9話 同中。
本日の9話です!
9話 同中。
「もしそうなら、隠さなくていいぜ。俺もそうだから。俺は高校生の時、『日本(第1アルファ)』で死んで異世界に転生した。お前は?」
「……も、申し訳ありません、偉大なる主よ……た、確かに、私は、前世の記憶を持っております。しかし、その記憶は、とてもおぼろげなもので……自分がどこの誰だったのか、などの細かいことは分からないのです」
「……ああ、そのパターンか。あるある」
陛下が、序列一位の世界『第1アルファ』の『日本と呼ばれる神国』出身であることは『聖典』にも書かれているし、先ほど、猊下からも散々教わったので理解はしている。
「ちなみに、そのおぼろげな記憶ってのは? どういう記憶? 学校の記憶か? それとも、テレビとかマンガとかの記憶?」
「ぇ、あの……その、実は『迫害を受けた記憶』でございます。複数人の男に襲われ、暴れたところ、眼球にアイスピックを刺されるという……そういう、苦い記憶でございます」
「マジか。ぁあ、えっと……なんか悪かったな、嫌なことを聞いて」
「い、いえ、とんでもございません」
「……ん? ……襲われて……アイスピック……?」
「ど、どうかなさいましたか?」
「お前……もしかして……ぁ、いや……別に、いいや……仮に、そうだったとしても、だから何だって話だし」
「?」
「気にするな。中学の時、『イカれたクソバカ女に目をつけられて襲われて眼球にアイスピックを突き立てられて自殺した女子』のウワサを聞いたことがあったから……もしかしたら、お前がソレなのかもしれないと思ったが……正直、どうでもいい話だ」
「私の前世を……ご存じで?」
「そういうウワサを聞いたことがあるってだけだ。顔も名前も知らん」
「……」
「時間をとって悪かったな」
そう言うと、センエース神帝陛下は、豪奢な螺旋階段を上がっていった。
その背中に続く美女従者が、一度、私の方に視線を向けて、
「仮に貴様が主上様と同郷であったとしても、偉大な王と貴様とでは『立場』が違う。勘違いして、なれなれしく接するようなマネは厳に慎め。もし、尊き主に、ほんのわずかでも粗相をしでかしたら、私が貴様を殺す。よいな」
「は、ははぁっ!!」
美女従者の眼力が、あまりにもすさまじかったので、
私は反射的に、額を地面にこすりつけてしまった。
★
センエース神帝陛下と美女従者が去ったあとで、パメラノ猊下がスクっと立ち上がり、
「そのご足音ひとつすら、いと尊く、聖歌と等しき響き……まさに神音……御霊の律動」
と、幸せそうにつぶやく。
何を言っているのか、正直分からない。
流石に、足音まで誉めなくてもいいと思うのだけれど……
もし、私が、配下から、こんな風に過剰称賛されたら……ゲロ吐くかも。
――と、そこで、猊下は、私の方にキっと視線を向けて、
「主にお目通りが叶ったことは、ぬしの人生最大ともいうべき無上の幸運であったな」
確かに私の身分で、センエース神帝陛下にお会いすることは絶対に出来ない。
運が良かったとは思わないが、奇運であったとは思う。




