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72話 誤審。


 72話 誤審。


「対峙したワシには分かる。その神様の圧力は次元違いや。ワシは、この距離……18メートルも離れとるのに、ビビって動けんようになりかけた。それにくらべて、お前は、ゼロ距離やのにガツンと抵抗してみせた……カッコええやないか」


 熱量が跳ねあがった。

 押された背中、受け取ったエール、そして、湧き上がる敬意。

 『ひとり』では得られない『全部』を背負って、

 トウシはグっと足をあげた。


「いくぞ、神様ぁあああ! これが、ワシの! 全部じゃぁああああ!」


 背負った全部を指先に乗せた。

 ビリビリと、全身に謎の電流が走った。


 全てが一致したような気がした。


 放たれた入魂の一球は、



 ギュンッッッ!



 と、凶悪かつ暴力的に加速して、






 ズバァアアアアアアアン!






 と、ミットに収まった。


 文句のない、ど真ん中のストレート。

 完全なる見逃しの三振。


「しゃあああああ! どうじゃ、ごらぁあああ!」


 歓喜を叫ぶトウシ。

 その衝動に押されて、神話狩りのメンバーも大声で歓声を上げた。


 ――その状況を受けて、

 虹宮モンジンは、



「……ボールだな」



 ボソっと、そう言った。


 それを聞いたトウシは、


「はぁ?! なに言うてんねん! 完全にど真ん中やないか!」


「ぃ、いやいや、何言っているんですか、トウシさん。ボールですよ。そ、そうじゃなきゃ、俺が見逃すわけないじゃないですかぁ。いやだなぁ、ははは。さ、というわけで、仕切り直しといきましょうか、トウシさん」


「なに、目ぇ泳がせながら、ナメたことほざいてんねん。ふざけんなよ、おい」


 怒鳴るトウシから視線をそらして、

 虹宮モンジンは、審判であるアダムに、


「な、ボールだよな? ボールだったろ? ボール以外のナニモノでもなかったよな? お前は見間違えたりしないよな? だって、俺の配下だもんな? お前は、神の王である、この俺の、配下だもんな? な?」


「徹底して配下に圧力かけていくスタイルとか……きたなすぎるやろ! そんな、理不尽が――」


 と、文句が止まらないトウシだったが、




「主上様……申し訳ございません。貴方様の、『贔屓はするな』という命令を破ることはできません……」




 アダムのその発言で、トウシはピタっと黙った。


「入っていました。……三振です……」


 アダムの発言を受けて、

 虹宮モンジンは、


「アダム……心して答えろ。お前は、『誰』の『何』だ?」


「貴方様のシモベでございます」


「……なら、答えは決まっているはずだ」


「はい」


 返事をしてから、アダムは、グっと顎をあげて、虹宮モンジンの目を見つめ、


「貴方様の命令に、私は絶対に背きません。……主上様の……負けでございます」


 その強い視線を受けて、

 虹宮モンジンは、


「はぁ……」


 と、一度、深く溜息をついて、


「まったく、とんでもない誤審だな。誤審とかナイわー。けど、まあ、誤審だから、しかたない……あーあ、勝っていたのになぁ。余裕で勝っていたのに……こんなところで、ド級の誤審をくらうとはなぁ……」


 やれやれと首を振ってから、

 虹宮モンジンは、トウシを指さし、


「いいか、トウシ。俺が負けたワケじゃない。これは、ただの誤審。そこのところ、勘違いするなよ」


「……」


「なんだ、その目は。何か言いたいことでも?」


「いえ……なにも」


 そこで、トウシは、これ以上、虹宮モンジンの神経に触れないよう、慎重に言葉を選び、


「誤審とはいえ、勝ててよかったです」


 そう言った。

 その態度を受けて、虹宮モンジンは、

 機嫌良さそうに、ニっと微笑み、


「わかっているじゃないか。くるしゅうない。その殊勝な態度に免じて、俺に対して調子こいた件は忘れてやろう」


「……………………あざーす」



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