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11話 蝉原の答え。


 11話 蝉原の答え。



 ゴートの質問を受けて、蝉原は、天を仰ぎ、


「なんでだろうなぁ……んー」


 ポリポリと頭をかいてから、


「自分でもよくわかんないんだけど……うーん、そうだなぁ、多分……今、すごく退屈で、君との闘いが楽しかったから……じゃないかな?」


「……」


「ここにいても『する事』なんて何もない。お腹もすかない、眠くもならない。女もいないし、そもそも欲しくない……今の俺には何もない。ただ、退屈で、時間の感覚も、なんだか希薄になっている。ただ、ここでジっとしているだけ。周囲を探索してみようかとも思ったんだけど、なぜか、その気力もわかないんだ。何もしたくないってワケじゃないし、ひどく退屈なのだけれど……うん、本当に、自分でもよく分からないけれど、なんだか、すべてがどうでもいい。――でもね、」


 そこで、蝉原は、ゴートに視線を向けて、


「でもね、センくん。君とは『殺し合いたい』と思うんだ。君がここにくることを、俺は、ずっと待っていた。理解できないと思うけど、今の俺はすごく興奮している。君がきてくれて、嬉しくてたまらない。君を殺す。それだけでいい。それだけが全て」


「なんだ、その迷惑極まりない状態は……『うっかり同情しそうになるほど地獄みたいな状況』に置かれていて、そのストレスが全部俺に向かっているじゃねぇか。ふざけんな」


「……ストレス……うぅん、それもないな……『抑圧』とか『疲弊』とか、そういう概念そのものが消えているみたいだからね。今の俺は、ただカラッポなだけ。君を殺すというベクトル以外はなくしたヌケガラ」


「本当に迷惑極まりない……」


「それじゃあ、はじめようか。君と俺の殺し合い。もし、俺に勝てたら、この子は返すよ。ふふ、今の俺は……クッパの気持ちが少しだけ分かる。きっと、あの亀は、ヒゲのオッサンと闘いたいから、欲しくもないのに、桃の姫さんを誘拐しまくっていたんだろうね」


「いや、違うと思う……」


「違うかもね。まあ、どうでもいいさ。そんな事は些細な事だ」


 言って、蝉原は立ち上がり、


「最初からフルでいくよ。今の君なら、物理的に全力でぶつかっても、そう簡単には壊れないだろうから」


 そう言って、跳んだ。

 とんでもない跳躍力。

 そして、超スピード。


 衝撃波を出しながらの瞬間移動。

 存在値の高さがうかがえる動きだった。

 一瞬で理解できる、圧倒的な力。


「なぁっ?! マジでかっ?!」


 エグりとるように、空間を駆け抜けていく蝉原。

 異常な速度で、ゴートとの距離をつめる!


「……ぅぐぃいいいっ!!」


 蝉原の攻撃はただの右ストレート。

 ゴートは、蝉原の右を、両腕でガードした。

 ちゃんとガードできたのに、全身が痺れて、思わず苦痛を声に出してしまう。


「さすが、センくん。君は本当に、スゴい男だ」


 それからも、蝉原の猛攻はとどまる事を知らず、ゴートはガードする事しかできない。

 そして、ガードをしても、ズンと深くまで響いて、ゴートを削ってくる。


(し、信じられない強さ……なんだ……この異常な……)


 魔法や剣は使わず、ただひたすらに殴りかかってくる蝉原。

 それに対し、ゴートも、魔法や剣や盾は使わず、両腕でガードして、

 時々、スキをみつけては殴りかかっている。


 神を超えた力で、原始的な殴り合いをする両者。


 その途中で、


「センくん……君は本当に面白い」


 蝉原はしみじみと、


「俺は、『今の俺』がどういう状況にあるのかまったく理解していない。けれど、『今の蝉原勇吾』がどれだけの『高み』にあるのかくらいは分かる。俺は強い。おそらく、神様のように強い。いや、きっと、神様よりも強い。今の俺は、そういう高みにある。そうだろう?」


「……ぁあ……正直、今のお前は、フッキよりも……強いと思う……」


 体感した力は、明らかにフッキを超えていた。

 蝉原の力は、異常な領域にあった。


「俺は、フッキの全力を知っているワケじゃないから、絶対的な答えではないが……たぶん……お前の方が強い。認めたくないが……なんで、お前なんかがって思うが……お前は、たぶん、ほぼ間違いなく、世界最強だ……」



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