最終神話 パーフェクトコスモゾーンを待ちながら……
本日の3話目です。
最終神話 パーフェクトコスモゾーンを待ちながら……
原初の扉をくぐり抜けた瞬間。
空気が、激烈に重かった。
肌にまとわりつくような圧。
張り詰めた静寂の奥に、言葉にならない緊張が沈んでいる。
視線を上げる。
そこにいたゼノリカの面々は、まるで一糸乱れぬ儀仗兵のように整列していた。
鍛え抜かれた軍隊が五度見する練度の、完璧な整列。
センエースの帰還を待っていた面々だ。
一部では捜索隊が他の場所を探しているものの、この扉の向こうに行っている可能性が高いと判断されていたため、大半のメンツはこの場に集まり、真っ青な顔でセンの無事を祈っていた。
――王の帰還だというのに、歓迎の気配は皆無。
拍手も歓声もない。
ただ、静かな圧力だけが空間を満たしている。
無言のまま向けられる視線は、どれも妙に鋭かった。
センが状況を理解するより早く、配下たちが一斉に詰め寄ってきて……
――そして、めっさ叱られた。
やれ『御一人で無茶をなさらないでください』だの、
やれ『何より大事な体である自覚が足りない』だの、
やれ『どうして毎回、最も危険な場所へ真っ先に突っ込んでいかれるのですか』だの、
やれ『万が一という言葉を、もう少し真剣に受け止めていただきたい』だの、
やれ『我々がどれほど心配しているか、少しはお考えくださいませ』だの、
やれ『あなた様の身に何かあれば、我々はどうすればよろしいのですか』だの……
次から次へと飛んでくる苦言忠言雨あられ。
言葉の一つ一つに、本気の心配と怒気が混じっている。
目に入れても痛くない我が子が、危険地帯に単身突っ込んでなかなか帰ってこない――そんな状況を想像してもらえれば、今のゼノリカの面々の気持ちが少しは伝わるだろうか。
完全に逃げ場を塞がれた形で、センは四方から詰められることになった。
アダムを筆頭に、平やドナやパメラノなど、特に過保護気質の強い面々が前線に立ち、完全に包囲する形でセンを取り囲む。
「いや、俺は大丈夫だから。ほら、俺、世界最強だし。今の俺、存在値1垓以上だし」
「「「そういう問題ではございません!!!」」」
配下たちからすれば、センが強いかどうかなど、どうでもいい。
というか、強いことなど知っている。
問題なのは、『死ぬ可能性があるところに、ひょいひょい勝手におもむくこと』。
センにだけは絶対に死なれては困るのに、この王は、何を血迷っているのか、毎度、毎度、自由気ままに、好き放題、命をさらしまくる。
そのことが、ゼノリカの面々は許せない。
「わかった……わかった、わかった! もう、いいから! わかったから、このとおりだから!」
場を和まそうと、正座からの土下座のコンボをしようとするセンに、ドナが、
「全ての命の頂点たる尊き御身が、下々(しもじも)の前で膝をつくなどォオオオオ!」
と、ブチギレたモンスターペアレントが如き金切り声をあげた。
「謝ることすら許されないのですか?!」
とビクつくセンに、センを崇拝してやまない平熱マンが、
「我々ごときに敬語など、あってはいけません、師よ!」
「あってはいけないってこたぁねぇよなぁ」
逃げ場はない。
本気の心配というパワハラが留まることを知らない。
こんこんと、途切れることなく続く説教。
まるで嵐のような小言の渦の中心で、センは心底しんどそうな顔をして、
(消したい……リライトしたい……こいつらの記憶……)
全ての命の頂点とは思えないほど、死ぬほど気まずそうな顔で、
(駆逐してやる……なんとしてでも、こいつらの『俺に関する記憶』を……この世から……一匹残らず……っ)




