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111話 トウシVSミシャンド/ラ


 111話 トウシVSミシャンド/ラ


「なんというか……まるでヒーローみたいなタイミングで登場してもうたけど……最初に、ちゃんと言うとくで。見はからってた訳やないからな。ただ、ソンキーとのダイブに没頭しすぎただけ。つまりは、完全な遅刻やな。陳謝する」


 トウシの謝罪を受けた面々は、

 言葉にならない想いをかみしめていた。

 大粒の涙をぼろぼろとこぼし、安堵から足元が崩れる。

 

 そして、一拍を置いてから、


「おそいぃいい!!」

「主役だからって、遅れて登場していいと思うなよ!」

「二度と遅刻しないでください!!」

「自分の立ち位置を、ちゃんと理解しろぉお!」

「あんたがいてナンボなんだよ、このゲームはぁ!」


 不満と文句の声が止まらない。

 そんな罵詈雑言の中、

 トウシは、悠々と、前に出る。


 あらためて、ミシャと対峙するトウシ。


「ウチの連中、なんか、めちゃくちゃ強くなっとるけど……流石に、あんたには歯がたたんかったみたいやな」


「……『めちゃくちゃ強くなった』という程度で超えられるほど、私は薄っぺらくない」


「みたいやな。人間の限界を遥かに超越して、地獄を乗り越えて、全てを賭して……それでも超えられん壁……あんたからは、そんな高みを感じる」


「主は……そんな私の遥か先におられる」


「遠いな……けど、ワシは、その最果てを求める。そうやないと、何も守れんから」


 言ってから、トウシは、スッと腰を落として、戦闘態勢を取る。


「あんたを超える。そして……神を狩る」


「不可能。無謀の程度を教えてあげる」



 ビリっと、何か、電気が走ったような気がした。

 頑なな磁気に犯されたみたいに、視覚画像が乱れてズレる。


 幾何学が躍る。

 真空が過敏になって、暴力に依存する。

 活性化する彗星。

 小さな宇宙が、そこにあった。


 神話狩りの面々の視界に映る『ミシャとトウシの闘い』は、殴り合いではなかった。

 そんな俗なものではなく、もっと、なにか、こう……

 表現しようのない、芸術的な何かだったんだ。


 拳が流星になって、爆発のうずを巻き起こし、

 その収束が、光の棺桶になって、跳ねたり踊ったり。


 戦闘という概念が変わっていく。

 万華鏡のパズル。

 鳴動のミルフィーユ。

 そんな、異次元の『ぶつかりあい』が、しびれを切らしたところで、

 ミシャが、ふいに、


「――神化――」


 両手を合わせて、そうつぶやいた。

 すると、ミシャの全身が神々しい輝きに包まれる。


 平伏したくなるその輝きに、思わず、その場の誰もが息をのんだ。

 呼吸の先に届いた者は、一人だけ。


「――神化――」


 トウシもまた、同じように、両手を合わせて宣言する。

 ミシャにも負けない神々しさに包まれるトウシ。


 未知の光がぶつかりあって、

 また新しい芸術になった。


 ――神話狩りの面々は、現状に対する理解を何一つ得ていない。

 しかし、把握できた。

 断言できる模範解答をえた。


 これは、神々の闘い。

 凡夫では永遠に到達できない『果ての果て』におわす超次生命たちの宴。


 ――神化したトウシを目のあたりにしたミシャが言う。


「ありうるとは思っていたけれど……まさか、本当に、神に成っていたとは……タナカトウシ。貴様には心底から驚かされる」




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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