73話 俺をキレさせたんだから、大したもんですよ。
73話 俺をキレさせたんだから、大したもんですよ。
必死に叫ぶ……が、ユズの身には何も起こらない。
彼女は既に死んでいるも同然。
そんな彼女の無様な様子を見て、センが、
「お前さぁ……もう、ほんとは俺にムカついてないだろ」
「あぁあ?!」
「恐怖の色は隠せねぇ。お前はもう、俺に復讐したいなんて微塵も思っていない。ただ、俺という『気色悪すぎる最強』から『逃げたい』とビビっているだけだ」
「ふ、ふざけ――」
そこで、センは、ダッと勢いよく飛び出して、
「閃拳」
ユズの顔面に向けて、『寸止めパンチ』を繰り出した。
「ひぃっ!」
ビタビタの寸前、鼻に触れるか触れないか、というところで止まった拳。
ビクゥウ!! と、身をこわばらせて目を閉じたユズに、
センは、
「土壇場でビビるぐらいなら、悪意なんて振りまかなきゃいいのに……と、俺は、世界中の半端な悪人に対して、そんなことを常に思っている。なんせ、ヒマなもんでね」
そう言いながら、後ろ足で距離をとるセンを睨みながら、ユズは、ブルブルと震えつつ、
「く、くぅ……うぃいいいいいい! なんでだぁあああ! ああああああああああああああああああああああああああ!! なんで、いっつも、あたしばっかり不幸になるんだよぉおおおおおおお! あああああああああ! ぅああああああああああ!!!!!」
「うるせぇなぁ……自慢じゃないが、俺はてめぇの8京倍ぐらいしんどい想いをして、今日、この時、この瞬間まで這いずって生きてきたんだぞ。そんな俺の前で不幸自慢なんざ、片腹が爆散するぜ。俺の腹部に致命的なダメージを与えるとは、やるじゃねぇか。褒めてつかわす」
「こ、こうなったら、せめてもの嫌がらせとして……こいつらと一緒に死んでやる! ただ死ぬだけじゃないぞ! アタシの『仮面死呪』で『蘇生を強制拒絶』させてやる! これは、『滅死』っていう、最上級の死!! あんたの大事な配下は、蘇生魔法でも甦れない! 完全に死ぬ! ざまぁああ!」
「見事な嫌がらせだぜ。お前の悪意は深みが違う。……けど、残念だったな。今の俺が本気を出したら、『210京が織りなす滅死』程度は余裕で処理できる」
「ああ?! 出来るもんなら――」
「できるものならやってみろ……なんて言われなくても、もちろんやるさ。大事なものを失いたくないからな。つぅか、そもそも、むざむざ死なせたりしねぇ。……キレてる俺の前で、『やりたいことが好き放題できる』なんて不相応な夢を見られても挨拶に困るぜ」
言いながらセンは、
「――神速閃拳」
ギュンっと高速で距離を詰めて、ユズの腹部に、ガツンと重たい拳を連続で叩き込む。
「ぶぐぅううう!!」
「痛いか? そうか。よかったな。知らんけど」
中身のない言葉で煽りながら、
ズガガっと、さらに連打を叩き込む。
自殺すらさせない超速の絶技。




