3ノ巻:ニンジャを目指して
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アサシン
それは世界の影に生きた伝説の暗殺集団から始まったとされている。とある宗教団体の一派から始まった暗殺教団、影の中から現れ死すら気づかせぬまま目標を永遠の眠りへといざなう。その暗殺教団の名前からとられた名こそ
『暗殺者』
それが自分の生きてきた元の世界でのアサシンの知識だった。
「アサシン・・・ですか」
ユーリアス法皇の目に映った自分の天職。勇ましき者、勇者として召喚されたからには誰しもが騎士やクルセイダー、格闘家などの正義の象徴を思いつくはずだった。しかし、自分がなったのは暗殺者としてイメージの強いアサシン。つまり裏から相手を瞬殺する、卑怯な者。勇者とは程遠い職業である。
「アサシン、隠密、潜入工作、暗殺を生業とする希少なジョブでございます」
「こちらの世界でもそうなのですか」
「はい、起源はシーフと呼ばれるジョブでございましてそちらも素早さに特化した職業でございます。シーフは通常ダンジョン攻略やモンスター観察に特化した盗賊というジョブにクラスアップするものですが2000年前、魔王との戦争時に一人のシーフとして召喚されたが勇者が敵の抹殺に特化した修行をし続けました。
そこから誕生したのがアサシン。アサシンとは敵も味方も欺き確実に敵を殺す。そのため味方ですらその存在を知るものはいない。だからこそ」
「アサシンの情報が少ない・・・ということですね」
「はい」
「それなのに・・・なぜここにアサシンの装備が・・・それもただのアサシンじゃない」
「そう、彼らはアサシンの中のアサシン」
法皇は静かに語りだした。アサシンとこの装備について。
2000年前、最初のアサシンとなった勇者アサスは魔王封印後当時の大聖国家から栄誉として英雄の称号シンを授与した。シンの称号を手に入れたアサスのジョブ。これが語源となり暗殺者のジョブ名はアサシンになったといわれている。アサスは戦争のあと国家直属の兵士として世界のために動き続けた。その中でアサシンになる素質を持った戦士たちを鍛え続け国家を守る影の軍団、アサシン部隊を作った。
総勢500名を超えたアサシンたちはそれぞれが他の大陸に渡り大義のために動くことを誓い合う。
しかし、人の心とは残酷なもの。隠密に優れたアサシンたちを戦に使おうと考えない者はいなかった。
正義のために影から戦い続けたアサシンたちは何時しか戦争の道具として使われ始めたのだ。何時しか平和と大義のために各地へ飛んだアサシンたちは戦場で再会しお互いを殺しあった。
そんな状況に絶望したアサシンたちは何時しか再び集いあい今の大陸を捨て南の果て、誰も知らぬ無人の土地へと旅立った。
「それ以来、4つの大陸からアサシンへなれる者はいなくなり今では幻のジョブとなってしまった。しかし、20年前、当時この国の代表神官だった私のもとに一人の旅人が現れたのです。その時彼が身に着けていたのがこの装備や武器でした。」
旅人は法皇にあることを話した。おとぎ話として語られていた魔王の戦いが事実であること。20年後の年、最も紅の月が現れる年、再び魔王軍がこの地に現れることを。その話は嘘偽りない真実でした。
彼はなぜそのことをしっているのか旅人に尋ねました。
旅人はこう答えた
自分たちは2000年前南の地に旅立ったアサシンたちの末裔でありアサシンたちは独自の文化を築いていること。彼らは2000年もの間幾代にも世代を重ね魔界の門の復活について調べていたことを、そして封印についての詳細を記した石碑が世界のどこかにまだ残されていることを話したそうだ。
その後、旅人は長旅の疲れや疲労によって衰弱していき数か月後帰らぬ人となったそうだ。
「そしてその旅人は言いました。南の果てのアサシンの国。そこで発展したアサシンの中のアサシン
それこそ
『人と世の狭間に生き、影に染まりて悪を斬る』
それを心に刻み生きてきた者たちの身が名乗ることができる伝説の称号
ニンジャだと」
「ニンジャ・・・」
