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107話 本物の絶望。


 107話 本物の絶望。


「それだけ強化されておきながら、多少の抵抗すら出来ないとは……本当に使えないクズどもだ」


 ミシャンド/ラは、ため息まじりにそう言ってから、


「もういい」


 冷徹な無表情。

 美少女のかわいらしさなど皆無。

 徹底した冷酷をにじませる。


 邪悪さに染まった声が世界に拡散したと同時、

 ミシャは自身の両手を、まだ二万人ほど残っている彼・彼女たちにむけて、


「せめて、私の養分になって消えろ」


 一瞬、ミシャのオーラがグワっと膨れ上がった。


 漆黒よりもドス黒い、心かきむしられる、貪食の色。


 膨れ上がった黒が、重たい粒となってはじける。

 すると、

  ジュワっと、

   彼・彼女達の肉体が蒸発した。


 そのあまりにも残虐なシーンを目の当たりにした岡葉たちは、真っ青になって嗚咽した。

 中には、オロロと吐いている者もいた。


 無慈悲に熔かされた三万の中学生。

 あとに残ったMD粒子だけが、チリチリと揺らめいて、

 まるで、居場所を求めるように、ミシャの『中』へとおさまっていった。


 数万という途方もない数の命を容赦なく奪い尽したミシャは、

 その事実という感慨にふけることすらなく、

 虹宮たちに、平坦な視線を向けて、


「最後の一人を残しての時間稼ぎ……当然だが、そんな甘えは許さない。このデスゲームに抜け道などない」


 ミシャの言葉が、神話狩りのメンバーの心に浸透していく。

 重たい黒で染まっていく、みなの心。

 まるで頸動脈でも裂いたみたいに、『絶望』がドクドクとあふれて、彼らの全身を包み、おぼれさせようとする。


 ミシャンド/ラが、


「――くだらない遊びはここまで」


 フラットに、そう言った直後、重力が、己の仕事を半分だけ思い出す。

 ミシャの体が、フワリと、神様の風に支えられているかのように、

 ゆったりとしたペースで地面まで降りてくる。


「それでは、これより、本物の絶望を執行する」


 宣言した直後、ミシャは、音もなく消えた。

 影も残像も残らない、静かな消失。


 ミシャンド/ラが消えた――と、神話狩りのメンバーが認識した直後のこと、

 彼・彼女たちの後方で、鋭い爆音が響いた。

 まるで剣の嵐。

 鋼鉄が乱れ暴れるような冷たい無常な音がした。


 反射的に振り替えると、粉塵が舞っていて、

 十人ほどが光の粒になって消えた。

 魂の輝きと、キラキラしたオーラの剣が複雑にからみあって、

 幻想的な空間が出来上がっていた。


 オーケストラになった淡い輝きに、

 ミシャは号令をかけて、己の右手に集結させる。

 小さな球になった輝きを、ミシャは、スっと柔らかく握りしめた。


 すると、輝きは、ミシャの腕をつたって、

 ミシャの奥へと注ぎ込まれた。



「ぁっ――」

「そんな……」



 隊長クラスの面々は、声にならない声を漏らす事しか出来なかった。

 あまりに突然の陣形崩壊。

 食い込まれ、なぎはらわれる。


 痛みを感じるヒマもない、光速の暴力。

 嵐は嵐を呼んで、より凄惨な暴風となる。


 ――ミシャは、止まらない。

 優雅に、邪悪に、

 ただ、ただ、少年・少女たちを蹴散らしていく。


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