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23話 強すぎるバロール。


 23話 強すぎるバロール。


 バロールの圧力にビビって酔いがさめるトウシ。

 背筋が凍えて、冷たい汗が止まらない。


(ぅわ……アカン……なんや、よう分からんけど……肌で感じる……あの猿顔には、絶対に勝てん……)



 戦闘開始前から『バロールはかなり強い』と肌で感じて分かっていたが、

 戦闘が開始してすぐ、

 『それ』が酷い勘違いだと気付いた。



(アカン!! これ、強いとかやない! か、神のように強い!!)



 バロールの強さは異常だった。

 『戦闘』という『概念そのもの』を熟知している動き。


 『永き研鑽が積まれている』と、素人目にも一発で理解できる、老練な手管。

 十年とか百年とか、そんな短い時間ではない。

 もっと、もっと、もっと、果てない時間を積んできた者のれん



「本来、我々九華が、貴様らに対して、トランスフォームを使うのは禁止されているのだが……タナカトウシ……貴様を相手にする場合に限り、特別に使用許可が出た。……誇れ、貴様には、それだけ価値があるということ」


「その高評価、マジでいらんなぁ……ていうか、ほんまに、その禁止令だけは頑として貫いてくれや。解禁したらアカンて……あんたの強さ、チートどころの騒ぎやないで。絶対に神様より強いやろ。あんたより強いヤツとかおるわけがない」


「言っておくが、主は、私など足下にも及ばない、圧倒的な武を有しておられるぞ」


「……ぇえ……ウソやろ……いや、絶対に嘘や。そんなに遠い訳がない」


 クラっときた。

 バロールのセリフは、あまりにも絶望が過ぎた。


「ウソ? 愚かしいな……『主の真実』を知る者なら、必ずこう言う。『この上なく尊き主を、貴様バロールごときと比べるな』と」


「そ、それが真実やとしたら……このゲーム、難易度、イカれすぎやろ! バランスもクソもないやないか! こっちは、すでに、☆Xをガン積みしてんのに、ラスボスには勝ち目ゼロ以下て! なんや、このクソゲー! 製作者、頭、わるすぎやろ!」


 トウシの、そんな悲鳴を聞いた瞬間、

 バロールは、ピタっと動きを止めた。

 そして、プルプルと小刻みに震えだした。


 ただごとではないと一瞬で理解したトウシは、額に汗を浮かばせながら尋ねる。


「……ぇ、なに? どしたん?」


「……言うまでもないが……このゲームの製作者は、我が主だ……」


「え……ぁ、いや……」


 そこで、トウシは、すべてを把握した顔になり、

 慌てて、


「うん、いや、ちゃうねん……そういうことやないねん……なにがどうとは言われへんけど、そういうことでは――」


「貴様……この上なく尊き『我が主』を……愚弄したな……」


「ちょ、だから、違う……まっ――」


「その愚かさの報いを受けろ」


 そう言って、バロールは加速した。

 磨き抜かれた武が、トウシに襲いかかる。


 拳が刃のように鋭く、トウシの体を刻もうとしてくる。

 その速度は、目にもとまらない迅雷で、

 抗うほどに強く、トウシの体躯に、高次の衝撃を叩きこんでくる。


「ぬぐぉおおおおっ……ムリムリ、こんなもん! どうせぇ言うんじゃい!」


 止まらない嵐のような武。

 今のトウシでは理解すら出来ない圧倒的な強さ。


「まけ……る……てか、死ぬ……」


 バロールという激流の中で溺れそうになっていたトウシの心に、






 ――敗北など許さない――






 声が響いた。

 静かなのに、凛と響く、凶悪なイケボ。


 ――俺の名を冠する力を持ちながら、バロール程度の小神に負けるなど許さない――


(だれ、や……どこから……)


 ――趣味じゃないが、少しだけ手ほどきしてやる――


 心に響く声が、

 トウシの全身を包み込み、




 ――お前の頭脳があれば、『俺』を『理解』する事も出来るだろう――




(あんたって……もしかして……ソンキー? ……キャラパーツが持つ意志……的な?)


 ――俺が誰かなど、どうでもいい。

   ソウルレリーフとはいえ、魂に『俺』を宿すなら、

   この世の誰にも負けるんじゃねぇ――




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