「これも何かの運命、あなたがこの世界にアサシンとして召喚されたのは彼の遺志を継ぐために
ニンジャを継承するためにこの地に降り立ったのではないかとしか私には思えないのです」
「俺が・・・ニンジャを」
「お願いいたします勇者様、何卒!!ニンジャとしてこの世界を守っていただけないでしょうか?」
少し前から二転三転する自分の運命、偶然か出来すぎてるのか、笑ってしまうような状況。普通だったら混乱して考えたくなってしまうかもしれない。でも、この装備を身に着けたその時からなんとなくしっくり来てしまう。なんとなくそうなる運命だったんじゃないかと思ってしまう。
「まぁ、成り行きですがここまでよくしてもらって断るというのは失礼ですよね」
「それでは・・・」
「戦いましょう、世界のために」
その言葉に目の前の老人は涙を流しながら感謝をし何度もありがとうという。ことらとしても当面はやることは決まったわけだから良かったとは思う。しかし、問題はいくつか残っている。法皇はなぜこの旅人から封印の詳細が残っていることを聞いたはずなのに他の神官にその情報が渡っていないのか。もし話したうえでそのことを信用せず伝えていないとかであればもはや論外の領域だ。そして仮にこの情報、この法皇自身が伏せているのであれば可能性は二つ。この老人がまだ何かを隠しているのか情報を知られることを恐れているかのどちらかだ。
いずれにしてもこれ以上聞き出すにはまだ信用が足りない。
少し功績を立てていくほかない。
「それで法皇様、次の紅い月の夜はいつですか?」
「1か月後でございます。今回はいくらか余裕があるようでして」
「約5週間」
5週間のうちに自分がやるべきことはまず装備やアイテムを集める事、いや
その前にレベル上げというべきだろうか?ある程度戦闘技量を挙げていく必要がある。そのためにはおそらくここにある資料を集めニンジャについて知識をつけるのが手っ取り早いかもしれない。
まずはこの荷物を持って手ごろな修行場の開拓に行くとしよう。
「では私も戦いに備え少し修行に行きたいと思います。どこか良い場所はありませんか?」
「で、あるならばここから来た門を抜けた北の山間の村に向かうとよいでしょう。あそこは弱いモンスターから強いモンスターまで様々な種類のモンスターがおります。
山の奥の坑道にいけば強力なモンスターもおりますので更に良いかと」
「わかりました、それではこちらの装備や書物一式預からせていただきます」
「わかりました。どうかあなた様の戦いにお役立てください。
村の方にはあなた様が修行に向かうことを伝えておきましょう」
「感謝します。それではまた1か月後お会いいたしましょう」
そういって陵は懐に装備していた小さな玉を手に取り足元に投げつける。するとあたり一面に煙が広がる。煙が晴れるころには部屋中に合った道具はすべてなくなっていた。
「勇者様、どうかお気をつけて」
老人は開かれた扉を見つめて彼の幸運を祈るのであった。
それから五日後
法皇に紹介された山間の村に来てから早3日が経つ。あれから三日三晩資料や書物を読み漁った。アサシン、並びにおそらく自身が持つニンジャの特性、技能、戦闘スタイル。大量の資料を読みふけるうちになんとなくスキルについてわかってきた。
まず自身が常に発動している状態である常備スキルは隠密、奇襲、強奪、ヤモリの極意
隠密は敵味方問わず隠れればほとんどの確率で見つかることがないスキル。
奇襲は戦闘において敵がこちらに気が付いていなければ必ず先制攻撃ができる。
強奪は戦闘で敵からドロップできる素材やアイテムが増えるというもの。
ヤモリの極意は天井や壁に貼り付けるというもの。
これが現状判明している常備スキル。
更にアサシンのジョブ特性として奇襲攻撃や敵トンの戦力差が激しい場合に即死率が上昇するというものがあるようだ。
確かにシーフよりも敵の確実な殺人が強いことは分かる。
