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28話 倍プッシュ。


 28話 倍プッシュ。



 アダムは、神の美しさに見とれていた。

 センが勝つ方に賭けていたアダムは、3525倍勝ちという圧倒的な大勝利を得て、

 およそ3億CMDPという、膨大な大金を得た――が、

 そんな事は心底からどうでもよかった。


 神の美しさを、これほど近くで見る事が出来た。

 それ以上の喜びなどあるはずがなかった。


「ぁあ、主上様……貴方様の美しさは……いつまでも、どこまでも……とどまることを知らない無上の極光……」


 恍惚の表情で、爆発的な愉悦をかみしめ、脳汁の海につかるアダム。


 そんなアダムの視線の先で、

 センは言う。


「さて、倍プッシュだ。狂気の沙汰ほど面白い。すでに3億稼いだが、俺はまだまだ自重せず、もう一歩、先へいく」


 狂気の宣言。

 留まる事を知らないセンに、

 カジノ側のAI部分が言う。




『エクストラチャンスタイム、発生! 【あなたの戦闘データをコピーした分身】と闘える権利を得ました! いかがいたしますか?』

「いいねぇ。ぜひ、やらせてもらう」




『闘えるコピーの数を選んでください。数が多ければ多いほど、たくさんの報酬を得る事ができます』

「じゃあ、1万だ」



『……はい? もうしわけございません。聞きとれませんでした。もう一度お願いします』

「俺が望む敵は……『俺10000人』だ」



『……』



 処理するのに少し時間をかけてから、

 しかし、



『――確認いたします。本当に、10000体でよろしいですか?』



「よろしいですとも」



『了解しました。ステージを変更します』


 カジノ側のAI部分が、センの狂気を承諾した瞬間、

 ステージがグワっと広がっていく。

 再構築された世界は、だだっぴろい枯れた荒野。

 そして、その荒野に、

 『センの戦闘データを元に作成されたコピー』がキッチリ10000体分、出現した。




「賭け金の倍率は……『200万倍』か……ん、まあ、そんなところだろ。本音を言わせてもらえるなら、『俺を1万体も飛ばした報酬』なんだから、『17兆倍』くらいあってもいいとは思うが……まあ、ワガママは言わないさ」




 カーンと響く、かねの音が聞こえた。

 戦闘開始の合図。


 その号令を受けて、1万体のコピーセンは、一気に、センへと襲いかかった。

 センの戦闘データをコピーしただけあって、おそろしく俊敏で剛腕。

 『修羅道の最果て』に辿り着いた強者。

 そんなのが、一万体。


 絶望するしかない、その極悪な暴風の中で、

 センは、



「まさか、『さっき見せた、ほんの数分』をコピーしただけで、俺の『全部』に勝てるなんて思ってないよな? 俺の200億1万年は、決して『数分で表現できるお遊戯』じゃないんだよ」



 襲いかかってくる自分のコピーを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、

 まるで、ス○ブラの100人組手のように、ドッカン、ドッカンと豪速かつ豪快に吹っ飛ばしていく。


「……『プログラムの出来』が悪い。さっきの数分すら、再現しきれていない。1万もいれば、そこそこ派手な闘いになるだろうと思ったが……期待外れもいいところ。この程度なら、100億体いても相手にならない」


 センの一手は常に『最善』の向こう側。

 対する、コピーセンは、まるで不出来なマリオネット。

 間違いなく『領域外に在る力』だが、しかし、その程度で究極超神センエースは止められない。


「お人形遊びは趣味じゃねぇ。お前らを使っても、カッコいい所は見せられねぇ」


 そこで、センはギアを上げた。

 加速していく根源的な『強さ』。


「楽勝過ぎて眠い! これで「賭け金倍率200万倍」はもらいすぎだな。いやぁ、申し訳ないねぇ」


 もはや、誰にも止められない。

 美しさの終着点。

 『神の王』が魅せる武の極み。


 ――結果、

 センは、パガロを倒した時よりも圧倒的に速く、1万のコピーを全滅させたのだった。



『エクセレント!』



 カジノのAIはセンを絶賛してから、



『コピー1万体撃破という偉業をたたえ、特別報酬を贈呈します!』


 ファンファーレとともに、


『特別報酬は【☆XX】の強化パーツ【アルテマ・トランスフォーム】です!』


 そこで、センの手の中に、プラチナ色に輝くチップが出現した。

 最高ランク『☆X』を超える『☆XX』という究極を超えたレアアイテム。

 ――『アルテマ・トランスフォーム』。



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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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