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35話 追加ルール。


 35話 追加ルール。


「神様! お願い! 死にたくない! 助けて! かみさ……誰か! 誰でもいい! 助けて! 誰か! ――蜜波さん! どうか、助けて!」


 その視線は、ナツミをとらえていた。

 数少ない、自分より強い相手に救いを求める。


 そんな『岡葉の視線』は、当然、ナツミの二つ隣にいる『トウシの視界』にも飛びこんでくる。

 トウシは、ハッキリと見てしまう。

 岡葉の、救いを求める瞳。

 必死で、命の擁護を求めている目――



「たすけて! おねがいだから! 死にたくない!」



 岡葉の、その叫びを受けて、


「……」


 トウシは、ギリっと奥歯をかみしめた。

 握る拳が強く、硬くなる。


 そんな時、




「ここで特別ルールを発表する。観客席にいる貴様らの中から、一人だけ、追加でエクストラステージに参加する事を許そう。この権利は、早いもの勝ちだ。さあ、我こそはと思う者は、スタジアムへと飛び込むといい」




 客席に突然現れたアダムがそう言った。


 もちろん、誰も、その声に反応したりしない。

 みな、アダムから視線を外してうつむく。



「どうした? 同族のピンチだぞ。助けにいってやったらどうだ?」



 みなが視線をそらす中、

 トウシだけは、アダムの目をジっと見つめていた。

 強い視線で、アダムの目を見つめたまま、



(九華が相手やと、今のワシでは勝てん……あの時も、バロールが引いてくれたから、なんとかおさまったけど……もし、普通に続けとったら、確実に負けとった。ワシの武はまだまだ、発展途上……基礎を認識した程度でしかない。今のワシでは、『バロールより強いジャミ』には確定で勝てん……10分耐えきるんは……まず、できんやろう……)


 心の中で、ぶつぶつとつぶやくトウシ。

 そんなトウシの様子に気付いたジュリアは、

 トウシの腕をガっと掴んで、


「動くな」


 そう言った。


 ジュリアの言葉が、トウシの奥へしみ込んでいく。

 掴まれた腕から、ジュリアの想いが、流れ込んできた。

 『頼むから、動かないで』という懇願。

 必死の想い。

 ――トウシは、


(勝てん敵……守るべき相手……闘う理由……)


 色々な言葉が、グルグルとめぐって、

 同じところを何周もして、

 答えのない迷路の底で悩み、あがき、揺らぎ、

 ――そんなトウシの耳に、




「だれか……たすけて……おねがい……」




 懇願している岡葉の声が届いた。

 ボロボロの状態で、無慈悲な死にさらされている姿が、トウシの視線におさまる。


 そこで、岡葉は、また、ジャミに、ガツンと一撃をもらった。

 死なない程度の、いたぶる拳。

 粘滞性の死がジンワリと浸透していく。



「……だれ……か……」



 そんな岡葉の、かすれた声に対し、トウシは、


「やかましわ」


 そうつぶやいてから、

 ナツミに視線をうつし、


「……お前の願いを叶えると誓うから……さっきの10万をよこせ」


 そう言った。


 すると、ジュリアが、キっと視線を鋭くして、


「やめろ」


 強い言葉でそう制したが、

 しかし、トウシは、


「……ワシ、イケメンが嫌いやねんなぁ……つまり、ワシ、あのジャミってやつのこと、めっちゃ嫌いやねん。なんというか、どこがどうとは言えへんねんけど、とにもかくにも、そこはかとなくムカついてしゃーない。このリビドーは止められへん」


「……」


「あと、エクストラアイテムにも興味がある。めっちゃ強くなれそうやん。ここで入手しとかんと、あとで後悔する気しかせぇへん。うん、間違いない」





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