11話 聖典。
11話 聖典。
『第2アルファ・センエース大聖堂』は、5000年以上昔に創設された、第2アルファの中でも由緒ある教会。
その荘厳さは、見る者すべてに息をのませる。
本日は、月に数回行われる『特別聖典宣教』の日。
普段は、司教が宣教を行うのだが、『特別聖典宣教』の日には、なんと、『ゼノリカの大幹部』が直々に、聖典の解説をしてくださるのだ。
今回の特別宣教師は『エキドナール・ドナ』。
狂信者だらけの『ゼノリカ大幹部』の中でも、特に抜きんでて、『センエース』に対する偏愛がハンパじゃない女性。
――集まった民衆たちは、席につき、ドナの登場を待ちわびている。
「今日はドナ猊下のお話を聞くことができる」
「なんという幸運でしょう」
「待っている時間すら心震えますわ」
「ああ……リラ・リラ・ゼノリカ……」
厳かな場所なので、大声で話したりはしない。
気品ある民衆たちは、ひそひそと、礼節をもって、期待に胸を膨らませている。
――『栄えあるゼノリカの天下、再連323班のミカン』も、すみっこの席についていた。
(聖典の読み聞かせとか、正直ダルいなぁ……でも、出世のために我慢……)
「そこのお嬢さん……あんた、初めて見る顔だな。もしかして、再連の人?」
隣の席に座る男に声をかけられ、ミカンは、
「あ、ああ。再連323班のミカンだ」
「俺はウセネス。服飾関係の仕事をしている者だ。昔、ゼノリカ大幹部に服を仕立てたこともあるんだぜ、すごくね?」
「それは……確かに凄いな……あなたは、よほどの職人ということか」
「まあね。俺、マジですげぇから。本気出したら、神の頂点にもなれちゃうんじゃないかってぐらい凄いから」
「は、はは……そ、そうか」
――ちなみに『ウセネス』とは、数ある『センエースの擬態』の一つである。
センは、定期的に、姿を変え、市井へ出ている。
民衆と交流することで、世相を正確に把握しようとしているのだ。
……あと、シンプルに息抜きをしている。
「いいか、お嬢さん……」
そこで、『ウセネス(センエース)』は、ミカンの耳元で、コソっと、
「これから、ドナが……ドナ猊下が、聖典の話をするが、話半分で聞いておけ。聖典に書かれている内容は『嘘ではない』が、あまりにも美化されすぎている。その上でドナは……ドナ猊下は、ちょっと頭おかしいから、現実が見えていないんだ。まあ、ドナ猊下だけじゃなく、幹部連中は、基本、みんなヤバイんだがな」
「そ、そんな危険なことを言って……大丈夫か? ゼノリカの御方々を貶めるような……」




