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59話 サーキュレーター。


 59話 サーキュレーター。


 先行は、トウシたちのチーム。

 とりあえず、トウシは、様子見として、『岡葉(小学校3~5年の3年間という濃厚な野球経験を持つ男)』を先頭バッターとして送りだした。

 結果は、目を見張るモノだった。


 トランスフォームなしの岡葉に対し、相手投手は、トランスフォームをした状態で、躊躇なく『魂の一球』をブチ込んできた。

 遠投120メートル級の肩力を正しく運用すれば、当然、140キロどころではない圧倒的なスピードが出せる。

 とても中学生が投げたとは思えない、メジャーリーガー顔負けの、160キロ近い剛速球を前にして、岡葉の心は、秒すら必要とせずにヘシ折れた。


「いや、こんなの、むりむり」


 完全に心が砕け散ってしまった岡葉は、その後、ボックスの後方で長い棒を持つだけの特殊なカカシとなった。

 美しい見送り三振を決めた岡葉は、さわやかな表情で、


「うん、不可能不可能。ぼくらは完全に戦力外だ。あとは、トウシくんと、スーツをきている虹宮に任せるしかない」


 2番バッターを買って出たトウシは、打席に立って10秒で、


「あ~、ムリやねぇ~……これは、メジャーリーガーやないと、むり」


 速攻でヘシ折れた。

 あっさりと見送り三振して、


「虹宮、お前だけが頼りや。頼んだで」


 虹宮に全てを託した。

 託された虹宮は、


「大船に乗った気でいるといいよ、トウシくん。なんせ、ぼくは、小学生時代、サーキュレーターの異名を持っていたほどの男だからね」


「おお、かっこええやないか、期待が膨ら……って、それ、扇風機って意味ちゃうんか?!」


 ※ 野球における扇風機とは、バットを振りまわして風を発生させるだけの――ようするに、空振りしかしないザコのことである。



 意気揚々とバッターボックスに向かう虹宮。

 ドラゴンスーツを着ているという事で、相手バッテリーも、虹宮をかなり警戒している様子。

 数秒のサイン交換。

 首を振る投手。


 そこで、虹宮は、相手投手に対し、


「そんなにおびえなくていい」


 雄大に構えて、


「一瞬のことさ。すぐに終わる」


 ゴクっと、息をのむ音が聞こえた。

 虹宮の威圧感に、バッテリーが二人とも息をのんだ。


 ――結果は、



「ストライッ、バッター、アウッ」



「なにしてんねん」

「……紙一重だった……」


「あかん、このサーキュレーター、まったく使えへん……」

「ヤバいな。サーキュレーターが使えないとなると、点を取る手段がない……」

「どうにか、サーキュレーター以外のメンツでも点を取る方法を考えないと」

「だが、流石に、サーキュレーター以外で、あの速度に対応することは――」


「ごめんなさい。反省しています。だから、もうサーキュレーターって呼ぶのやめてください」



 ★



 マウンドに立ったサーキュレーターに、トウシは言う。


「とりあえず、簡単にサインきめよか。球種は何がある?」

「男は黙ってストレート」

「……うわ……マジか……いや、まあ、小学生は変化球投げたらあかんから、しゃーないんやけど……」


 トウシは一度頭を抱えてから、


「まあ、ええわ。とりあえず、コースでリードするから、ワシのミットめがけて投げてこい」


「ところで、トウシくん。今の俺、たぶん、150~160キロくらいの球が投げられるんだけど、取れる?」


「体の使い方を知らんかった頃から、マシンの150キロは捕れよったからな。今やったら200キロの球でも反応できる自信はある」


「え、トウシくんって、実際に野球はやってなかったんだよね?」


「近所に、改造トップガンを置いとるアホなバッセンがあってな。実験として、いろいろ使わせてもらったんや」



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