77+話 えぐい鍵。
77+話 えぐい鍵。
センエースは、自問自答するように、ぽつりと呟きつつ、
目の前に立つ少女を見つめながら、過去の記憶をゆっくりと手繰り寄せる。
あのとき、救えなかった子供。
『他にも救えなかった命はたくさんあるのに、なぜか妙に記憶に刻まれているな』とは常々疑問に思っていたが……
「……となると、ちょっとだけ話が変わってくるか……」
小さく息を吐く。
だが、すぐに眉をひそめた。
「……んーでもなぁ……お前、やっていることが、あまりにもひどすぎるしなぁ……そんでもって、俺自身も、永いこと呪われたしなぁ。てか、俺のことを、2垓年も呪うほど恨むの、おかしくねぇか? 『俺がお前を殺した』ってんならともかく、『状況的に助けられなかった』ってのを、そんなゴリゴリに呪う?」
センエースがそんなことを考えていると――
ユズの顔の右半分を覆っていた仮面が、不意にわずかに揺れた。
ビシっと、ひび割れる。
そして、ぱき、という小さな音が鳴り、
仮面はまるで寿命を迎えた生き物のように、静かに崩れ落ちた。
ぽろり、と。
地面に落ちるよりも早く、
その欠片は、さらさらと崩れ、細かな灰へと変わっていく。
次の瞬間――
センエースの脳裏に、声が直接響いた。
――仮面邪神『バチャル』を倒した功績をたたえ、『理銀の鍵』を与える――
淡々とした、感情のない声。
それは、この世界のシステムそのものが語りかけてくるような響きだった。
ようするには、コスモゾーンの声。
機械的で融通がきかない困ったちゃん。
――直後。
地面に散らばった仮面の灰が、ふわりと宙に浮かび上がる。
細かな粒子が、磁石に引き寄せられる砂のように集まりはじめた。
ゆっくりと、形を作っていく。
やがてそれは、ひとつの小さな鍵の形へと収束した。
灰色の光を帯びた、どこか不思議な質感の鍵。
センエースはそれを手に取る。
これまでにも、邪神を討伐したときには、コスモゾーンから報酬が与えられてきた。
今回も、どうやら同じらしい。
「理銀の鍵ねぇ……これはどういうものなんですかねぇ、コスモゾっち」
かろやかに問いかける。
すると、再び、あの無機質な声が脳内に響いた。
――理銀の鍵は、『すべての力を失う』かわりに、記憶を保持したまま、『鍵の使用者が産まれた日』にタイムリープすることができる神器――
……コスモゾーンの声を聞いたセンは、
「おっと……え、マジで? そいつはまた……イカついファンタスティポだな。……『産まれた日』ってのは……あれか? 『俺が日本で最初に産まれた日』ってことか? 異世界に転生とかする前の……マジで最初の最初……」
――まさに、その通り――
「マジか……ってことは……仮に、これを使ったあとで、今と同じ力を得ようと思うと……」
――『同じ時間がかかる』と考えた方がいい――
「だよなぁ……記憶だけあっても、成長率にブーストはかからないもんなぁ……もちろん、知識がある分、前よりは効率的にいける部分もあるだろうけど……俺は才能がないから、結局のところは、時間をかけて積まないと戦闘力は上がらないもんなぁ……」




