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131話 からっぽ。


 131話 からっぽ。


「しっかりしろ。おいおい、マジかよ。絶望を糧に、華麗にキレて覚醒するだろうと思ったんだが、まさか、普通に壊れるとは……まいったな……うーん……この展開は予想外だな。……起きろー、おーい……」


 ぺしぺしと、軽く頬をたたかれるが、

 トウシはまるで反応しない。

 どうやら、ただの屍のようだ。


「あーあ、マジで壊れちゃった。そりゃねぇだろ。ここまで、どんだけ時間と資源を使ったと……はぁ……もうちょっと根性あるかなぁっと思っていたんだが……ま、しょせんは第一アルファの中学生。この辺が限界か」


「……」


 うなだれているトウシをその辺に投げ捨てると、

 モンジンは、


「お前も、もう用済みだ、消えろ」


 そう言って、椿の背後に瞬間移動すると、そのまま彼女を一口で捕食する。

 咀嚼もせず、一気にまるのみ。

 そのまま、神の養分となった。


「つまんない最後だったな。もう少し楽しめるかと思ったんだけど……見込み違いもはなはだしい……ん?」


 と、そこで、

 背後から、ピリピリと、

 増大するオーラの波動を感じて、

 モンジンは振り返った。


 そこでは、

 トウシが、



「……ジュリア……」



 『ジュリアが消滅した地点』に立っていた。

 力なく、天を仰いで、無表情のまま、赤い涙を流していた。


「守って……あげられなかった……ごめん……」


 血の涙を流しながら、うつろな表情で、意味なく、天に向かって謝罪の言葉を述べているトウシ。


 そんなトウシに、モンジンは、


「おっ、いいぞ……上がってる、上がってる」


 楽しそうに、


「お前の感情は臨界点に達した。『開いていく』のを感じるだろう? 感情の制御を失って、無自覚に抑え込んでいたお前の異常性が牙をむいている。やっと、想定通りの流れになってきた」


「……」


「さあ、爆発させろ。そして、かかってこい。限界を超えたお前なら、きっと、俺の遊び相手たりうる」


「……どうでもいい……」


「ん?」


「……からっぽや……ワシにはもう……なんもない……」


 質量のない言葉だけが、雲のように流れていく。

 留まり方を忘れた想い。

 震え方を忘れた量子。


 その、こだわりを失った無色の魂は、

 ただ死に場所だけを求める屍で、

 だから、


「仮に、あんたを殺せたとしても……なんの意味もない……ジュリアはもう死んだ……」


「そうだな。あの女は死んだ。その想いを乗せて、さあ、俺にぶつかってくるがいい。お前の怒りを爆発させて、俺に対して、あの女の死の責任を追及しろ」


「……意味がない」


「おいおい、いつまでお利口さんでいるつもりだ。もう、その時期は終わった。いいかげん、むき出しでこいよ」


「あんたの望みどおりに苦しんで、あんたの望み通りにジュリアが死んで、あんたの望みどおりにワシがキレて……で、ここから、あんたの望みどおりにボコボコにされろって? もうええわ……アホか……」


 ポツポツと、

 弱い音だけが、どこかへ落ちていく。


「恋とか愛とか、実際のところ、よぉわからんけど……あいつと一緒におる時間が好きやった……あいつを守ることが出来たって事実だけが、ワシの誇りやった……けど、もう、あいつはおらん……終わった……なにもかも……ははは……自分でも、ちょっと驚いとるよ……惚れとる自覚はあったんやけど……ここまでとは思ってなかった……」


 かすれた声に、傷あとが残って、


「……痛いよ、神様……色々なところが痛い……」




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