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102話 ズラっと並んだ地獄。


 102話 ズラっと並んだ地獄。


「ていうか、トウシくんは、まだ見つからないのか?」

「ああ、校舎中、くまなく探したが、どこにもいない」


「も、もしかして逃げたの?」

「おい、椿……それ、本気で聞いてんのか? どういう脳味噌をしていたら、そういう結論にいたるのか、何よりもソレが不思議だ」

「なあ、椿。逃げ場所を知っているなら、教えてくれよ。俺も逃げるから」

「じゃ、じゃあ、どうしていないの?!」

「どこかで精神集中でもしているんだろう」


 トウシ不在の件について、周囲が重度の不安からザワザワしだした……

 ――その時だった。


 瞬間移動で、皆の前に現れたアダムが、


「時間だ。これより、イベントを始め――」


「ちょ、ちょっと待って。トウシくんがまだ来ていなくて――」


 延期を申し入れようとする声を、

 しかし、アダムは、当然のように、


「そんなこと、知ったことか」


 一蹴する。

 彼女に慈悲などない。

 ガキどもの慟哭など、アダムからすれば、蚊の羽音と同じ。


 アダムの心を震わせるのは、神の声だけ。


「二度と、私の言葉をさえぎるな」


 そう言って、アダムが指をパチンと鳴らすと、

 この場にいる全員の姿がシュンと消えた。



 ★


 瞬間移動で連れてこられた場所は、だだっ広い荒野だった。

 栄養不足の大地はカラカラ。

 生き物の影はなし。

 太陽は高く、雲はなかった。

 少し強い風が吹いていて、土煙が舞っている。

 ところどころ、ほんのわずかに死にかけの草が生えているだけの、枯れた土地。


「おいおい、ちょっとマジで? 俺らだけ? トウシくん無し?!」

「やべぇ、やべぇ、やべぇ、やべぇ、やべぇ」

「どうすんの、これ……」


「ちょ、うしろっ」


 視線を背後に向けてみると、

 そこには、3万人近い中学生が勢ぞろいしていた。


「ぉ、おいおい……あいつら、全員、トランスフォーム、使ってんぞ」


 ズラっと並んでいる同級生たちは、

 一人残らずドラゴンスーツを纏い、鋭い殺気を放っていた。

 中学生の集団とは思えない威圧感の暴風。

 これから戦争が始まるのだ、と否応なしに認識させられる。


 ――アダムが言う。


「あの数だけは多いカス共には、特別強化パーツが配布されている。強化値は、全員、300%を超えており、中には、超強力な☆X強化パーツが積まれている猛者もいる」


 アダムのセリフを受けて、神話狩りのメンバーは全員、とびっきりの渋い顔をした。

 『ネオバグとの闘いを経験した8名』以外の者の中には、

 あまりにも悲惨で不条理な光景に失神しかけた者もいた。


「あのカス共を皆殺しにすれば、ミシャンド/ラが出現する。カス共とミシャンド/ラ、その全てを倒せば、このイベントはクリアとなる」


「で、クリアできなければ俺ら全滅と」

「ていうか、クリア出来なかった時って、俺らが全滅した時じゃね?」

「ああ……そっか」

「ボーっとすんなよ、これから殺し合いすんだぞ」

「ボーっとなんかしているわけないだろ。トウシくんがいないという事実に対する混乱と恐怖で頭が回っていないだけだ」



 どうにか落ちつこうと、空虚な会話に没頭している者。

 胸の前で両手を握りしめている者。

 天を仰いで深呼吸をしている者。


 それぞれの行動はバラバラだったが、

 その表情は、一様に、青白かった。





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