2話 壊れた時計。
2話 壊れた時計。
センは再度タメ息をつきつつ、
(言うまでもなく、もちろん、アダムを盾にする気なんかねぇし、何かあったら守ってやるつもりだが……この『余計なことを考えないといけない』のがシンプルにめんどくせぇ。一人で行動したい……俺は『単騎の遊撃』をしてんのが一番性に合っている。……今、思えば、ソウルゲートで鍛錬している時や、原初の世界を裏から監視していた時は楽だったなぁ……)
そんなことを心の中でぼやきながら、センは例の『タイマー付き扉』の前に立った。
純白の空間に浮かぶ、唯一の異物。
中央に刻まれた数字が、静かに明滅している。
センは腕を組み、時間を確認した。
「……ん?」
前に確認した時から、すでに十八時間ほど経過している。
本来なら、残り時間は大きく減っているはずだ。
だが――
――『X17:39:20』
「え、どういうこと?」
前に見た時から、ほとんど変わっていない。
センは目を細め、表示をじっと睨みつける。
数字は確かに動いている。
一秒ごとに、律儀に減っている。
五秒経過するのを確認し、改めて表示を見る。
――『X17:39:15』
減っている。
動作自体は正常。
「え、なに? これ、もしかして、ずっと見てないといけないみたいな感じのあれ? もしくは、この空間の時間と外の時間が乖離している的な?」
そんな仮説を口にした、その瞬間。
――『X17:39:10』
「ん?」
次の瞬間。
――『X17:39:11』
数字が増えた。
「おいおい……どういうこと?」
センの眉がぴくりと動く。
タイマーは、何事もなかったかのように『X17:39:27』まで巻き戻り、そこから再び『X17:39:26』『X17:39:25』と目減りしはじめた。
減る。
戻る。
また減る。
純白の空間は沈黙を守ったまま、数字だけが律儀に挙動を繰り返す。
「バグってんのか、そういう仕様なのか分からんが……これ、どうしたもんかな……」
センは頭をぽりぽりとかきながら、しばし無言で扉を睨み続けた。
数秒。
さらに数秒。
やがて、
「うん。わからん。アホの俺が考えたところで無駄! もういい!」
あっさりと結論を出した。
『世界の命運』や『愛する者の命』がかかった場面では、何があっても諦めない稀有な根性を持つ男だが。
特に何もかかっていない場面での、この手の『思考系』の事象に対しては、秒で諦めていくスタイルの閃光。
と、その瞬間。
「あなた様は決して阿呆ではございませんっ!」
背後から、切実な声が飛ぶ。




