との境界付近にてS級である剣聖、エルザ様が重傷を負われました」
ギルドスタッフから告げられた報せにザバスを始めとするB級以下の中堅から低級のリーダー達は驚きを露わにしていたが、A級以上の上位リーダーやS級冒険者はそれが当たり前かのような態度だった。その事にザバスは不審感を覚えた。
「なぜマスター達は驚かないのですかぁ?S級が1人やられたんですよぉ!!」
だがその言葉に返してきたマスターであるグランの顔は怒りに満ちていた。それは、敵である魔物ではなくザバスに対してであったが…
「ザバス、これはな?当然の結果なんだよ!わかるか?」
「は?」
「今まで一人の死者も出さずにやってこれた理由がザバス、お前にわかるかって聞いてんだよ!」
「……まさか魔王が動き始めたのですかぁ!?」
「違うんだよ馬鹿野郎!これはな、俺達人界がフェリスという存在を失ったからだよ!」
その言葉にザバス達はポカンとすることしかできなかった。
「…な、なぜここであの無能の名前が出てくるのですか?」
最早普通の話し方になってしまったザバスの疑問に答えたのは、グランの隣で静かに話を聞いていたギルド最高戦力の一人、聖女『ジャンヌ』だった。
「ザバス、あなたやその後ろにいるリーダー達は弱すぎて彼に気づくことすら出来ていなかったでしょうが、ここまで魔界の魔物達を退けてこられたのはほぼ全てフェリスが倒してきたからに他ならないのです」
「それはどういう…」
「それを答えるにはまず、彼の生い立ちから話す必要があると思います。グランさん、お願いしても?」
「ああ、いいぜ。フェリス、本名フェリス・ルシフェルは魔界で生まれた半人半魔。そして何よりも驚くべきはその親にある。フェリスは勇者と魔王の息子なんだよ」
その言葉に、ザバス達はおろか、他のS級冒険者達も驚きを見せていた。
「それで、フェリスと現魔王、リリス・ルシフェルの盟約により、フェリスが人界にとどまることによって人界と魔界のバランスを保っていたんだ」
「そもそも、フェリスさんがいなければ私達は皆S級になれていないかもしれませんし…」
「それはどういう…」
「現状サシで魔王の配下である四星に挑める奴はいねぇってことだ。だから抑止力としてフェリスがいたっていうのによ」
「な、ならまたあいつを呼び戻せば…」
「それは無理な話だな!てめぇらみてぇな馬鹿共が追放させたせいであいつは魔界に戻ったんだ!見てみろ。あいつが欠けただけでもう俺たちは四星に勝てねぇんだぞ?お前達は自分のやった事の重大さを考えるんだな!」
「でも、それならば最初に言ってくだされば…」
「ぁあ!!?てめぇら言って信じたのかよ!!おい!?群れるだけで大した活躍もしねぇようなてめぇらがよ!!」
その言葉にさすがのザバスも言い返そうとしていたが、それを止めたのはグラン自身だった。
「……いや、ちょっと熱くなりすぎたな。とりあえずだが、今回の責任をとって俺はギルドマスターを退任し、ギルドからも脱退する。だから後はお前らでなんとかするんだな」
グランはそう言い残し、一人消えた。こうして、ギルド会議は最悪の展開で終わりを迎えたのだった。
次回からは魔界編になります。よろしくお願いいたします!




