いざ魔王城へ
「よいしょっと……ここは城下かな?」
僕はグランさんの魔法で魔界へと降り立ち、懐かしい気持ちに少し浸りながら魔王城へと向かって進もうとしていた。すると…
「なぜここに人間がいる?貴様、ここがどこかわかっているのか?」
そう言いながら話しかけてきた相手の方を見て僕は思わず普通に話してしまった。
「だいぶ見ない間にすごく成長したね、現魔王下四星で夢魔のアリス」
「私のことを知っているとは、貴様何奴だ!私がここで貴様を引き捕らえる!」
僕はすぐにアリスの事をわかることができたけど、今の僕が自分にかけている隠蔽魔法のせいでアリスは昔馴染みのはずの僕を正しく認識できていなかった。でも、僕は魔王に会うまではとりあえず隠すと決めていたので、成り行きとはいえ戦闘が始まってしまった。
私はひどく驚いていた。多くの夢魔の中でも魔王様に次ぐ地位である四星の座に就く私の幻惑魔法は並の人間はおろか人界で言うところのA級冒険者くらいの抵抗は楽に打ち破る強さを誇っているにも関わらず目の前の男には一切かからないのである。こんな事は人生で2度目なのでまだ取り乱すまではいかなかったが十分驚くには値した。
「貴様、なかなかやるようだな」
「まあね?このくらいできないとわざわざここまで就職しに来ないし」
私はふと聞いた一言に1つ昔の友達を思い出していた。
「そういえば私にも昔この魔界を変えると誓いあった仲のいい人間が1人いたな。もはや生きているのかどうかもよくわからんが…もう一度会って話でもしてみたいものだ」
そう呟くと、なぜか目の前の人間はニコニコとし始めた。
「それならさ、アリスに頼みがあるんだけど」
「私は人間の頼みなど聞かん!」
「大丈夫、僕はここで待ってるからさ。このお願いさえ聞いてくれたら後は煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わないから…ね?」
「………わかった。一度だけだぞ?早く言ってみろ」
「魔王様に伝言を頼みたいんだ。『お待たせ、僕も魔界を変えに来た』ってね?」
それがどういうことなのか私には理解しきれなかったが、一度は聞くと言ったので私はその伝言を伝えに魔王城へと戻ることにした。
僕はアリスに魔王様への伝言をお願いして戻っていくのを確認してからその場に座って待ち始めた。でも残念なことに僕、それ以前に人間のことをあまりよく思ってない魔物達は多く、またしても絡まれてしまった。
「おい、人間ごときがこんなとこに来てんじゃねーよ!」
「そう言われてもね…僕はここに用があるから」
「ぁあ!?テメェこっちが誰だかわかってそんな口聞いてんのか?」
「いや、わからない。でも誰に何を言われても僕は魔王に会わないといけないから」
「そうかよ!でもテメェが会うことはねーよ!ここで俺様の手で死ぬんだからな!」
そう獣人の男が言いながら斧を振り下ろしてきたので、魔王に僕の存在をよりわかりやすくするために、隠しているものを一部開放した。
「もう少し隠しておきたかったけど…リミッター一部解除。魔力開放」
すると獣人は振り下ろしていた斧を止めた。
「……オイオイ、冗談じゃねーよ。なんだよその魔力」
「これが僕の本当の魔力量だよ」
「こんなのに勝てるなんて思うほど俺は馬鹿じゃねー……クソっ、折角人界でS級を1人狩ったってのによ」
「……今なんて?」
「だから、S級を1人狩ったってんだよ!」
「そう。まあ今の僕には人界を思う気持ちはあまりないけど、S級とは仲良くしてたんだ」
「それがなんだってんだ?」
「いや、情が少し残ってたみたいだよ。とりあえず君は僕が躾けてあげる」
「テメェなんかにやられるかよ!」
そう言って逃げようとする獣人に僕は容赦なく魔法を使い始めた。
「まずはその足を止めようか。『グラビテイション』」
僕が発動したのは重力魔法。対象にかかる重力を自在に操ることができる。とはいえ変えられるGは魔力量に依存するけれど、僕の魔力量だとこの星を潰すくらいはできる。そんな魔法を受けて獣人は身動き一つ取れなくなっていた。
「さあ、とりあえず君の体の自由を奪ったわけだけど。まあしつけるといってもちょっと怖がらせるだけだけどね?」
そして僕が新しい魔法を発動しようとしたタイミングだった。
「そこまでにしておくのじゃ!」
「そ、その声は!?」
「……思ってたより早かったね、ルシフェル?」
「まさか戻ってくるとは思ってなかったぞ?……フェリス」
「「フェ、フェリス!!?」」
こうして僕は予定より早く魔王である幼馴染み、ルシフェルとの再開を果たすのでした。
魔王の幼馴染みだったフェリス、これから先どうなるのだろうか?
次回は人界のギルドの話になります。よろしくお願いします!




