表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
867/5885

裏0+++話 ――ここは、もう、誰もいない草原じゃない――


 裏0+++話 ――ここは、もう、誰もいない草原じゃない――


「突き詰める、ナノ単位のムラもなく! そぎ落とす、醜い贅肉のすべてを!」


 アホな宣言は止まらない。


「可能性の全てを沸騰させて、限界という無粋を皆殺しにしてやる。努力って言葉の意味と価値を変えてやる」


 しまいには、概念にケンカを売る始末。


「俺の姿を見れば、この世の誰もが、例外なくドン引きするほど、バカみたいに積んでやる」


 とっくにみんなドン引きしている。


「何があろうと、絶対に止まってやらねぇ!」


 言われなくとも、知っている。

 お前は止まらない。


 ――だからこそ……



「すべての絶望を踏み台にして、無限の高みを目指し続けてやる!」



 全ての覚悟をならべてそろえて、

 最後に、




「俺が最強の神だ」




 そう締めた。

 真摯にぶっちぎったアホ丸出しの『キ〇ガイ宣言』をしたセンに、

 シューリは言う。


「それでいい。あんな愚弟に……あんな中学生ごときに……二度と負けるな、センエース」


 揺るぎない厳しさは、

 確かな指標になってくれる。


「あんたは、あたしの弟子。この世で並ぶ者がない、世界最強の神……この世の誰よりも美しい光。だから……」


 優しいだけの甘い抱擁なんていらない。

 そんなものは必要ない。

 ――甘さじゃ、弱さは殺せねぇ。



「二度と、負けるな」



 言葉に包まれて、

 だから、こぼれる。

 我慢していた涙が流れる。

 声が震えて、けれど、それでも、


「……ぁあ…………ああ……負けねぇよ。お前と、アダムと、ゼノリカと……俺の全部に誓う。これまで以上に、俺の全部を積み重ねて……必ず、あいつを超える……」


 覚悟を口にする。

 この世の誰よりも、想いと覚悟を積み重ねてきた神が、

 『もっとイカれた意地』を積むと決めた瞬間。


 実際のところ、贅肉なんて1グラムもない。

 今まで、甘えた事なんて一度もない。

 だが、それは、

 あくまでも『センエース以外の誰か』と比較した場合の話。

 これから先、センエースが比べていく対象は、『今までのセンエース』。


 『才能ゼロでありながら神の王になってしまった』ほどの『狂った努力量』が、

 今日からは、最底辺の最安値となった。

 そこが『絶対的な一番下』で、そこを下回ることは、どんな理由があろうと決して許されないという、絶対不滅のボーダーライン。


 ただただ、永遠に、『上』だけを目指し続ける、壊れた修羅。

 『最強』という、概念の呪縛にとらわれた、生きる亡霊。


 ――ここは、もう、誰もいない草原じゃない。

 ――カラっぽの頂上でもない。

 ――ここは、身を焦がす灼熱地獄。


「二度と負けねぇ……絶対に負けてやらねぇ……」


 血を吐くように、そうつぶやいた神。


 ――そんな神のもとに、ずっと、居場所を見失っていたアダムがソっと近づいてきて、

 涙を流している主の背中に寄りそった。


 フワリと、柔らかく、

 包み込むように、

 『その命すべて』で、センエースの魂を支えるように、


「……」


 背中に、アダムの温かさを感じたセンエースは、

 グっと、体に気を入れ直して、


「みっともない姿を見せちまった……悪い……アダム……ふがいない主で……」


 そう声をかけると、アダムは首を振って、


「あなた様は、今も変わらず、果てなく美しゅうございます」


 艶のある声で、そう言った。


 センエースは、ソンキーに負けた。

 しかし、どうでもいい、そんなこと。


 そんなことは、問題ではないのだ。


 今も、必死になって、気を張って、

 その強き瞳で『上』をにらみつけている主の背中だけが、


 ――アダムの居場所。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
[良い点] センのプライドとか異常性とか狂気とか頭おかしいとことかがより知れたとこだと思います。敗北の良さをいかしてる個人的に好きなシーンです(≧∀≦) [一言] 2週目ですヽ(*^ω^*)ノ
[気になる点]  いやー、マジかぁ。  ここで一辺負けが入るのかぁ。  流石に負けなし無敵の超絶最強で進むとは思っていなかったんですけど、トウシに対する挫折を乗り越えて強くなり、その後にそれ以上の絶望…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