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66話 挑発。



 66話 挑発。



「褒めてへん。あんたがじんろうやぁ言うてんねん」






「……」






「神様よぉ、もうちょっと抑えぇや。『人外』まるだしやで。どこの中学生が、こんな大観衆の前で、それも、命がかかった試合や言うてんのに、いっさいリズム崩さず、ポンポン、ストライクゾーンに球を投げ込めんねん。人間の弱さ、ナメんなや」


「ちょっと待ってよ。おれは神狼じゃないよ。ただ、トウシくんにゆだねていただけで……ていうか、試合でちゃんと投げられたかどうかが判断材料になるなら、トウシくんだって、見事なピッチングを披露していたから、神狼ってことになっちゃうじゃないか。なに? もしかして、おれとトウシくんが神狼なの? 知らない間に、そうなっていたの?」


「最強無敵の神様は、どうやら、人間の事がよく分かってへんようやな。まったく全知全能やない」


「……」


「人間ってのは、ホンマにクッソ弱いんや。『他人によりかかるしか能のない弱者』ってのは、相手によりかかった状態でも、頻繁かつ盛大にスッ転んで、その上、『お前のせいで転んだじゃないか、どうしてくれる』なんてふざけた文句を言うてくる」


「……」


「神様、おそらく、あんたは強いんやろう。力とかやなくて、魂が強い。弱さを持ち合わせてない特別な心の持ち主。このワシですら……こんな、『いろいろと、ぶっ壊れたワシ』ですら、最初の一球目を投げるんに30秒はかかった。自分を整えるのに、ずいぶんな時間を必要とした。けど、あんたは、一投目からヒョイヒョイ投げてた。もう、これが答えなんや。人間に、そんなマネはできん。つまり、あんたは人間やない」


「……」


「さて、というわけで、一匹、確保。残りのじんろうは、あと一匹やな……ただ、そのもう一匹がさっぱり――」


「ちょ、ちょっと待ってよ。おれの話を終わらせないでよ! おれは神狼じゃないよ。しんじてよ」


「ほな、一打席勝負しようや」


「……はぁ?」


「ワシが投げるから、あんた打てぇ」


「……なんで、急に、そんな話に……」


「最初に言うとくけど、これは真剣勝負。『勝ち負け』がハッキリとつくガチの勝負。ええな?」


「ちょっと待って。ねぇ、冷静になってよ。勝負なんて意味ないよ。おれがトウシくんに勝てるワケないんだから」




「せやな。あんた程度では、ワシには勝てんやろな」




「……なんていうか、その安い挑発、マンガみたいだね」


「挑発に安いもクソもない。『本気』で『胸に抱いとるプライド』は、どの角度からさわられてもカチンとくるもん。それは、神様も人も変わらんはず……と、ワシなんかは思うとるんやけど、実際のところどうかは知らん。というわけで」


 言いながら、トウシは複数個のボールを持って、マウンドに向かい、


「あんたじゃ、ワシには勝てん。それを証明したるから、さっさとバット持って、打席に立たんかい」


「……強引だなぁ、トウシくんは……まあ、いいよ、ようするに、君に負ければいいんでしょ? やれやれ。それで『神狼じゃない』って証明できるなら、安いものさ」




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