13話 異世界大戦。
13話 異世界大戦。
……ここから語るのは、嘘ひとつない現実。
地獄よりも、ずっと血生臭い信念の牢獄。
――遥か太古、9000年以上も昔の話。
それは、突然の出来事だった。
ある日、第2~第9アルファの全てが、『謎のゲート』で繋がった。
その大混乱の中で、当たり前のように、異世界間のいさかいが起こり始める。
最初は小さな火種。
しかし、すぐにその火は燃えあがった。
世界の全てが、互いにとっての加害者となり、誰もかれもが被害者ぶった。
『こ、ここを超えられては、我が世界が、やつらの獣牙に――』
『全ての王を代表し、朕は最も気高き我が第5アルファに全ての権限を委任する案を――』
『ああ、そうだ。血を流すのはもうやめよう。ここに全世界統一連合の設立を――』
『ワールドシンボルが……破壊された……』
『違う! 本当に違うんだ! 我々が、あえて破壊活動を起こす意味などないだろう!』
『なぜ、まだ戦争は続いている。終わるはずだっただろぉお! くそったれぇええ!!!』
――決して『欲深き愚者』が多かった訳ではない。戦争を止めようとした賢者も一定数存在していた。戦争を加速させた理由は、やはり、『このままでは喰われる』『無抵抗は貫けない』という純粋な恐怖。
狂気は終わりなく膨らんで、落とし所を完全に見失った。死者の数は、ケタ違いで、数十億を超えた。
鮮血時代。死の70年。どの世界の教科書にも、大文字で記されている最悪の『全世界史』――ゆえに、『その戦争を終わらせた大英雄』の名を知らぬ者はいない。
荒れ狂う乱世に立ち向かった、『かつてはまだ神ではなかった大英雄』――舞い散る閃光センエース。
★
『もう、どうしたらいいか、分からないのです。この戦争を終わらせたい! しかし、ボクの力ではどうする事もできないのです! 戦火は広がり続ける! ボクは! いったい、なんのために!』
慟哭が止まらない配下に、センエースは静かなトーンで、
『前を向け、平』
平と呼ばれた男は、涙を流しながら、
『師よ! ボクは! 自分の無力さが憎い! ボクは――』
『命令だ。前を向け』
『……』
『答えろ。お前の目の前には、誰がいる?』
『……師が』
『そうだ。ここには俺がいる』
センエースは、ニっと太陽を巻きこむように笑って、
『見せてやるよ、希望。殺してやるよ、全部。幻想の既得権にとり憑かれたゴキブリどもを……戦争を終わらせまいとする悪意そのものを……グッチャグッチャになった、疑心暗鬼という世界のコードを全部、まるごと、たたっ切って、前よりも綺麗に結び直してやるよ。すべての絶望を殺してやる。世界を救ってやる』
『師よ……しかし……』
『黙って聞いてろ。今、世界に響かせる。俺の想い……俺の全部……』
センは、肺が爆発するほど息を吸って、
『ヒーロー見参!!!』
『虚像の光』を叫び、センは戦火に身を投じた。血に濡れて、ボロ雑巾になりながら、それでも、『世界を救うヒーロー』を『騙り』ながら、命を燃やして、闘い続けた。
その背中に、多くの者がついてきた。
ハッキリ言おう。騙したんだ。
『俺は英雄だ』と、『だから大丈夫だ』と、『希望になってやる』と、真っ赤な大嘘をついて、盛大に世の中を騙して、地道に、勢力を拡大させていった。
地味な地獄が、延々と続く。70年。泥沼になった闇がさらなる阿鼻叫喚を呼ぶ。
……それでも、『センエース』は闘い続けた。
全世界の誰よりも、その身に傷を刻みながら、どんな地獄を前にしても、それでも!!
――皆が望むヒーローを演じ続けた――
本当は苦しくてたまらなかった。それでも笑ってみせた。全部演技だ。
(世界を守るヒーローなんていう、そんなクソしんどい面倒を……やりたくてやっていると思うか……守りたいと思えるやつらのために、必死に頑張ってきただけだ……)
――心の摩耗が日に日に酷くなっていく。ほんとは、ずっと、逃げ出したかった。
けれど!!
『俺はここにいる!! 心配するな! 俺が連れていってやる! この戦争の向こう! バッドエンドをリアルだと思いこむ、その勘違いごと殺してやる!』
センは、投げなかった。『詐欺師の仮面』をかぶり続けて、中身のない大嘘を吐き続けた。
『もう、闘えとはいわない! もうお前らは充分闘った! だが、命令だ! 見届けろ! 俺が、まだ、ここに立っているという事! それだけは見届けろ!』
血に濡れて、悪意に穢されて、押しつぶされそうになりながら、けれど、
『お前たちの先頭には、いつだって、必ず、俺がいる! 必ず、お前らの前に道をつくってやる! だから! もう、他は何もしなくていいから! 前を見る事だけはやめるな! 目をそらすな! 絶対に、俺の背中から目を離すんじゃねぇえええ!!』
奇跡なんて起こらなかった。ただ、『必然』があっただけ。
必死に闘い続け……受け取った『命のタスキ』を、冷たい血で汚しながら、凍える闇で穢しながら、腐った骸で埋まる焼け野原で、独り、多くの想いを背負って、優しい嘘に許せない嘘を重ねて、山ほどの業を飲み込んで、誰もいない丘の上で、無数の王冠を串刺しにして、
そして! だから!
――センエースは、ついに、『限界』という壁を超えた。
『見える! くだらねぇ檻(限界)の向こう! 俺は! ついに!』
――『存在値999』という、『人間では絶対に超えられない』と言われていた『命の壁』をのりこえた。
一気に階段を駆け上がり、『存在値1000を超える最強の英雄』となったセンエースは、
『全部、背負ってやるよ。なにもかも全部。全ての絶望、希望、想い、願い、命、心、全部。俺はセンエース。お前たち全員の王だ!』
――その異質な力でもって、クソみたいな戦争を終結させた――
――絶対なる王の誕生は、『消えない希望』となり、センエースという存在そのものが、『見失っていた落とし所』となったのだ――
……『血の流し方』を忘れてからも、もちろん、山ほど問題は起きた。結局のところは、暴力で抑えつけただけ。ゆえに――
独裁者の誕生。暴君の暴力による独裁のための支配体系。ディストピアの完成。
心ない罵詈雑言の中で、センエースは叫ぶ。
『好きにほざけ。ただし覚悟しておけよ? 俺は全部と向き合うぞ』
センは、合理を叫び続けた。
セン一人で世界平和を実現させるのは流石に厳しかった……けど、
『師よ、ボクも、ここにいます。あなたは、一人ではない。一人にはさせない』
全ての想いが繋がって、平和を実現するための『器』が出来た。まだ、名前はなかった。どれほどの絶望を前にしても、最後の最後まで平和を謳い続けると誓った覚悟の証。
のちに、センによって銘打たれる『その器』の名は『ゼノリカ』。
――それは、まぎれもなく、『全てを照らす光』だったんだ――




