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裏0+話 うるさい。


 裏0+話 うるさい。


「ガチガチに勝つつもりだった。ルールを遵守した上で、ガッツリと勝つつもりだった。……絶対に勝てると思った。俺が積んできたものは、誰にも届かない場所にあると本気で信じていた……その証拠に、俺、あいつを倒した後のセリフとかも用意していたんだぜ……」


 センエースが用意していたセリフは次の通り。

 『ここまで楽しませてもらった礼だ……今日のところは、願いをかなえてやるよ。ただ、次はどうなるか、わからないぞ、ふふふ……』


「はっ……バカみたいだぜ。あまりにダサすぎる……普通に勝つつもりでいて、普通に負けてやがるんだ、このセンエースとかいうバカは……だから……さすがに、チョケれねぇ……『負けてやったんだ』なんて……そんな、マジで恥を上塗るだけのセリフは吐けねぇ」


「……」


「完全に負けた……流石、お前の弟だ。強かった。めちゃくちゃ強くなっていた。そんなあいつが、トウシというイカれたエンジンを手に入れたんだ。はは、そりゃ、勝てねぇわ。だって、俺、凡才だもん。あいつらみたいな天才じゃねぇもん。俺みたいな、ただの凡人独ひとりが、ド天才×ド天才に勝てるわけねぇじゃん。はは」


 カラカラと笑いながら、


「ああ……負けた……負けたなぁ……」


 天を仰いで、


「……俺、弱ぇ……」


 ギリっと奥歯をかみしめた。


「ほんと、無能。極めて、凡愚。天才の前では、地を舐める事しかできないクソザコ。背景に溶け込むしか能のない、堕弱で脆弱で貧弱な、影の薄いモブ」


 自虐しながら、両手で頭をかきむしり、全身を小刻みにふるわせる。

 頭の中が黒いモヤモヤでいっぱいになった。


「何もできない! 何も果たせない!」


 どうしようもなく、いたたまれない。

 とめどない悔しさ。

 溢れ出て、とまらない。

 黒い何かが、全身をズタズタにしている。

 痛みだけが、今のセンエースの『中』にある全部。


「弱い、弱い弱い弱いっっ! ……どうして! 俺は! こんなにっ!!」


 『自分の弱さ』の底へと堕ちていく神の王。

 引きずり込まれる。

 黒くて深い、『弱さ』の底。


 ヒビが入って、穢れて、薄汚れて、

 下を向いて、背中が丸くなって、顔色が鈍い青に染まって、

 ただ、堕ちて、堕ちて……



 そんなセンの頬を、

 シューリは、


「うるさい」


 パァンと、張り上げた。

 音だけは大きかったけれど、

 痛みはほとんど感じなかった。


 魂を注がれたのだと理解できる一発だった。



「……」



 脳内に響いた『張り手の音』で、センは、ようやく前を向く。

 ジっと、まっすぐに、センの目をみつめているシューリ。

 シューリの、


「ふざけるな」


 言葉が、センの中に浸透していく。


「そうじゃないだろ」


 強い目をして、センを叱るシューリ。

 『素』をさらけだしてでも、伝えようとしている言葉。

 膨れ上がった怒りが、『素を晒す不快感』を超えてしまった瞬間。


 つまり、今、この瞬間だけは、

 全てのプライドをかなぐり捨てて、

 センと、全身全霊で向き合っているという事。


 その事実に触れて、

 センは、脱力した。

 『自分を底へ引っ張る』という、

 その無意味極まりない『りきみ』が死んだ。


 軋んでいた奥歯が解放される。




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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