22話 過小評価。
22話 過小評価。
「お兄、もう、諦めて受け入れた方がいいでちゅよ。何したって、もう、配下たちの中の『お兄に対する評価』がカンストから変動することはありえまちぇんから。それに、お兄は、『勘違い』ってよく言いまちゅけど……ぶっちゃけ、誰も勘違いはしてないと思いまちゅよ。むしろ、実際の功績と比べて、世間的には、まだまだ過小評価――」
「うるせぇ……『この上なく尊い』とかハゲ散らかしたこと言われてんのに、過小評価なワケあってたまるか」
「なんか今日、テンション低いでちゅね」
「さっきゲロ吐いてたの、見てなかった? 体調わりぃんだよ」
「みっともない! 体調管理は社会人としての当然のたしなみでちゅよ!! だから、お兄はダメなんでちゅよ! いつまで学生気分でいるんでちゅか! これだから、最近の若いのは!!」
「社会人扱いするなら、赤ちゃん言葉やめろや……てか、ストレスでゲロを吐くのは、むしろ社会人ならではのたしなみだと思うんだが……」
「そこじゃなく、若者扱いされたことに文句を言うべきでちょう。2垓歳相手に、『最近の若者』もクソもないでちょうに」
「いや、だからさ……複雑な構造のリリックは、俺のフロウじゃアンサーにコミットできないからやめてくれって、何度も言ってるよね……」
ため息をついてから、センは、
「相変わらず、ナメてくれるよねぇ。腹立つわぁ…………けど、正直、ありがてぇ。愛してるぜ」
シューリはセンを崇拝していないから、過剰に褒めることもない。
センにとって、シューリは、とても貴重な相手。
「ん……おっと、シューリ、悪い。通信の魔法が入った、ちょっと待っててくれ。……『ゾメガ』からだな……はい、何? え、もう第60アルファ、征服しちゃったの? え、さっき出撃したって連絡がきてから、まだ5分も経ってないんだけど? どういうこと?」
ゾメガと対話しているセンの後ろでシューリは、ヘッドホンを耳に装着した。
懐から小さなコントローラを取り出し、再生ボタンを押す。
流れてくるのはセンエースの音声。
『頼んだぜ、シューリ』『シューリ、ありがとう』
いつも聞いている無限ループを聞いてから、次のトラックに進める。
それは、ついさっき密かに録音したもので、
『正直、ありがてぇ。愛してるぜ』
間違いなく録音できていることを確認してから、
『頼んだぜ、シューリ』
再度、無限ループに戻しつつ、シューリは、心の中で、
(……あたしのヒーロー。あたしの全て。セン……あんたの全部が、あたしの全部)
そうつぶやきながら、シューリは、左手の薬指で輝くリングに、ソっと口づけをした。
その間も、ヘッドホンから、ずっと、センの声が響いている。
『シューリ、見てろよ。俺は、必ず、お前を超える』
『笑うんじゃねぇよ、シューリ。俺は本気だぜ』
『おいおい、ソンキーのやつ、強すぎだろ。シューリ、お前の弟、異常だぞ、あれ』
『シューリ。最近思ったんだけど、なんだかんだで、お前、ソンキーより強くね?』
『全ての世界の闇と邪悪を集めた結晶体【究極超邪神アポロギス】か……ははっ……ダサすぎて吐きそうだぜ……』
『バグやバーチャがゴミに思える脅威だな。流石、神界深層。起こる地獄もケタが違う』
『あれを鎮めるには、シューリの命を捧げる必要がある、か……実にテンプレだねぇ』
『心配すんな、シューリ。必ず見せてやるから。本物のハッピーエンドをプレゼントしてやる』
『シューリ。今日だけは……お前だけのヒーローをやってやる』
『絶望の殺し方なら知っている! 伊達に地獄は見てねぇぜ!』
『俺はセンエース。全ての神を超える男だ!!』
『……辿り着いたぜ……究極超神化6……神の最果て……小学生の冗談みたいな異常インフレも、ここまでくれば、流石に、もはやカッケェぜ!』
『ヒーロー見参!』
センは、命を賭して、死ぬ気で、シューリのために戦った。
どのぐらい必死だったかと言えば……『200億年の地獄』に挑むほど。