そして装備できる武器と防具。防具はこのニンジャ装束セット以外は装備できず追加で補助アクセサリー等は装備できるようだ。ステータス的には攻撃と防御が低く素早さが極端に高いため素早さを挙げるアクセサリーである高速の羽を装備している。そして武器は初期装備であるこの忍者刀、虎徹と夜桜以外に短剣やダガーも装備できるようだがニンジャ装束のほとんどが忍者刀装備時に素早さがさらに上がるようなので現状他の武器を装備する必要はないかもしれない。
そして戦闘時のスキル
まずは投擲
アイテムを使用するのではなく投げて攻撃する技能。投擲専用のアイテムや投擲によって効果が変わるアイテムも存在するようなので長い目での研究が必要そうだ。
次に忍術と忍法
忍術は魔法のようなものであるにもかかわらず魔力(俗にいうMP)を消費せずに使用できる。威力は低いが燃費は良い。忍法は戦闘においては他のジョブの戦闘技を超える強さを発揮することが多い。その代わり燃費が悪いようだ。そして忍術と忍法の大きな特徴は使用コストが生命力(俗にいうHP)という事。確かに忍術の多くはチートといわれても仕方がないものばかりだ。だが乱用すればこちらの命が危うくなる。俗にいう無双には向いていないのがこのアサシンというジョブのようだ。
忍術は現在
火炎攻撃の火遁、水を召喚する水遁、武器や体に電撃を帯びさせる雷迅の3つ。
忍法は
実体のある分身を1体程度発現させる分身の術、耐久力の低い分身を5体ほど多数同時召喚する影分身の術、敵の攻撃を交わす囮を出す空蝉の術、影を使い敵1体の動きを封じる影縫いと実際知ってる忍者が多く使っているものが多い。またこれらの忍術は使用者の強さに比例して持続時間や対象数、発言数が増えるようなので鍛錬の継続は必須事項だ。
さて、ここまで調べれば大体ニンジャもといアサシンが相当燃費が悪いジョブであるということがわかる。現状では戦闘に投入できるような代物ではないこと。
だが、少し気になる点がある。どうやら一定の熟練度(俗にいうレベル)に到達するとスキルを獲得していくようでありそこに近づくとうっすらと次のスキルがわかるようになってくる。
どうやら次に覚えるスキルは忍術コストを軽くできるスキルのようだ。
ならば行動あるのみ。迷っていても仕方がない以上今は戦う準備のために行動するが吉である。
その日は早くに休み翌日日の出前から山に登りモンスター狩りに勤しんだ。
村人が山菜狩りや野ウサギ狩りをするために通る山道近くは初心者冒険者でも狩りやすい弱いモンスターが多く生息していた。あるあるのスライムからバッタ型のモンスター、小さなモグラなど一般人に多少危害を加えるようなモンスターがいる。それらを倒し毛皮や歯、骨などの素材を集めることで合成などが行える。また、素材に使えないものもあるがそれは村や町などの換金所に持っていく事でモンスターに見合った討伐費と呼ばれるお金を受け取ることができる。そこらへんはRPGのあり得ない部分に根拠をつけたような感じだ。つまりは山籠りしていても三日に一度は最低でも村に戻る必要がある。とりあえずは1か月ここでレベル上げに専念するとした。
モンスターとの戦闘は体力消耗を抑えるためなるべく通常攻撃に専念をしている。確かに忍術や忍法の特訓はしたい。だが、現状次のスキルが判明するまでや、回復用のアイテムが重宝するまではなるべくリスクを抑えたい。ひたすら遭遇したモンスターを倒し、経験値を得ていく。少しずつ肉体の強化や体術の慣れが出ていく。しかしその中で自分の中に一抹の不満が宿っていく。
「攻撃力が低い」
不意打ちと奇襲の特化。それを生かすために最大限に運と素早さに特化している。だからこそ先制攻撃は取れるがそれ以上はいけない。長引けば長期戦になるのは分かり切ってはいるがそれ以上は進むことができない。己の攻撃の低さが決定打を生むことのできないもどかしさを生む。
だからこそ何かがあるはずだ。
戦う先に何かがある。
信じて戦う先に、開かれた道
目の前のスライムを斬った瞬間にまるで霧がかかっていた、忘れかけていた思い出がよみがえるような感覚で薄れていたスキルの全貌が見える。
反撃
体術忍法、体術忍術に限りコストを払わずに発動を可能にする常時スキル。
ただし、敵の攻撃を瞬間回避した一瞬にしか発動しない。
「これは・・・」
つづく
修行編あと1話ほど続いて仲間集めします